2018/10/21

都立高校の二極化現象 前代未聞の都立高校「定員割れ」 構造的な必然  Y暴走する都教委
 ◆ 「名門日比谷高校の大復活」!?
   それでも都立高が“定員割れ”する深刻な事情
(文春オンライン)


 都立高校がアンビバレントなことになっている。日比谷高校が約50年ぶりに東大合格ランキングトップ10に返り咲き、「都立復権」などと言われる一方で、2018年春の入試では多数の都立高校で定員割れが生じ、急遽第3次募集を受け付けたにもかかわらず、全日制31校433人の募集人員に対し、応募人数は26人にしかならなかった。都立高校の二極化現象である。なぜか。
 【表】難関4国立大の合格率一覧。日比谷高でも開成や麻布には及ばず、海城とほぼ互角だ

 ◆ 「都立復権」は日比谷、国立、西など一部だけ

 1990年代は都立高校の低迷期だった。そこで石原慎太郎都知事(当時)が「都立高校復権」を掲げ、


 1300万人規模の人口(東北・北陸全県の人口に相当する)を誇る東京全域を1学区にまとめ、さらに一部の都立高校を「進学指導重点校」に指定し、「地元の国立総合大学である東京大学」をはじめとする難関国立大への合格者数を具体的な目標として掲げさせた。その成果が日比谷高校「トップ10」入りである。

 都は現在、大学進学実績上位7校を「進学指導重点校」に指定している。
 それに次ぐ7校を「進学指導特別推進校」に指定している。いわゆる「2番手校」である。
 さらに「3番手校」に相当する13校を「進学指導推進校」としている。

 しかし、2018年の東大合格者数を見る限り、日比谷高校のほかに「復権」といえそうな都立高校は、国立高校の26人および西高校の19人、戸山高校の11人くらいである。その他の進学指導重点校3校に関しては合計しても10人。
 「2番手校」7校を合計してもたったの5人。
 ごく一部のトップ校が突出した実績を出しており、2番手以降が大きく引き離されているのが実態なのだ。

 ◆ 難関4国立大合格率で見てみると……

 さらに細かく見ていこう。表は東大・一橋大・東工大・京大の難関国立大学の2018年合格者数(既卒生含む)を2018年卒業生数で割った率(S率)による高校の序列だ。

 中学受験専門塾「うのき教育学院」代表の岡充彦さんがまとめたデータの抜粋だ。ただし、もともと東京の城南地区を中心として周辺の学校を調査対象としており、すべての高校を網羅しているわけではない。中学入試を行っていない私立高校は除外されている。ここでは記事の主旨に沿ってさらに学校数を絞り込んでいる。

 表内の「A率」は、早稲田・慶應・上智・東京理科・ICUの合格率。ただし私立大学の場合、1人の受験生が複数の合格を手にできるので、A率だけで単純に比較はできない。参考として見てほしい。

 ◆ 都立「2番手校」でも中学受験中堅校と同じレベル
 日比谷のS率およびA率は、中学受験の人気校海城とほぼ互角。
 難関大学合格可能性という観点から見れば、中学受験で海城に入ることと、高校受験で日比谷に合格することはほぼ同等の意味をもつといえる。

 続いて、国立、西、小石川が第2集団を形成しているが、A率まで含めて考えると、私立桐朋以下、城北、本郷、芝、攻玉社など私立男子伝統校のほうが上である。
 しかもこのあたりから、「都立」とはいっても都立中高一貫校が並ぶ。
 要するに、中学受験をして入る都立高校が、純粋な都立上位校を押しのけて健闘しているのである。東京都においては、やはり中学受験文化が強力であることがここでもうかがえる。

 進学指導重点校の戸山青山は、私立の巣鴨世田谷学園とほぼ互角。
 表にはないが、同じく進学指導重点校の都立立川のS率は7.3%、A率は44.3%、都立八王子東のS率は5.4%、A率は34.4%で、青山よりもさらに低い。

