2019/7/7

真相は「『慰安婦』に関する授業は不適切ではなかった」、それなのに戒告処分した大阪府教委  ]Vこども危機
  《教科書ネット21ニュースから》
 ◆ ここまできた!教育への政治介入
   〜日本軍「慰安婦」問題の授業

平井美津子(ひらいみつこ 子どもと教科書大阪ネット21)

 2019年3月27日、私は教育長から1枚の紙きれを手交されました。そこには、「訓告」と書かれていました。私がなