2018/11/3

日本会議と関係の深いモラロジー研究所が教育委員会と癒着して現場に影響力  ]Vこども危機
 ◆ 長い時間をかけて入ってきた 
   〜みえないことがおそろしい
(教科書ネット)
濱田里美(香川県教職員組合副委員長)

 モラロジー研究所と雑誌「ニューモラル」モラロジー研究所のことを初めて知ったのは、1987年新採として勤務した職場で「ニューモラル」という雑誌の定期購読を勧められた時だ。
 教頭だったか先輩教員だったか記憶はあいまいだ。定期購入はしなかったが、職員図書費で購入した「ニューモラル」は毎月回覧されていた。
 あれから4校勤務した。いつまで「ニューモラル」が回覧され、いつ頃されなくなったのかも意識にない。「いいことを書いているな」と思った記憶はあるが、それがどういうものなのかを深く考えたことはなかった。

 ◆ 「親守詩」とモラロジー
 モラロジーについて再び意識したのは、「親守詩」のコンクール募集がトップダウンで入ってきたときだ。


 2013年の6月頃だったと思う。突然「親守詩」を全児童対象で取り組むよう指示があった。
 教員は、「保護者との関係がよくない家庭はどうするのだ」「忙しくて協力してもらえない家庭は?」とその対応に動揺が広がった。それでも、管理職は、「大切なことだから」と全児童対象をかたくなに主張した

 私は、「読書感想文やその他の作文は希望者選択であるのに、親守詩だけはなぜ全児童対象なのか」と管理職に問いただした。
 「いいものだから」と回答するのみ。
 教員は困っていることをどれだけ説明しても、変えようとはしなかった。

 組合の執行委員会でも話題にしたところ、家庭訪問までして回収した学校もあった。
 一方、まったく教員までおりてきていない市町の学校もあった。
 なぜ、「親守詩」だけなのか?疑問は大きくなった。
 調べてみると、モラロジー研究所が後援している。
 モラロジー研究所の理事長は日本会議の役員であることがわかった。
 「これって大丈夫なのか?」疑問はどんどんふくらんでいく。組合の執行委員会でも問題提起したが、「それって何?」というレベルだった。

 ◆ おおきなところで影響している?

 モラロジー研究所を調べてみると歴史は古く、戦前からあるようだ。戦後すぐに、文部省(当時)から財団法人の設立認可を受けている。
 1958年に「道徳の時間」が導入されていることを考えると、このときすでに何らかの影響があったことが推察される。
 1980年代後半から1990年代前半にかけて全国に教育法則化運動(現在はTOSS)が席巻した。若年教員が多数を占めている時代でもあり、だれもが書籍を手に実践をすすめた。
 教育は法則では成り立たないことが分かった多くの教員は離れた。現在、TOSSと名を変え教育現場に根をおろしている。そのTOSSが「親守詩」を進めている。
 当時、法則化運動を牽引していた野口芳宏氏は、モラロジー研究所の教育者研究会の講師として全国で講演している。

 香川県では、香川県小(中)学校教育研究会(1963年設立〉というのがある。そこには道徳教育部会があり、香川県独自の読み物資料(副読本)と指導資料を作成・熱心に授業研究を積み重ねてきている。
 香川県では、道徳部の研究部員(執行部員)になることが、出世の近道と揶揄されている。道徳部員の中には・モラロジーの会員が少なからずいる。

 2017年8月高松市でモラロジー研究所の教育者研究会が開かれた。
 参加者によると、ある教頭が登壇し、「私の教員人生は、モラロジー研究所で学んできたことで支えられてきた」という要旨のことを述べていたという。休憩時間には、盛んに若い教員を会員に勧誘していたと聞いた。

 2018年は台風で中止になったが、各学校の道徳部員自主参加とされながらも、参加することは当然のように言われ、参加を予定していたと聞く。
 今回の講師は、香川においての道徳教育を牽引してきた七條氏(高松大学副学長)だった。
 香川県教育委員会教育次長も名前を連ねていた。
 チラシは、あたりまえのように職員室で全職員に配布された。少なくとも同僚は、このチラシに何の疑問も感じていないようだった。

