2018/4/11
生活保護基準引き下げは、子どものいる世帯や、高齢世帯を狙い撃ち ]U格差社会
◆ 生活保護費切り下げが及ぼす社会的影響 (教科書ネット)
◆ 貧困対策と逆行する生活保護基準の引き下げ
政府は、2018年10月から生活保護のうち食費などの生活に充てる生活扶助基準を3年かけて総額160億円削減(最大5%の引き下げ)する2018年度予算案を決定した。
生活保護に関しては、安倍政権はこれまでにも2013年から3年かけて生活扶助基準を670億円削減(平均6.5%、最大10%の引き下げ)し、2015年からは、住宅扶助基準・冬季加算を削減してきている。
安倍首相は、1月22日通常国会の施政方針演説で「貧困の連鎖を断ち切る」と演説したが、全く矛盾する政策を進めていることになる。
今回の削減では、子どものいる世帯や、高齢世帯が狙い撃ちされている。
2017年10月時点での生活保護利用世帯数は約164万世帯、利用者数は約213万人となっているが、厚生労働省の説明では、今回の引き下げにより、67%の世帯で支給額が減り、子どものいる世帯では43%、ひとり親世帯では38%が減額となる。特に都市部の子どものいる世帯や単身世帯の削減幅が大きくなっている。
厚労省の試算では、東京23区内や名古屋市などの都市部の40代夫婦と小・中学生の子ども2人世帯で、受給額は現在の月約18万5000円から今年の10月以降は17万6000円と上限の5%に当たる約9000円の削減となる。
40代母親と小・中学生の子ども2人の世帯でも、月15万5000円から14万7000円と同じく5%、8000円の減額となる。
都市部の75歳単身世帯では、月約7万5000円から7万1000円と同じく5%、4000円の減額となる。
子育て世帯の約4割が減額となる生活保護基準の見直しは、子どもの貧困対策に逆行する政策と言わねばならない。
◆ 生活保護基準引き下げの理由・根拠の問題点
今回の引き下げの考え方は、生活保護基準を第1・十分位層(所得階層を10に分けた下位10%の階層)の消費水準に合わせるというものである。
わが国では、生活保護基準未満で暮らしている世帯のうち実際に生活保護を利用している世帯が占める割合(生活保護の捕捉率)は、2割程度といわれている。
したがって、第1・十分位層の中には、生活保護基準以下の生活を余儀なくされている人たちが多数存在することになる。この層を比較対象とすれば、生活保護基準を引き下げ続けることにならざるを得ず、「貧困のスパイラル」に陥り、社会の底割れを招きかねない。
したがって、生活保護基準を第1・十分位層の消費水準に合わせるという考え方は誤りであり、貧困対策の観点からすれば、むしろ生活保護の捕捉率を上げ、生活困窮者層の底上げをはかることに取り組むべきなのである。
◆ 生活保護基準引き下げが国民生活全般に与える影響
生活保護制度は憲法25条の生存権保障を具体化した基本的な制度であるので、生活保護基準の引き下げは生活保護利用者だけの問題ではなくなる。
生活保護基準は、最低賃金、就学援助の給付対象基準、介護保険料・利用料や障害者総合支援法による利用料の減額基準、地方税の非課税基準など労働・教育・福祉・税制など様々な施策の適用基準に連動している。
したがって、生活保護基準の引き下げは、生活保護利用世帯の生存権を直接脅かすとともに、生活保護を利用していない国民生活全般の引き下げにつながることになる。
2013年に生活保護基準を引き下げた際は、全国の自治体で、生活保護を受けていない子どもに給食費や学用品代を支給する就学援助が縮小された。
就学援助は、各自治体が、生活保護基準額の「1.1倍」「1.3倍」などの低所得世帯を支給対象としている。2013年の生活保護基準引き下げの際、政府は各自治体に就学援助に影響させないよう要請したが、全国89市区町村で就学援助の基準が引き下げられ、多くの子どもが対象外となり、就学援助費を受け取れなかった。
たとえば横浜市の場合、生活保護基準の引き下げ前は両親と小学生の子ども2人の標準世帯で年収約358万円以下を就学援助の対象としていたが、引き下げ後の2014年度から344万円以下に引き下げられた結果、推計977人の子どもが対象から外れた。
また東京都中野区でも、標準世帯で就学援助の基準を年収約335万円以下から2014年度に約11万円下げた結果、就学援助を受ける子どもの割合は2013年度の24.8%から2017年度の19.8%へと大きく減少している。
