2018/12/11
騙す意図での論点ずらしを分かりやすく可視化した「ご飯論法」 ]平和
◆ 流行語大賞トップ10入賞の「ご飯論法」とは?
政府の不誠実答弁を許さない「名付けて退治」論 (ハーバー・ビジネス・オンライン)

前列右から2番めが紙屋高雪氏、3番目が上西充子氏。
12月3日、「2018ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞とトップ10が発表され、法政大学キャリアデザイン学部教授で、現在国会パブリックビューイング(以下、国会PV。Twitter IDは@kokkaiPV)の活動を通じ、不誠実な政府答弁が横行する国会審議を広く世間に知らしめる活動をしている上西充子氏と、ブロガー・マンガ評論家である紙屋高雪氏が発案・命名した「ご飯論法」がトップ10に選ばれた。
「ご飯論法」とは、裁量労働制や高度プロフェッショナル制度の危険性を国会で野党議員が追及した際に、加藤勝信厚生労働大臣が行った悪質極まりない論点ずらしの話法に驚愕した上西氏がTwitterで次のようなツイートをしたのを受けて、紙屋氏が「ご飯論法」とネーミングしたものだ。
「朝ごはんは食べなかったんですか?」と聞かれて、パンを食べていたなら、ごく普通に誠実に回答すれば「食べました」と答えるだろう。
しかし、何らかの理由で「食べました」と答えたくないときに、「朝ごはん」=朝食全般について聞かれているのに、あたかも「ご飯(白米)」について問われているかのように、勝手に論点ずらしをして、「ご飯は食べていません」と答弁し、実際に「朝ごはんを食べたか」については答えず、相手(国会の場合は、主に国民)に「朝ごはんを食べていなかったのか」と思わせようとする答弁方法のことだ。
◆ 「ご飯論法」を生んだ加藤厚労相の論点ずらし答弁
上西氏がこの論点ずらしを指摘した加藤厚労相と共産党の小池晃議員のやり取りはこんな感じだった。(※参照:国会PV「第2話 働き方改革―ご飯論法編」完成記念試写会 #国会パブリックビューイング 2018年12月1日 54分39秒〜)
動画の引用箇所のやや前の部分から書き起こししてみよう。
小池議員は、冒頭で「理論的に言えば、4週間で最初の4日間さえ休ませれば、あとの24日間は、しかも休日も時間制限もないわけだから、24時間ずうっと働かせる」ことができてしまうことを危惧し、そのようなことができないように法律上の規定がありますか? と質問している。「あるorない」を問われているのだから、シンプルに、かつ誠実に回答するのであれば「あるorない」で回答するのが普通だろう。
それを、加藤厚労相は「働かせるということ自体がこの制度にはなじまない」などと論点をずらしたうえで、「そういう仕組みになっていない」かのように聞こえる答弁をしたのである。実際には、そのようなことが起きる可能性が法律上排除されていないにも関わらず、である。
また、加藤厚労相は“一般であれば、残業が命じられて、そしてそれにのっとって仕事をしなきゃならないわけであります”などと言っているが、そもそも高プロ制には「残業」というものがないのである。1日の労働が8時間を超えてはいけないという規定がそもそもないのが高プロ制であり、8時間以上働くことを命じるのを禁じたり、8時間を超えた場合に割増賃金を払わないといけないという規定も使用者は守らなくていいのだ。
そういう話であるにも関わらず、「残業が命じられる、そういう仕組みになっていない」というのは、「そもそも残業という区切りがないです」と言っているだけで、「嘘をついていないのだけど、いいように聞こえる」という、敢えてミスリードさせて安心させる悪質な話法なのである。
国会答弁では「ご飯論法」が横行しており、上西氏の活動「国会PV」では、実際の国会答弁を素材に、ご飯論法の見分け方を解説した動画「【街頭上映用日本語字幕版】国会パブリックビューイング 第2話 働き方改革−ご飯論法編−(収録映像一覧情報あり)」も作成、配信している。
◆ 「名付けること」で問題に気づく言葉
上西氏は語る。
