2019/7/5

祝典や儀式を機に、天皇と国旗国歌の“神格化”を図る教育行政  ]Vこども危機
  《教科書ネット21ニュースから》
 ◆ 明仁天皇の生前退位(譲位)でまた繰り返された教育への政治的介入
高嶋伸欣(たかしまのぶよし 子どもと教科書全国ネット21代表委員)

 ◆ 明仁天皇嫌いの安倍首相による生前退位の政治的利用とマスコミの不甲斐なさ
 安倍政権による教育への政治的介入は、様々な場を通じて繰り返され、止むことがない。今回の天皇の生前退位(譲位)でも同様だった。
 もともと安倍晋三首相は皇室の問題に関心は薄い。他方で明仁天皇の生前退位(譲位)には、首相が改憲を最大目標とし、アジア諸国への加害責任にも言及しない政治姿勢に対する明仁天皇の抵抗の意図が込められていると、早くから指摘されていた。
 発端となった2016年8月8日の天皇の「お言葉」表明にしても、それ以前から水面下で伝えられていた天皇の意向の表明を首相官邸が黙殺し続けていたのだった。


 そこで天皇の側がNHKに情報をリークし、表明を実現させた経緯がある。
 やむを得ず、官邸は「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」を設置した。
 同会議では、高齢化による体力低下が主要な理由であるとされたのに対し、国内外の戦災・災害被災地への慰霊旅行などは本来の「公務」ではないとの見解が示された。
 加えて「大切なのは宮中祭祀。陛下は宮中の奥深くにいるべき存在であって、心得違いをされている」旨の発言まで飛び出したという。
 これに対し、右翼の一部などから「不敬である」との厳しい批判と抗議の声が挙がった。
 加えて世論調査で「お言葉」に同調する人々の割合が高いことが判明。

 すると、安倍政権は「生前退位」を政権浮揚策として活用する方針に転換した。
 まず改憲問題に影響させない方法を模索し、特別立法で切り抜けることにした。それが2017年6月に成立した「天皇の退位等に関する皇室典範特例法(退位特例法)」だった。
 その後、退位及び新天皇即位の日の決定などに関心が集中したが、それらの決定は安倍首相の総裁3選戦略の下で先送りを繰り返された。それでもようやく2019年4月30日退位、5月1日新天皇即位、同4月1日に新元号発表が決まる。
 するとマスコミは退位(譲位〉と新元号制定等の翼賛報道に雪崩を打って駆け込んでいった。
 そうした状況に合せて、政府と与党は4月末からの連休を最大10日間となるように、法規を改正。それにまたマスコミと観光・旅行業界などが便乗して「退位(譲位)大歓迎」ムードを醸成した。

 長期の安倍政権下で牙を失っている大半のマスコミが“大政翼賛”ぶりを全面的に展開したのは新元号発表をめぐる報道でだった。
 密室で進められた元号選考過程で、マスコミはリーク手法でいいように翻弄され、醜態を晒し続けた。新元号公表後もそれは続いた。
 NHKTVの天気予報では「今夜が平成最後の満月です」と言ってのけた。そこからは「森羅万象すべて担当しております」と公言する安倍政権への忖度の程が読み取れた。

 ◆ 学習指導要領を歪曲して「天皇への敬愛の念」強調教育を求める初中局長「通知」

 そうした“「退位(譲位)」祭り”ムードを煽り、安倍首相の顔がマスコミに露出する機会を激増させることで、支持率の上乗せが進んだ。
 さらに右派支持層へのすり寄りとして画策されたのが、新天皇即位の日5月1日に全国の官公署や学校に「国旗」掲揚を求める閣議決定(4月2日)だった。
 『御即位当日における祝意奉表について』と題したそれは、
「御即位当日(5月1日)、祝意を表するため、各省庁においては、下記の措置をとるものとする。

1 国旗を掲揚すること。
2 地方公共団体に対しても、国旗を掲揚するよう協力を要望すること。
3 地方公共団体以外の公署、学校、会社、その他一般に置いても、国旗を掲揚するよう協力方を要望すること。」
 という内容だった。

