2019/2/3

『反戦川柳句集〜「戦争したくない」を贈ります』  ]平和
 レイバーネット日本川柳班による『反戦川柳句集』が18年12月、出版された。川柳班3冊目の出版だ。文芸評論家の楜沢健さんにその紹介と、今日の川柳運動課題について論じてもらった。

  レイバーネット日本 川柳班 『反戦川柳句集』 出版
 ◆ 川柳で言葉を乗っ取り返す (週刊新社会)
   文芸評論家 楜沢 健(くるみさわ・けん・早稲田大学講師)

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発行元レイバーネット日本88頁頒価700円

 本書は、『がつんと一句−ワーキングプア川柳』(2010年)、『原発川柳句集−五七五に込めた時代の記録』(2013年)に続く、レイバーネット川柳班による3冊目の川柳句集である。
   「ふざけるな女は前から非正規だ」
   「外食は毎日してるさ公園で」
   「パニックが起こらないよう被曝させ」
   「水清き桜の国の汚染地図」。


 1920年代に井上剣花坊主宰の柳樽寺川柳会から生まれたプロレタリア川柳に学んだその作風は、巷でおなじみのサラリーマン川柳やシルバー川柳とも、結社主体の伝統川柳とも、新聞ラジオの時事川柳とも、さらには企業による宣伝目的の冠川柳とも一線を画す。
 寸鉄人を刺す、毒舌をも厭わない、反時代的な批評精神にあふれた新潮流の川柳といってよい。プラカードや筵(むしろ)旗に川柳を高々と掲げて練り歩く姿は、いまやすっかり国会前、経産省前抗議デモの名物となっている。

 「反戦」と銘打った今回の句集には、安倍政権による憲法の乗っ取りが秒読み段階に入った2015年以降、「戦争」をテーマに句会や公募で集められた川柳が収録されている。
 一昨年の第四次安倍政権の発足により、国会はすっかり日本会議に乗っ取られた。「教育勅語」再評価の動きも顕著であり、春から中学の「道徳の教科化」もはじまる。いよいよ教育基本法改正から続く戦後教育の乗っ取りが本格化しようとしている。

 ◆ 戦時標語に言葉で戦う

 こうした状況にあって、本書であらためて呼び返されているのが、15年戦争下に「聖戦」を嗤い、「教育勅語」を諷刺し、「軍隊」を嘲笑い、「日本」の矛盾を穿つ川柳を発表して投獄されたプロレタリア川柳作家・鶴彬の軌跡である。
 「鶴彬と平和教育」「鶴彬の時代の空気と今」「鶴彬墓参ツアーに参加して」「緊張感の中で『反戦川柳人鶴彬』碑前祭」など、ここでは各地の鶴彬再顕彰の取り組みが紹介され、あらためて川柳と「戦争」の関係、川柳が辿った苛酷な歴史、時代の矛盾と対峙するその芸術性に光が当てられている。

   「修身にない孝行で淫売婦」(1936年)。

 そう鶴彬は切り返し、「教育勅語」と「修身」の矛盾と弱点、厚顔無恥を嘲笑した。国家に乗っ取られた教育を、言葉で再び乗っ取り返すこと。それが鶴彬の川柳の手法でありエッセンスにほかならなかった。

   「タマ除けを産めよ・殖やせよ勲章をやろう」(一九三七年)。

 同じく、そう鶴彬は切り返して戦時下の国策標語「産めよ殖やせよ国のため」の欺隔を挟り出し、嘲笑った。
 銃後の街頭を埋め尽くした七五調の標語を、同じく七五調一七字の川柳で「正しく」書き換え、乗っ取り返してやったのだ。

 乗っ取りには乗っ取りで、言葉には言葉で。一言葉で国家に負けるわけにはいかない。それが川柳の戦い方であり、矜持にほかならなかった。

   「日の丸に真っ赤な嘘がよく似合う」
   「子を産ませ爆弾にした国忘れ」
   「悪者は殺していいのと孫が問い」
   「廊下奥いつも平和を立たせたい」。

 この句集とともに、言葉を乗っ取り返す戦いに参戦したい。

『週刊新社会』(2019年1月29日)



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