その結果、「2018ユーキャン新語・流行語大賞」のトップ10の受賞であり、国語辞典『大辞泉』(小学館)による「新語大賞2018」の次点に選ばれたということに繋がったのだ。
<取材・文/HBO取材班 撮影/横川圭希>
上西充子●うえにしみつこ。Twitter ID:@mu0283。
法政大学キャリアデザイン学部教授。共著に『就職活動から一人前の組織人まで』(同友館)、『大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A』(旬報社)など。働き方改革関連法案について活発な発言を行い、「国会パブリックビューイング」代表として、国会審議を可視化する活動を行っている。『緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説 「安倍政権が不信任に足る7つの理由」』の解説、脚注を執筆。
『ハーバー・ビジネス・オンライン』(2018.12.04)
https://hbol.jp/180287
政府の不誠実答弁を許さない「名付けて退治」論 (ハーバー・ビジネス・オンライン)

前列右から2番めが紙屋高雪氏、3番目が上西充子氏。
12月3日、「2018ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞とトップ10が発表され、法政大学キャリアデザイン学部教授で、現在国会パブリックビューイング(以下、国会PV。Twitter IDは@kokkaiPV)の活動を通じ、不誠実な政府答弁が横行する国会審議を広く世間に知らしめる活動をしている上西充子氏と、ブロガー・マンガ評論家である紙屋高雪氏が発案・命名した「ご飯論法」がトップ10に選ばれた。
「ご飯論法」とは、裁量労働制や高度プロフェッショナル制度の危険性を国会で野党議員が追及した際に、加藤勝信厚生労働大臣が行った悪質極まりない論点ずらしの話法に驚愕した上西氏がTwitterで次のようなツイートをしたのを受けて、紙屋氏が「ご飯論法」とネーミングしたものだ。
Q「朝ごはんは食べなかったんですか?」おわかりになるだろうか?
A「ご飯は食べませんでした(パンは食べましたが、それは黙っておきます)」
Q「何も食べなかったんですね?」
A「何も、と聞かれましても、どこまでを食事の範囲に入れるかは、必ずしも明確ではありませんので・・」
そんなやりとり。加藤大臣は。
(上西氏のツイッターより)
「朝ごはんは食べなかったんですか?」と聞かれて、パンを食べていたなら、ごく普通に誠実に回答すれば「食べました」と答えるだろう。
しかし、何らかの理由で「食べました」と答えたくないときに、「朝ごはん」=朝食全般について聞かれているのに、あたかも「ご飯(白米)」について問われているかのように、勝手に論点ずらしをして、「ご飯は食べていません」と答弁し、実際に「朝ごはんを食べたか」については答えず、相手(国会の場合は、主に国民)に「朝ごはんを食べていなかったのか」と思わせようとする答弁方法のことだ。
◆ 「ご飯論法」を生んだ加藤厚労相の論点ずらし答弁
上西氏がこの論点ずらしを指摘した加藤厚労相と共産党の小池晃議員のやり取りはこんな感じだった。(※参照:国会PV「第2話 働き方改革―ご飯論法編」完成記念試写会 #国会パブリックビューイング 2018年12月1日 54分39秒〜)
動画の引用箇所のやや前の部分から書き起こししてみよう。
小池議員:健康確保措置で、今、年百四日以上の休日と言ったけど、年百四日というのは週休二日で当てはまるわけですね。土日さえ休ませれば、盆も正月も祝日もゴールデンウイークも全部働かせてもいいんだと。しかも、毎週二日を休日とすることじゃないんです、これ。四週で四日以上です。だから、理論的に言えば、理論的に言えば、四週間で最初の四日間さえ休ませれば、あとの二十四日間は、しかも休日も時間制限もないわけだから、二十四時間ずうっと働かせる、これが、いや、論理的には、この法律の枠組みではできるようになるじゃないですか。私が言ったことが法律上排除されていますか。※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
