2018/4/12

右翼偏向古賀都議が繰り返した教育への「不当な支配」  Y暴走する都教委
 ◆ 繰り返される性教育バッシング (東京新聞【こちら特報部】)

 東京都足立区の中学校で行われた性教育の授業について、都議から「不適切」と指摘を受けた都教委が指導に乗り出した問題。実は2003年にも、そっくりの出来事があった。都立七生(ななお)養護学校(日野市、現・七生特別支援学校)の教え方が、今回と同じ都議らから「過激性教育」とバッシングを受け、校長らの処分に発展。国政での同様の動きと合わせ、教育現場の萎縮をもたらした。繰り返されたバッシングに、現代の若者の性を知る識者らは憤る。(石井紀代美、中沢佳子)

 ◆ 「避妊」「中絶」指導を問題視
 問題視された授業は足立区立中学校で今年三月五日、三年生の総合的な学習の時間として行われた。テーマは「自分の性行動を考える」
 同中学校は人権教育の一環で「性に関する学習」に力を入れており、パネルディスカッションなどを通して、社会問題化している中高生の妊娠、人工妊娠中絶などについて考えさせるのが目的だった。


 「産み育てられるまでは性交を避けるのがベスト」と強調し、避妊方法中絶できる期間が法律で決まっていることなどを教えた。教員や校長、区教委で内容を検討した上で、保護者らにも事前通知し、公開で授業が行われた。
 これに対し、古賀俊昭都議(自民)は、三月十六日の文教委で校名や校長、授業をした教員を名指ししながら「不適切な性教育の指導が行われているのではないか」と言及。
 「動物的な結び付きによる人間における性行動というものを百パーセント認めてしまうのはあってはならないと思う」「特定の一つの価値観に基づいて、(教師や校長が)自分はいいことをやっているという意識で行われている」と持論を展開した。

 都教委の担当部長も「課題があると思う」と答弁し、中学校の学習指導要領に書かれていない「性交」「避妊」「人工妊娠中絶」を授業で扱った点について、「中学生の発達段階に合わない内容、指導がなされていた」と断定。一連の授業の検証を徹底して行い、指導を進めるとした。

 ◆ 区教委「これまで通り授業」
 だが、文部科学省によると、学習指導要領は一定水準を確保するためのもの。一般論として、生徒の加重にならず、発達段階に合っていれば、書いていないことも教えて構わない
 また、足立区教委は本紙の取材に「都教委と話し合いはしているが、粛々とこれまで通り授業は続けていく。現代の二ーズに合っている良い授業だと考えている」と答えた。

 ◆ 指摘の都議 賠償命令の過去 養護学校を「不当支配」
 実は、古賀都議は過去にも今回とよく似た事例にかかわっている。
 二〇〇三年の「七生養護学校事件」だ。同養護学校では当時、知的障害のある子どもは文字で説明してもなかなか理解しづらいことから、教員が体の部位の名称を歌にして歌ったり、性器の模型が付いた人形を用いるなど工夫を凝らした授業をしていた。
 古賀都議らは同校を視察し、教員に直接「こういう教材を使うのをおかしいと思わなかったのか」などと非難。
 都教委も、人形などの教材を没収し同校の教員十三人に厳重注意するなど足並みをそろえた。
 その後、教員らが古賀都議や視察に同行した都教委らを相手取り、損害賠償を求める訴訟を起こす。
 東京地裁判決では、古賀都議らの行為を教育基本法で禁じる「不当な支配」に当たるとし、都教委については不当な支配から教員を保護する義務を怠ったと認めた。
 東京高裁も一審判決を支持し、一三年の最高裁で確定。司法では、古賀都議や、都教委の対応が「性教育バッシング」と認定とされた

 ◆ 現場が萎縮
 今回の足立区の件と、七生養護学校事件はそっくりに見える。だが、都教委は「七生の時とは違う。都議からの情報提供があり、都教委で独自に確認して発覚した。直接都議が学校にも行っていない。不当な支配があったとは感じない」と否定する。

