2019/6/13

沖縄の基地問題、いまある危険と新たな危険  ]平和
  《教科書ネット21ニュースから》
 ◆ 沖縄では2つの基地問題がある
   県民は翻弄され、板挟みにされてきた

明 真南斗(あきらまなと) 琉球新報記者

 沖縄には大きく分けて二つの基地問題がある。
 一つは現存する米軍施設から派生する問題で、米軍機の事故や米軍関係者による事件、騒音被害、環境汚染が挙げられる。

 もう一つは新たに造られる基地や機能強化の問題だ。人口が密集する沖縄島中南部にある米軍施設を返還するという名目で、移設条件によって本島北部の基地機能が強化される恐れがある。特に名護市辺野古の新基地建設問題は国会論戦でも取り上げられ、最も知られている。

 戦後の沖縄では二つの基地問題が絡み合い、県民は翻弄され、板挟みにされてきた。全国で基地問題に関する沖縄の問題意識を共有するには、どちらか片方ではなく両方について理解を深めてもらうことが必要だと考える。


 ◆ いまここにある危険

 2017年12月13日、米軍普天間飛行場から飛び立った大型の米軍ヘリから、重さ約7.7キロの窓が外れ、沖縄県宜野湾市の普天間第二小学校に落下した。
 54人の子どもたちが体育の授業を受ける運動場の中央だった。わずか10メートルほどの距離に児童もおり、落下地点が少しでも逸れていれば最悪の事態につながる重大事故だった。
 当時、運動場では2年生が球遊び、4年生は男子児童が大縄跳び、女子児童は鉄棒に取り組んでいた。
 窓落下事故は一瞬にして子どもたちの学校生活を変えた。
 砂ぽこりと同時に子どもたちから悲鳴が上がった。教員たちの誘導で児童は校舎内に避難。教室へ戻ると、思い出すように泣き出す子もいた。
 パトカーや消防車も到着し、学校周辺は騒然とした。ニュースや学校からの連絡で事故を知った保護者たちが次々と駆けつけ、わが子の肩を抱いて正門から帰宅した。
 事故後、学校に行くと頭痛や体調不良を訴え、欠席や早退を繰り返すようになった児童もいる。約2カ月間、運動場は閉鎖された。
 校長は100%の飛行禁止を約束するよう訴えたが、日米両政府はいまだに応じていない
 普天間第二小学校へのヘリ窓落下はあくまで一例で、米軍基地があるが故の事件・事故は数え切れないほど起こっている。騒音被害や環境汚染問題などもあり、県民は常に基地と隣り合わせの生活を余儀なくされてきた。
 「いまここにある危険」を知れば、新基地建設への反発が根強い意味が伝わるだろう。

 ◆ 新たな基地の問題

 米軍施設の県内移設に伴う新基地建設や機能強化という「新たな基地問題」の中でも、注目を集めるのが米軍普天間飛行場の返還・移設問題だ。
 1995年の米兵による少女乱暴事件に端を発する。少女乱暴事件を受けて沖縄県民の反基地感情は頂点に達し、96年に返還が合意された。

 当初計画は辺野古沖合への海上ヘリポート案で、規模は小さく撤去可能とされた。いったんは当時の稲嶺恵一知事が「苦渋の選択」として15年使用期限・軍民共用空港の条件を付して案を受け入れたが、その後、政府が移設案を見直す過程でその条件をほごにした経緯がある。

 県民の県内移設への拒否感が高まり、実現のめどが立たない中、政府は名護市辺野古移設に固執し続けている。
 もろ手を挙げて辺野古新基地建設に賛成する人、どうしても辺野古に基地を造ってほしいと主張する人はほとんどいない。
 一方で全県民が辺野古移設に反対している訳ではない。普天間飛行場の危険性除去を優先させるべきだと考え、「本当は造ってほしくないが仕方ない」と辺野古移設を認める人もいる。