 ◆ 高松市教育委員会への要請とその反応

 2016年、モラロジーと「親守詩」のことを香川県の教科書ネット代表の方に聞いてみたが、反応は薄かった。
 その後大阪から情報が入ったらしく、問題意識を持ってもらえた。
 香川県の中でも高松市教委がとりわけ熱心だということで、要請にいった。
 担当の指導主事は丁寧に対応してくれた。「親守詩」とモラロジーそして日本会議の関係は、全く知らないようだった。

 ◆ 教育行政キャラバンでの要請と驚くべき反応

 小学校の道徳の教科化に際して、「一定の価値の押し付けや教員の締め付けをしないこと」「改訂学習指導要領に示されている『考えて議論する道徳』を香川県は積み重ねてきている。このことを保証するように」との要請を行った。

 「親守詩」とモラロジーと日本会議についても聞いてみたが重要なこととととらえている教育長や指導主事は少なかった。初めて知ったという反応もあった。
 もっとも、高松市以外は、「親守詩」が教員まで下りていないところもある。そんな中で、小豆島土庄町教育委員会教育長の回答は違っていた。
 「上部組織がどうであれ、親を大切にするこころはいいもの。いいものは積極的にとりいれていく」。
 2017年9月小豆島ではモラロジー教育者研究会が開催されており、教科書採択や教育研究集会の広報などに際して、市民団体が要請していたので、あらかじめ答えを用意していたようにも思えた。

 ◆ 見えないことが恐ろしい 知らないまま受け入れている

 「親守詩」は2013年から始まっている。
 2017年教育行政キャラバンでの懇談や、教科書ネットの要請などが影響しているのか、2018年度は「親守詩」が希望者対象になったという複数の教員から聞いた。

 モラロジーの教育者研究会の講演会は民間の教育団体の研究会と同じではないか。
 全日教連の香川支部の役員が来賓として招かれ、祝辞を述べる。県教委や市教委の教育長や教育次長も参加し祝辞を述べる。
 そこに、参加している現場の教員は違和感がないようだ。全日教連の香川支部の役員でさえ、モラロジーのことをほとんど知らなかった。
 2014年、全教が後援する「教育のつどい」香川県教委は後援しなかった。バランスを欠いているのではないか。

 モラロジー研究所のHPを細かく見ると、長い時間をかけて学校教育に影響してきたことがわかる。
 2013年「親守詩」が表面にでてきたことにより、私たちは問題意識をもった。
 土庄町教育長が言うように「みなさんが問題に思うずっと前から取り組んできた」ことだとすると恐ろしくなった。
 現場では、モラロジーは全く見えない。

 数年前、組合員が道徳部員として副読本の編纂にかかわっていたが、その会でもモラロジーのことは出てこなかったという。
 教育基本法に家族が明記され、モラロジーが主張する「親学」に光があたった。これもまた、モラロジーの運動の成果なのかもしれない。

 香川県では、副読本を中心に、教科化される前から年間35時間、道徳の授業に取り組んできた。指導書があり、その通りに進めると1単位時間の授業ができた。
 少なくとも文科省の教科書よりは「考えて議論する」指導法が取られていた。それゆえ、香川の多くの教員は指導書の通りに授業をする。2018年課題の多い教科書でも多くの教員は指導書の通りに授業をしている。
 みえないところで、影響を受けていたとしても、長時間過密労働で疲弊し考える力を奪われている現場では、その正体がはっきり見えない限り知らない間に染まってしまう。これが一番おそろしい。

 注:「親守詩」とは、子どもが五・七・五で、親が七・七でつなぎ「感謝」と「親こころ」を表現するとするもの。
(はまださとみ)

『子どもと教科書全国ネット21ニュース 122号』(2018.10)




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