2019/6/21

横浜市の教科書。問題の多い教科書への記述批判と、民主的な採択手続に戻すこと  ]Vこども危機
  《教科書ネット21ニュースから》
 ◆ 試してみませんか?横浜のこんな活動
   教育委員会へ!市民へ!声を届けましょう

佐藤満喜子(さとうまきこ 横浜教科書採択連絡会事務局)

 ◆ 異常な横浜市の教科書採択

 横浜市の市立中学校では、2009年採択で自由社が、2011年、2015年採択では育鵬社の歴史・公民教科書が採択され、現在使用中です。
 民主的といわれた横浜市の教科書採択は今や跡形もなく、これらの教科書の採択のために、法の趣旨に逆行する採択地区の1地区化、教員の声排除、審議会答申の無視、評価基準の改変、無責任な無記名投票採決が行われるようになりました。

 さらに現林市長が自民党と採択介入の選挙協定を結んでいる疑いが報道されるなど、子ども不在の教科書行政が続いています。
 これらの改変は、教科書を、「適正な手続きを尊重する教育委員会」ではなく、「教育委員の個人的判断」で選ぶようにするためでした。


 かつて安倍首相は、育鵬社採択のためには教育委員を入れ替えればいいのだと、横浜市を例に挙げて主張しています。

 しかし自由社を採択した後、この教科書には多数の歴史事実の誤りがあることが判明しました。「教育委員」だけでは、まともな教科書は選べないという実例です。
 しかも何度申し入れても、横浜市教委はなんの訂正措置も行わず、2万7千人の生徒を放置したまま卒業させました。市民が声を上げなければ子どもたちは守れないと痛感させられました。
 問題の多い教科書への記述批判と、民主的な採択手続に戻すこと、横浜の運動にはこの両方が必要です。そんな横浜での取り組みを、いくつか紹介します。

 ◆ 公正な採択手続きを求めて

 私たち市民は、2009年に横浜教科書採択連絡会を立ち上げ、採択問題に取り組んできました。とはいえ、横浜市は小学校340校・小学生17万9千人、中学校146校・中学生7万6千人を擁する全国一の大規模採択地区、運動は容易ではありません。
 そこで、市内18行政区ごとに会を作り、市の連絡会と連携しつつ、区独自の学習会や駅前街頭宣伝などを行っています。

 プロジェクトチームと教委への申し入れ横浜市全体で活動する内容については、事務局会議で協議して決めています。しかし、市教委への申し入れについては、関連法規や横浜市独自の手続きの詳細を頭に入れ、準備する必要があります。
 そこで数人でプロジェクトチームを作り、作業しています。採択手続きの情報を集め、他市との比較などをする他、市教委の担当課に面会を申し入れて疑問点の説明を求めます。ただし、面会では、市民の切実な思いを伝えることはあっても、糾弾や交渉の場ではないことを心がけています。

 こうして問題点やその根拠が具体的になれば、項目を立てて「要望書」にまとめ、事務局会議で検討し、教育長あてに提出します。同時に、要望書に提出のお知らせ文を添えて、市政記者クラブに資料配付しておきます。記事になることもあります。
 さらに市民向けのPR用リーフレット作成もチームでプランを作ります。育鵬社と他社の違いなどが主な内容なので、こちらは元教員のメンバー中心に構成。短い文で説明するのに苦労しています。

 ◆ PRも兼ねる署名活動

 採択替えの年度ごとには、前年度末から署名活動を行っています。今回は、昨年末から「学校現場・教員の意見が反映されるように手立てをとるよう求めます」という項目に絞って署名に取り組みました。
 横浜では、学校ごとの教員意見が、全く提出できません。このため、昨年の展示会に参加した教員数は、中学校教員4700人中たった12人。教員の教科書への関心低下は目を覆うばかりです。
 署名は数を集める効果だけではなく、市民へのPRの機会としても有効です。ネット署名、メール配信の他、他団体への依頼、会報に同封してもらうなどの協力も得ています。

 ◆ チラシ撒きや要望書提出も

 年明けの入学説明会入学式当日には、保護者にお祝いの言葉を添えたチラシを撒いています。初めて知る人向けの採択説明やソフトな問題提起の内容にしています。
 いっぽう、採択後や採択に関する問題が生じた時は、市役所や区役所前で出勤する市職員向けの少し硬い内容のチラシも撒きます。教委で起きている問題を、全庁的に知らせることも大切だと考えているからです。

 そして4月中旬までには、採択手続きや傍聴環境の改善を求める「要望書」を提出します。5月の教育委員会で決定する「採択方針」に間にあわせるためです。
 6月には、見本本の記述内容を紹介・比較する解説集会を行い、展示会参加教育委員会傍聴を呼びかけます。
 採択決定直後には、「声明」を出して報道配付する活動も行います。

 ◆ 教育委員会傍聴を続けよう

 教育長や教育委員が、子どもたちや学校現場を大切にしているか、保守的な考えの持ち主かどうかなどは、教育委員会会議を何度も傍聴しているとわかるようになります。
 横浜では、教育委員会を傍聴する会が別にあり、会議の様子を随時ニュースで発信しています。
 教科書以外の問題や、業務報告、教育委員の発言などから、教科書に関連することも出てきます。教育委員会会議の傍聴は地元の教育行政を知る最も手近な機会です。
 いくつか取り組みを紹介しました。他の地区でも共通する部分があると思います。今年の小学校採択では、できることから試してみませんか?


 ★ 「教科書採択の要請」などぞ使える国会答弁など

 @調査員が評定をつけることは差し支えない

 「(教科書の)この調査研究に当たりましては、…必要な専門性を有し、児童生徒に対して直接指導を行う教員が果たす役割は決して小さくないものというふうに認識いたしております」。
 「(教育委員会が)その権限の行使に当たって調査研究を綿密に行っていただくわけでございますけれども、その調査研究の結果として何らかの評定を付し、それも参考に教科書の採択を行うことが不適切だというものではないというふうに考えております」。
 (小松、文科省初等中等教育局長答弁、2014年4月22日衆議院文部科学委員会)

 A教員の意見を尊重させることが不可欠

 ILO・ユネスコの「教員の地位に関する勧告」(教科書の選択、教育方法の採用などについて不可欠な役割を与えられるべきである)。
 「検定済教科書のうち、どの教科書を採択するかについては、学校現場をよく知る教師や教師集団である学校の意見を十分尊重することは何ら問題がないはずであり、子どもの学習権をより充足するためには、かかる学校現場の意見を十分に尊重する必要性は大きい。したがって、教科書の採択においては,子どもの学習権保障の観点から、学校現場の意見を十分に尊重して、教科書採択の判断がなされなければならない
 (「教科書検定基準及び教科用図書検定審査要項の改定並びに教科書採択に対する意見書」(2014年12月19日 日本弁護士連合会)

 B教科書の採択権限は、首長にない

 「教科書採択の方針は、予算や条例提案等の首長の権限にかかわらない事項でございますので、総合教育会議における調整の対象ではございません。したがいまして。仮に大綱に教科書採択の方針が記載されたといたしましても、教育委員会は尊重する義務を負う、生ずるということではないものと解されます」
 (小松、文科省初等中等教育局長答弁、2014年4月22日衆議院文部科学委員会)。

『子どもと教科書全国ネット21ニュース 125号』(2019年4月)



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