加藤厚労相:委員が言われた働かせるという状況ではなくて、働かせるということであれば本来この制度というのは適用できなくなってまいりますので、そういった意味では、あくまでも本人が自分で仕事を割り振りして、より効率的な、そして自分の力が発揮できる、こういった状況をつくっていくということであります。
小池議員:高プロで労働時間の指示ができないという規定が法律上ありますか。
加藤厚労相:そういったことはこれから指針を作ることになっております。法律に基づく指針、そして、その指針にのっとって労使委員会で決議をしていただく、こういうプロセスがありますので、その指針の中身に今御指摘のことも含めて、これまあ法律が通ればの話ですけれども、労働政策審議会で御議論いただくことになるというふうに考えております。
小池議員:法律上全くないわけですね。それで、私の質問に答えていないんですよ。四日間休ませれば、あとはずっと働かせることが、百四日間を除けばずうっと働かせることができる。計算すればこれ六千時間になりますよ、六千時間を超えますよ。これを排除する仕組みが法律上ありますかと聞いている。
加藤厚労相:ですから、今申し上げましたように、働かせるということ自体がですね……(発言する者あり)いや、働かせるということ自体がこの制度にはなじまないということでありますから、ですから、それを踏まえて、先ほど申し上げて、法の趣旨を踏まえた指針を作っていく、そして、指針に基づく決議を決めていただく、そして、決議は指針に遵守しなければならない、こういった議論がなされているわけでありますから、今委員おっしゃったようなことにはならないだろうというふうに思います。
小池議員:私は質問ちゃんと言っているんです。なるかならないかと聞いているんじゃない。法律上排除されることになっていますかと、私が今指摘したような働き方は法律上できないという規定に合っていますかと聞いているんです。
加藤厚労相:ですから、一般であれば、残業が命じられて、そしてそれにのっとって仕事をしなきゃならないわけであります。しかし、この高度プロフェッショナルはそういう仕組みになっていないんです。法の趣旨もそうでないんです。したがって、それに基づいた、先ほど申し上げた、法律に具体的にというお話がありましたけれども、その法案の趣旨を踏まえて指針にしっかり盛り込めば、それは法律的な効果を、先ほど申し上げたように生んでいくということであります。
小池議員:答えていないです、答えていないんですよ。その趣旨がとかと言うけど、法律上そういったことが禁止されていますかと聞いているんです。イエスかノーかではっきり答えてください。
加藤厚労相:ですから、先ほど申し上げた仕組み全体の中でそうしたことにならないという形をつくっていきたいと、こういうふうに考えているわけであります。
小池議員は、冒頭で「理論的に言えば、4週間で最初の4日間さえ休ませれば、あとの24日間は、しかも休日も時間制限もないわけだから、24時間ずうっと働かせる」ことができてしまうことを危惧し、そのようなことができないように法律上の規定がありますか? と質問している。「あるorない」を問われているのだから、シンプルに、かつ誠実に回答するのであれば「あるorない」で回答するのが普通だろう。
それを、加藤厚労相は「働かせるということ自体がこの制度にはなじまない」などと論点をずらしたうえで、「そういう仕組みになっていない」かのように聞こえる答弁をしたのである。実際には、そのようなことが起きる可能性が法律上排除されていないにも関わらず、である。
また、加藤厚労相は“一般であれば、残業が命じられて、そしてそれにのっとって仕事をしなきゃならないわけであります”などと言っているが、そもそも高プロ制には「残業」というものがないのである。1日の労働が8時間を超えてはいけないという規定がそもそもないのが高プロ制であり、8時間以上働くことを命じるのを禁じたり、8時間を超えた場合に割増賃金を払わないといけないという規定も使用者は守らなくていいのだ。