 普天間第二小に息子2人を通わせる40代女性はもともと辺野古移設に反対だったが、運動場に米軍ヘリの窓が落下する事故が起こった後、移設容認の考えがよぎったという。
 「自分の子が危険にさらされるぐらいなら、移設してもらった方がいいのかもしれない」。わが身に迫る危険を前に心が折れた宜野湾市民はこの女性だけではない。
 名護市辺野古移設を巡って政府が繰り返してきた「普天間の固定化」という言葉は、普天間飛行場に関連する事故が連続する中、特に周辺住民にとって現実味を帯びて響いてもおかしくはない。
 政府は「普天間の固定化か、辺野古移設か」という二者択一を沖縄県民に突きつけ、辺野古移設の受け入れを迫ってきた。普天間第二小に米軍ヘリの窓が落ちた事故当日、菅義偉官房長官は会見で、辺野古移設について「ご理解、ご協力を頂けるよう粘り強く取り組みたい」と発言。普天間飛行場の危険性と結びつけ、名護市辺野古での新基地建設を改めて主張した。

 ◆ 崩れる政府の主張

 しかし、普天間飛行場の一日も早い返還と危険性除去のために辺野古移設を進めるという政府の言い分はすでに破綻している。工事の長期化と費用の増大を示す事実が次々と明らかになっているためだ。

 滑走路を建設する予定の海域・大浦湾に軟弱地盤が広がっていることが波紋を広げている。
 新基地建設の前に地盤改良が必要で、政府は約7万7千本の砂のくいを打ち込む大規模な工事を検討している。防衛省の報告書で示された工程表によると、地盤改良工事は大きく分けて二つの段階がある。
 海上から大型作業船を使って地盤を固めるための砂のくい6万3155本を打ち込む工事には約3年8カ月を見込んでいる。
 それに加え、改良が必要な場所は大型船で対応できない浅瀬部分にも広がり、いったん埋め立てた後に砂杭1万3544本を打ち込む作業が計画される。この過程には約1年かかる
 足し合わせると約5年になる。

 政府は国会で野党の追及を受け、両工事を同時並行で実施することもあり得ると主張しているが、その根拠は示していない。
 政府が地盤改良について検討した報告書では浅瀬部分について「海上工事に連続して施工する工程としている」と記載している。これらの地盤改良は、政府が今後工事の計画変更を県に申請し、承認されてからが起点となるが、県は認めない構えだ。
 地盤改良に着手できなければその分、工期も遅れる。

 当初、政府は埋め立て5年、その後の施設整備3年の計8年の工程を予定していた。軟弱地盤の対応が発生したことで、単純計算すると13年以上の工期がかかることになる。
 19年2月24日に埋め立ての是非を問う県民投票が実施された。投票総数の7割を超える43万4273人の県民が埋め立て反対に票を投じた。新基地建設阻止を掲げて18年9月の知事選で過去最多得票数で当選した玉城デニー知事の得票数を上回る数字だ。
 二つの基地問題に翻弄され、苦悩してきた県民一人一人が出した結論だといえる。

 ◆ 問われるもの

 玉城知事は県民投票の結果を後ろ盾に安倍晋三首相へ工事停止と話し合いを要求した。しかし、安倍首相は県民投票の結果に反し、19年3月25日、2区域目での土砂投入を開始した。
 県側は政府が工事を止めれば、検討していた提訴を控える予定だったが、政府が工事停止を拒否したことで県も提訴に踏み切らざるを得なくなった

 しかし、県民投票の結果をむげにされても、県民の意思はつぶされていない。多くの県民は政府の対応を淡々と受け止めている。工事の続行は想定内だからだ。
 むしろ県民の目は政府そのものではなく、政府を支える国民の大多数に向けられている。
 県民投票で反対の意思が明確になった後も政府が工事を推し進めることができるのは、支持率に影響しないからだ。
 沖縄でどれだけ基地建設を強行しようと、異議を唱えることなく支持し続ける国民がいるからだ。民主主義国家として、この道を進み続けていいのか。問われているのは国民の意思だ。

『子どもと教科書全国ネット21ニュース 125号』(2019年4月)


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