 この閣議決定が文部科学大臣にも通知され、文部科学事務次官による『御即位当日における祝意奉表について(通知)』が全国の都道府県と指定都市の教育委員会教育長などに、同日送られた。
 その文面は「この(閣議決定の)趣旨に沿って宜しくお取り計らい願います」というにすぎなかった。

 ところが、その後4月22日に出された初等中等教育局長通知『天皇陛下のこ退位及び皇太子殿下の御即位に際しての学校における児童生徒への指導について』では、閣議決定された国旗掲揚の件だけではなくなっていた。
 現行学習指導要領に「天皇についての理解と敬愛の念を深めるようにすること」(小学校社会・6年)とあることを根拠に、「国民こぞって祝意を表する意義について、児童生徒に理解させることが適当と思われますので、あわせて宜しくご配慮願います」とあった。

 しかし、中学校学習指導要領(社会科・公民的分野)では「日本国および日本国民統合の象徴としての天皇の地位と天皇の国事に関する地位について理解させる」とある。
 さらに同「解説」では、この部分について「国民主権と関連させながら」「理解させることを意味している」と明記されている。
 先の初中局長通知では「国民主権」の観点が削除されている。
 文科省自身が学習指導要領を歪めた指導を教育機関に対して行って恥じていない。

 新元号の制定に付随して、『官報』の号数積算がリセットされた。新元号施行後の官公庁の業務初日の5月7日(月)の『官報』が「第1号」として発行されている。この事実について、初中局長は「国民主権」を中学生にどう説明をするのか。

 ◆ 休日の学校に「国旗」の掲揚を求める無神経。過労死対策より「愛国心」を優先?

 さらに、局長通知以前の「閣議決定の「国旗掲揚の協力要請」にも矛盾点がある。
 5月1日は「国民の祝日」とすることで、10連休を実現させた。しかし、逆に「国民の祝日」に当たる休日に、公務員である学校の教員には出勤の義務はない。休日出勤を業務命令で指示できるのは災害対応や入試業務などに限られている。
 結局は管理職が貧乏くじを引く形になるのが大半だが、無人の学校に掲揚と降納のために連休の途中で出かけさせる意義がどれだけあるのか。その途次で事故やけがを負った時、労災は適用されるのか。官公署にしても同様だろう。これでは「天皇への敬愛の念を深める」のとは逆の効果にしかならないだろう。
 幸いにして、今回の場合は一過性のものであるし、「協力」「要請」でしかないので、かなりの学校現場ではうやむやにし、教育委員会も実施状況について厳密に把握しようとの姿勢は希薄であるように見える。下手に厳しく問いただせば、『官報』の件や天皇制そのものの必要性の議論などを誘発しかねない。
 10月22日に予定されている「即位礼正殿の儀」までは波風を立てないように、首をすくめておくということではないだろうか。

 ◆ 「生徒・教員に尻を向けても「国旗」に向けてはいけない!」

 だが、新元号下最初の国賓ともてはやしたトランプ大統領の「おもてなし」も、その後の事件事故や国際情勢の変化で、過去の話題となりつつある。その一方で、「国旗・国歌」の強制を巡る教育現場の緊張関係に大きな変化はない。抵抗する教員の処分で敗訴を続けている都教委は、意固地さの度をますます高めている。
 卒業式と入学式に、教育長の祝辞(挨拶文)代読で派遣される教育委員会(教育庁)職員が持たせれた行動マニュァルが最近明らかにされた。

 『卒業式等における東京都教育委員会挨拶等の所作について』では、舞台中央の演台に立つ前に「数歩国旗に向かって歩き、姿勢を正して国旗に向かって礼(3回目)」とある。
 次いで、挨拶文の代読後は「先ほど、国旗に対して礼をした場所まで歩き、振り返り(振り返るときに国旗に尻を向けないようにご注意ください)。国旗に正対する。姿勢を正して国旗に向かって礼(7回目)」とある。
 「国旗に尻を向けない」で向き直るとは、生徒・教員や来賓に尻を向けることを意味する。2度も「国旗」に礼をすること自体異常だが、都教委はここまで「国旗」の“神格化”を進めている。
 官邸だけでなく文科省と教委の動向にも監視の目を緩めるわけにはいかない。

『子どもと教科書全国ネット21ニュース 126号』(2019年6月)



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