2019/5/21

西修氏の「103か国の憲法には全て国家緊急事態条項が入っている」説はフェイクか否か  ]平和
 ◆ 永井幸寿弁護士による「諸外国の憲法の国家緊急権」について解説

 『週刊金曜日』2019年5月10日号「金曜アンテナ」欄の永野厚男執筆記事・第3段落後半の、西修・駒澤大学名誉教授(78歳)が「1990年以降制定された103か国の憲法を調べたら、国家緊急事態条項は全て入れている。我が国はない」と、色々な改憲集会等で主張し続けている件について。

 1 私・永野厚男は連休中、これがフェイクか否かを検証するため、また、これに反論するため10以上の新聞・雑誌等(ネット配信を含む)を調査しました。
 このうち、新聞労連・新聞研究部が2016年7月20日に発行した『しんけん言うトピア』に出ている、永井幸寿弁護士の「災害・テロと国家緊急権」と題する2015年12月13日実施の講演会・講演録が一番参考になると思いました。
 弁護士・永井幸寿様にご助言をお願いしたところ、以下の「2」のようにお教え頂いたので、皆様にお伝えします。


 2 私(永井幸寿弁護士)はこれ(西修氏の主張)がフェイクかどうかは知りません(但し西修氏の103カ国について条文を引用した解説は見当たりません。)。
 しかし西説は、他の国が国家緊急権をもっているから日本も持つべきであるというものであり、無内容な議論です。国家緊急権は、それぞれの国の歴史・社会・法律制度に密接な関係あるのでこれを抜きに議論することはできません。

 また、先進4カ国、例えば、イギリス・フランス・ドイツ・アメリカと日本を比較するならまだしも、この103カ国は失礼ながら国名すら聞いたことのない国もあって、日本と比較する意味がありません。
 そして、このイギリス・フランス・ドイツ・アメリカの内、「災害」に関する国家緊急権を憲法に設けているのはドイツだけです。
 その他の国、イギリス・フランス・アメリカ日本と同じく法律で災害に対処しているのです。
 また、ドイツが憲法で定める国家緊急権の内容は大変緩いものであり、日本の法制度の方が権力の集中や人権の制限が強いのです。

 また、国家緊急権そのものを憲法で定めているのは、フランスとドイツだけです。イギリスもアメリカも国家緊急権は法律で定めています。
 以上からすれば、外国の制度と比較しても日本の憲法に国家緊急権を設ける必要はありません。

 「米英の憲法に国家緊急権はなく、日本は既に法律で権力の集中や人権制限を盛っている。」と私の講演録に書いてあるようですが、米英の憲法に国家緊急権はあるとも言えます。つまり、イギリスは不文の憲法(法律・判例法・憲法習律で形成される)をもつ国で、英米法特有のマーシャル・ローに基づいて、又は国会の制定した法律で国家緊急権が認められています。またアメリカも、イギリスのマーシャル・ローを受け継いで憲法に明文はありませんが国家緊急権を認めています。但し、濫用を防止するために国会の法律で国家緊急権を統制しているのです
 厳密には「米英の憲法に明文で国家緊急権はなく」と書くべきでしょう。

 3 前述のように、永井幸寿様に助言を得たのは『週刊金曜日』の校正後でしたが、『週刊金曜日』の掲載記事は、最後の校正過程で、「米英の憲法に国家緊急権の規定はなく、日本には既に災害時に対処できる法律制度が存在する」という具合に、「の規定」という語は入れました。不十分かもしれませんが、「憲法に明文で国家緊急権はなく」という永井幸寿様からのご教示に近い表現は、校正段階で一応できたかな、とは思っています。
...

※ 連休が長かったこともあり、永井幸寿様に初めてご連絡が取れたのが、『週刊金曜日』の校正後となり、頂いたご助言を(紙ベースの)『週刊金曜日』の掲載記事にストレートには反映できなかったため、『パワー・トゥ・ザ・ピープル!! パート2』において、ご説明します。(永野厚男)


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