◆ 生活保護利用当事者の声
今回の政府の生活保護基準引き下げ決定に際しては、生活保護利用当事者の声を全く聞いていない。
「私たちのことを、私たち抜きに決めないで」という原則は、生活保護基準を決める場合においても貫かれるべきである。
生活保護問題に取り組む、弁護士や司法書士などが実行委員会を組織し、政府に生活保護利用当事者の切実な生活状況と声を伝えるべく、2017年12月26日、午前10時から午後9時まで東京・埼玉・大阪で「生活保護基準引き下げに反対します(緊急ホットライン)」を開催したところ、多数の電話が寄せられた。
生活保護利用当事者からは、2013年の生活保護基準引き下げによって
このホットラインには、今回の生活保護基準の引き下げについて、
◆ 生活保護基準の引き下げは撒回すべきである
安倍政権は生活保護をはじめとして医療・年金・介護など社会保障費の削減を進める一方で、防衛費は6連続で増額させようとしている。
安倍政権は、生活保護費を3年で160億円削減する一方で、重大事故が続くオスプレイ購入費に約400億円もつぎ込み、米軍への思いやり予算を195億円も増やそうとしているのである。
憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を維持するために、またこれ以上生活保護利用者を追い詰めないためにも、今回の生活保護基準の引き下げは撤回されるべきであるし、2013年からの生活扶助基準の引き下げ、2015年からの住宅扶助基準・冬季加算の引き下げも元に戻すべきである。(うつのみやけんじ)
『子どもと教科書全国ネット21ニュース 118号』(2018.2)
宇都宮健児(弁護士)
◆ 貧困対策と逆行する生活保護基準の引き下げ
政府は、2018年10月から生活保護のうち食費などの生活に充てる生活扶助基準を3年かけて総額160億円削減(最大5%の引き下げ)する2018年度予算案を決定した。
生活保護に関しては、安倍政権はこれまでにも2013年から3年かけて生活扶助基準を670億円削減(平均6.5%、最大10%の引き下げ)し、2015年からは、住宅扶助基準・冬季加算を削減してきている。
安倍首相は、1月22日通常国会の施政方針演説で「貧困の連鎖を断ち切る」と演説したが、全く矛盾する政策を進めていることになる。
今回の削減では、子どものいる世帯や、高齢世帯が狙い撃ちされている。
2017年10月時点での生活保護利用世帯数は約164万世帯、利用者数は約213万人となっているが、厚生労働省の説明では、今回の引き下げにより、67%の世帯で支給額が減り、子どものいる世帯では43%、ひとり親世帯では38%が減額となる。特に都市部の子どものいる世帯や単身世帯の削減幅が大きくなっている。
厚労省の試算では、東京23区内や名古屋市などの都市部の40代夫婦と小・中学生の子ども2人世帯で、受給額は現在の月約18万5000円から今年の10月以降は17万6000円と上限の5%に当たる約9000円の削減となる。
40代母親と小・中学生の子ども2人の世帯でも、月15万5000円から14万7000円と同じく5%、8000円の減額となる。
都市部の75歳単身世帯では、月約7万5000円から7万1000円と同じく5%、4000円の減額となる。
子育て世帯の約4割が減額となる生活保護基準の見直しは、子どもの貧困対策に逆行する政策と言わねばならない。
◆ 生活保護基準引き下げの理由・根拠の問題点
今回の引き下げの考え方は、生活保護基準を第1・十分位層(所得階層を10に分けた下位10%の階層)の消費水準に合わせるというものである。
わが国では、生活保護基準未満で暮らしている世帯のうち実際に生活保護を利用している世帯が占める割合(生活保護の捕捉率)は、2割程度といわれている。
したがって、第1・十分位層の中には、生活保護基準以下の生活を余儀なくされている人たちが多数存在することになる。この層を比較対象とすれば、生活保護基準を引き下げ続けることにならざるを得ず、「貧困のスパイラル」に陥り、社会の底割れを招きかねない。
したがって、生活保護基準を第1・十分位層の消費水準に合わせるという考え方は誤りであり、貧困対策の観点からすれば、むしろ生活保護の捕捉率を上げ、生活困窮者層の底上げをはかることに取り組むべきなのである。