 進学指導特別推進校の小山台の上に名を連ねるのは、中学受験でちょうど偏差値50前後のいわゆる中堅校だ。A率で比べれば都立小山台よりだいぶ高い実績であり、都立新宿と肩を並べる。つまり、都立「2番手校」、しかもそのなかでの上位校であっても、中学受験で偏差値50程度のボリュームゾーンの学校と同等レベルなのだ。

 高校受験で都立高校の最難関上位数校に合格できる自信がないのなら、中学受験で私立中堅校や公立中高一貫校に入っておくほうが、難関大学合格可能性という観点からは有利なのである。

 ◆ 「ちょうどいい」レベルの都立高校が少なすぎる

 「都立復権」とは言っても、都立高校全体がレベルアップしたわけではなく、日比谷、国立、西の一部トップ校だけが突出して高い実績を出しているだけであり、難関大学合格実績では、ほとんどの都立「2番手校」「3番手校」がいまだ私立中堅中高一貫校の後塵を拝しているのが実態というわけだ。
 これでは東京で根強い私立中高一貫校人気に歯止めをかけることはできない。

 トップ校とその他校の間に大きな「溝」がある。この状況は、受験生の志望校選びにも影響する。
 都立高校を志望する場合、ごく一部の難関上位校を志望校から外すと、そのすぐ下のレベルの「ちょうどいい」志望校の選択肢が少なくて、困ってしまうのである。

 その「溝」を埋めなければならない都立2番手校、3番手校は大変だ。
 進学指導推進校の某校では、赴任したばかりの新校長が進学実績向上を掲げ、大胆な改革を行おうとし、生徒や保護者から反発の声が上がっている。

 ◆ 功を焦る校長――遠足はなくなり、体育祭は縮小

 保護者の一人は言う。「学校の伝統だった、生徒主体の卒業式第二部が変わってしまいました。遠足は観劇会に変わり、体育祭は文化祭のおまけでやるものに縮小されました。成績上位者には校長自らが国公立大進学を強力に奨めます。校長がワンマンすぎて、まわりの教員はむしろ無気力になっているように感じます。もう一人の息子は私立高校に通っていますが、いまは都立高校のほうが、進学進学とうるさいのですね。意外でした」。

 「進学指導推進校」の名に恥じぬよう、何が何でも大学合格実績の数字を引き上げることが、教育者というより公務員としての新任校長のミッションなのだ。これに成功した校長が、都の組織のなかで力をもつしくみである。

 都立最上位校がそれぞれに教育内容を研鑽しているのは事実だ。
 だが、優秀な生徒が一部の学校に偏れば、その分、難関大学の進学実績を伸ばして人気が上昇する学校が出る一方で、どんどん不人気になりますます進学実績を出せなくなる学校も出てくる構造的な必然だ。

 ◆ 「偏差値的に下位の都立より私立のほうがいい」

 それをあぶり出してしまったのが、都の私立高校実質無償化政策だ。
 偏差値的に下位にある都立高校(主に商業科、工業科。普通科でも偏差値下位校)に行くくらいなら私立高校に行ったほうがいいというのが都民の本音であることが露呈した。その結果が前代未聞の都立高校「定員割れ」である。
 「都立高校改革」と銘打って、上位校ばかりにてこ入れすれば、こうなるのは当然。このままの構造では、下位校はますます窮地に立たされ、二極化現象が進んでしまう。

 上位校だって安心していられない。
 学校の建て直しをするときに、まず進学実績を高めて世間からの評価を得るというのは間違った方法ではない。しかし伸びが鈍化するときが必ず来る。そのときまでに進学実績以外の学校の財産を築くことができなければ、結局また受験生たちは、より高い進学実績を出している進学校に流れていってしまう。
 それでは「名門復活」とはいえない。ただの「しゃかりき進学校」だ。

 都立高校改革は一定の成果を上げた。しかし弊害も出始めている。
 そろそろ新しい局面に移行する時期だと思われる。ここからが、都の教育行政の本当の腕の見せ所になるだろう。
おおたとしまさ

『文春オンライン』(2018/10/19)
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181019-00009369-bunshun-soci



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