そういう話であるにも関わらず、「残業が命じられる、そういう仕組みになっていない」というのは、「そもそも残業という区切りがないです」と言っているだけで、「嘘をついていないのだけど、いいように聞こえる」という、敢えてミスリードさせて安心させる悪質な話法なのである。
国会答弁では「ご飯論法」が横行しており、上西氏の活動「国会PV」では、実際の国会答弁を素材に、ご飯論法の見分け方を解説した動画「【街頭上映用日本語字幕版】国会パブリックビューイング 第2話 働き方改革−ご飯論法編−(収録映像一覧情報あり)」も作成、配信している。
◆ 「名付けること」で問題に気づく言葉
上西氏は語る。
『ご飯論法』は“名付けて退治”の言葉です。30年ほど前に新語・流行語大賞を取った『セクシュアル・ハラスメント』と同じです。実際、その奇妙なネーミングはSNS上でハッシュタグとともに拡散し、ついには野党議員が国会で言及し、新聞や雑誌で取り上げられるようにもなった。
加藤大臣に限らず、安倍首相も、他の大臣も、官僚も、平然と『ご飯論法』の答弁を繰り返しています。その問題を知ってもらいたいと、たとえたものです。
ビールを飲んでいるのに『酒は飲んでいない』と言い張るのと同じで、『そういうことね!』とピンとくる。面白くて理解しやすい。それが『ご飯論法』です。
『詭弁』と表現するだけでは、問題に気づけません。加藤厚生労働大臣の論点ずらしは非常に巧妙なため、見分ける言葉として『ご飯論法』が必要だったのです。
パンも何も食べなかったかのように質問者には聞こえる、相手を騙す意図を含んでいる。その問題を、わかりやすく可視化する必要があったのです。
『オレオレ詐欺』や『母さん助けて詐欺』といった言葉によって『振り込め詐欺』に気づきやすくなる、それと同じです
その結果、「2018ユーキャン新語・流行語大賞」のトップ10の受賞であり、国語辞典『大辞泉』(小学館)による「新語大賞2018」の次点に選ばれたということに繋がったのだ。
政府は問題を隠したいときに『ご飯論法』を使います。裁量労働制が濫用されて過労死につながったという現実を隠したい、高度プロフェッショナル制度によって定額働かせ放題が可能になって過労死の危険性が高まることを隠したい、そのような場面で『ご飯論法』が多用されました。
現在の臨時国会でも、『ご飯論法』は横行しています。技能実習生をめぐる劣悪な処遇や人権侵害が国会審議を通じて明るみに出されてきていますが、問題に向き合わないために、山下貴司法務大臣も『ご飯論法』を使っているのです。
不都合な事実に向き合わないまま法改正が進められれば、私たちの暮らしは脅かされます。問題の指摘には真摯に答える、噛み合った議論が国会では必要なのです。
なのに政府は、「ご飯論法」で野党議員を騙し、問題の指摘から逃げ続けています。この姿勢は、野党議員を愚弄するものであり、私たち国民を愚弄するものです。
国会がこんなに異常な事態になっていることを広く皆さんに知っていただき、不誠実なすれ違い答弁は許さない、と監視することが必要です。そのような現状を正していくために、「ご飯論法」を広く知っていただきたい。今回の受賞が、そのきっかけになることを願っています。
<取材・文/HBO取材班 撮影/横川圭希>
上西充子●うえにしみつこ。Twitter ID:@mu0283。
法政大学キャリアデザイン学部教授。共著に『就職活動から一人前の組織人まで』(同友館)、『大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A』(旬報社)など。働き方改革関連法案について活発な発言を行い、「国会パブリックビューイング」代表として、国会審議を可視化する活動を行っている。『緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説 「安倍政権が不信任に足る7つの理由」』の解説、脚注を執筆。
『ハーバー・ビジネス・オンライン』(2018.12.04)
https://hbol.jp/180287