◆ 生活保護基準引き下げが国民生活全般に与える影響
生活保護制度は憲法25条の生存権保障を具体化した基本的な制度であるので、生活保護基準の引き下げは生活保護利用者だけの問題ではなくなる。
生活保護基準は、最低賃金、就学援助の給付対象基準、介護保険料・利用料や障害者総合支援法による利用料の減額基準、地方税の非課税基準など労働・教育・福祉・税制など様々な施策の適用基準に連動している。
したがって、生活保護基準の引き下げは、生活保護利用世帯の生存権を直接脅かすとともに、生活保護を利用していない国民生活全般の引き下げにつながることになる。
2013年に生活保護基準を引き下げた際は、全国の自治体で、生活保護を受けていない子どもに給食費や学用品代を支給する就学援助が縮小された。
就学援助は、各自治体が、生活保護基準額の「1.1倍」「1.3倍」などの低所得世帯を支給対象としている。2013年の生活保護基準引き下げの際、政府は各自治体に就学援助に影響させないよう要請したが、全国89市区町村で就学援助の基準が引き下げられ、多くの子どもが対象外となり、就学援助費を受け取れなかった。
たとえば横浜市の場合、生活保護基準の引き下げ前は両親と小学生の子ども2人の標準世帯で年収約358万円以下を就学援助の対象としていたが、引き下げ後の2014年度から344万円以下に引き下げられた結果、推計977人の子どもが対象から外れた。
また東京都中野区でも、標準世帯で就学援助の基準を年収約335万円以下から2014年度に約11万円下げた結果、就学援助を受ける子どもの割合は2013年度の24.8%から2017年度の19.8%へと大きく減少している。
◆ 生活保護利用当事者の声
今回の政府の生活保護基準引き下げ決定に際しては、生活保護利用当事者の声を全く聞いていない。
「私たちのことを、私たち抜きに決めないで」という原則は、生活保護基準を決める場合においても貫かれるべきである。
生活保護問題に取り組む、弁護士や司法書士などが実行委員会を組織し、政府に生活保護利用当事者の切実な生活状況と声を伝えるべく、2017年12月26日、午前10時から午後9時まで東京・埼玉・大阪で「生活保護基準引き下げに反対します(緊急ホットライン)」を開催したところ、多数の電話が寄せられた。
生活保護利用当事者からは、2013年の生活保護基準引き下げによって
@食事を削っている(中にはおかずがなく白米に醤油をかけて食べることもあるという電話も複数あった)いずれも日本国憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」とは、程遠いものである。
A入浴回数が月に1回になってしまっている
B耐久消費財を購入する資金を保有する余裕が全くなく耐久消費財が壊れてしまったら買い換えられない
C衣服を買う余裕がなくサイズの合わない昔の服を着続けている
D冬はコタツだけで暖をとって暖房を使えない
E真冬に灯油が買えず肺炎になった
F交際費が捻出できず一切外出しない、などの切実な声が寄せられた。
このホットラインには、今回の生活保護基準の引き下げについて、
「生活していけない」というような生活保護利用者の切実な声が寄せられている。
「死んでくれと言われているようだ」
「死ぬしかない」
「弱いものいじめはしないでほしい」
「当事者の声を聞いてほしい」
「生活保護基準を逆に上げてほしい」
◆ 生活保護基準の引き下げは撒回すべきである
安倍政権は生活保護をはじめとして医療・年金・介護など社会保障費の削減を進める一方で、防衛費は6連続で増額させようとしている。
安倍政権は、生活保護費を3年で160億円削減する一方で、重大事故が続くオスプレイ購入費に約400億円もつぎ込み、米軍への思いやり予算を195億円も増やそうとしているのである。
憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を維持するために、またこれ以上生活保護利用者を追い詰めないためにも、今回の生活保護基準の引き下げは撤回されるべきであるし、2013年からの生活扶助基準の引き下げ、2015年からの住宅扶助基準・冬季加算の引き下げも元に戻すべきである。(うつのみやけんじ)
『子どもと教科書全国ネット21ニュース 118号』(2018.2)






