2019/6/9

天皇制は男系家父長原理に貫かれた差別のシステム・体系である  ]平和
  =本の紹介(週刊新社会)=
 ◆ 『天皇家の女たち 古代から現代まで』鈴木裕子著(社会評論社3,500円+税)
   天皇制を真剣に考えよう 男尊女卑、即位儀式、憲法違反の問題が多い

 中身びっしりの文字通りの大著。元号・天皇の退位・即位に日の丸の波の光景は危機感を増幅させられたが、民主主義も憲法違反も蹴散らかして戦争のできる国へとひた走る安倍政権の支持者が4割もいることに連繋した現象だろうか。私たち絶対多数の国民の命と生活を本気で考えなければならぬ現状にあって、まさに時宜を得た一書と言える。
 本家本元の中国でも西暦が使われているグローバル化時代に、公用語に元号使用は世界で唯一だ。政府の時代感覚に疑問を覚える。しかも「国書」『万葉集』を力説するが、『万葉集』が影響を受けている漢書『文選』に「令」「和」の入っている賦篇が既にあるばかりか、


 「海ゆかば」に象徴されるが、戦争下、「名誉の戦死者」づくりに利用された戦犯書の性格すら持たらされた書で、「万葉」は天皇・皇后の万歳を祝福する意(折口信夫)説もあり、天皇制に密着しているのだ。

 元号は三六代孝徳天皇の「大化」から始まるが、一代一元号ではなく、一代七元号の時代もあり、皇位継承も嫡流男子優先ではなく十代8人の女帝がいる。卑弥呼と天照大神は同一人物の説もあり、初代天皇の神武天皇の祖先が天照大神というが、神話や伝説上の人物らしく、AI時代に恭しく多額の税金を使っての仰々しい儀式はご当人も苦痛だろうと思ってしまう。

 ◆ 古代天皇制の血にまみれ抗争

 本書は、「序章 上代、古代の天皇家と女性たち」に本書刊行の意図が示され、「第1章 古代における女帝(女性天皇)の登場」から「第14章 象徴天皇制と天皇家の女たち」まで、章中三〜七項目で論じられている。
 序章の始めの中見出し「古代日本の天皇一族の『血』に塗れた抗争」が本書前半の内容になっているが、権力者の覇権争いは凄まじい。
 天皇制の確立は孝徳天皇時代で権力機構を支える「官人組織」も作られ、権力の基礎固めに必須の財力は、民衆に課せられた田租、調・庸・徭役・人頭税など「奴隷的収奪」により、権力誇示の証ともなる寺院、宮殿、庭園など大規模な造営は駆り出された民衆の涙の結晶なのだ

 ◆ 天皇・朝廷の権勢の陰に民の涙・悲鳴

 古代天皇家の歴史が血塗られているのは、多妻妾の明治時代まで続いた側室制度と無縁ではない。
 後宮制度の確立は文武天皇の702年というが、その後の聖武天皇の妻は権勢を誇った藤原氏の娘で万世一系は崩れ、桓武天皇の母は百済王家出で大和純血説も破綻している。
 桓武天皇の後宮は名前の確認されている者だけでも32人いて、そのうちの4人は百済系である。
 父に劣らず嵯峨天皇も色好みで皇子23人、皇女27人計50人の子をなしている。その子やその子を産ませた側室への経済的負担者について贅言は不要だろう。
 天皇・皇族、貴族たちの絢爛・高雅・豪奢な生活の陰には何時でもその犠牲とされる弱者が悲鳴をあげていたのだ。この構図は今も変わらない。

 ◆ 側室制こそ男系「血統」の皇統保持のシステム

 安倍首相の森友問題を引きずっている妻帯同の原発売り込みの死の商人活動も含む頻繁な外遊の一度の費用は、税金による2億円という。安いビジネスホテルを検索する私たちとは溝が深すぎる。
 首相時代の森喜朗氏の「日本は天皇中心の神の国」発言には度肝を抜かされたが、若桑みどりの言葉「後宮は天皇のハーレム」を援用した著者の、明治天皇も(その前も)大正天皇も「側室腹」であることをあげ、「側室制こそ男系血統の『皇統』の継続を可能にしてきたわけである」の指摘が本書の要諦とも言える。

 側室制度は現在廃止されたが、天皇制には男尊女卑、即位儀式がいみじくも露呈した憲法違反問題が多い。近年の日本会議の跳梁とも絡むだろう。
 目からウロコの知識、トリビアネタの豊富さに時を忘れる面白さだが、面白がってばかりはいられない。私たち主権者が真剣に考えなければならない喫緊の問題がはらまれているのだから。参照された彪大な資料の一覧表が欲しかった。
 (渡邊澄子 わたなべすみこ 文芸評論家・大東文化大学名誉教授)

『週刊新社会』(2019年6月4日)


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