 ただ、埼玉大の田代美江子教授(教育学)は「学校名や教員の名前を出して攻撃するのは七生の時とまったく同じ構図」と断言し、「党派性を持った政治家が議会の場で、特定の教育内容に『不適切』と発言すること自体が不当な支配に当たるのは教育界の常識。学習指導要領が法的拘束力を持つとも言い切れず、まかり間違っても教員を処分することがあってはならない」と強調する。
 そのうえで、「七生の時の反省を生かせず、都議をいさめられなかった都教委の対応は非常に残念だ」と、再び性教育バッシングを招いた行政側の弱腰を批判する。

 そもそも性教育に対する風向きがおかしくなったのは、二〇〇二年五月にさかのぼる。衆議院文科委員会で、山谷えり子議員が、厚生労働省所管の財団法人が作った中学生向け性教育用冊子「ラブ&ボディBOOK」のピル使用に関する記述について、「メリヅトしか書かれておらず、全体として奨励するような内容だ」と発言し、厚労省の担当局長や文科相をただした。結果的に冊子は絶版になった。
 その後、各地で一部議員が学校での性教育を問題視するようになり、〇三年の古賀都議の「政治介入」も、こうした流れの中で起きた。

 ◆ 世界から遅れ
 「こんなに違う!世界の性教育」(メディアファクトリー)の著作がある橋本紀子・女子栄養大名誉教授は「議員の口出しを受けた結果、学校が萎縮し、忖度して性教育に後ろ向きになった」と指摘する。
 英国オランダ、タイなどでは学校で性交や避妊について教育の一環として教えているとし、「国際的には発達段階に即して、義務教育段階で教えるのが標準になっている日本の性教育は各国に比べて遅れている」と懸念する。
 国連教育科学文化機関(ユネスコ)も、各国の研究成果を踏まえた性教育の指針「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」で、性教育のスタートを五歳と設定。五〜十八歳を四段階に分け、九〜十二歳で、意図しない妊娠や性感染症(STD)を防ぐには、コンドームの使用がリスク低減になると記述する。

 厚労省の感染症動向調査によると、国内の梅毒の報告件数は〇三年前後は五百件台だったが、徐々に増え出し、一七年には五千八百二十件に。中でも、十五〜十九歳は一〇年には八件だっだにもかかわらず、一七年には百八十八件に上る。
 今回の都教委の対応を批判する声明を出した「“人間と性”教育研究協議会」代表幹事で「季刊セクシュアリティ」副編集長の水野哲夫氏は「今の子どもたちの性の知識は、ネットにあふれる虚偽や暴力的な情報で形づくられてしまっている。正しい知識を伝える必要がある」と危ぶむ。

 ◆ 指導要領見直す時「子ども目線の教育を」
 一方、今回の問題を受けて、日本の性教育のあり方を見直そうとする動きも出始めた。
 中高生や保護者に向けて性教育についての啓発活動をしているNPO法人「ピルコン」が発起人となり、ネット署名サイト「Change.org」で、十代の実態に即した性教育の実施などを求めるキャンペーンを展開している。
 今月末までに一万人以上の賛同者を集め、都教委と文科省に届けることを目指している。十日午後七時の時点で、四千人超の署名が集まった。

 前出の橋本名誉教授は「『性交』という言葉が使えなければ、STDや予期せぬ妊娠を防ぐ話さえできない。結果的に子どもが被害に遭うことになりかねない」と指摘。
 科学と人権という二つの教育的視点からも、学校で性について教えることが求められると見る。
 「子どもの目線に立って、自分の体にこれから起きること、備えるべきことを教えることはとても重要。今回を機に市民が声を上げ、国際水準並みに学校で学べるよう、文科省も学習指導要領を見直す時だ」

 ※デスクメモ
 都教委の「性教育の手引」で、中学三年生にエイズの感染経路を説明するのに「性交」の文字がない。こんな性教育で、なぜ感染するか理解できるのか。
 一方、都福祉保健局はHPで、エイズは「セックスで感染する」と記す。子どもの知識と健康にどちらが有益か言うまでもない。(典)

『東京新聞』(2018年4月11日)


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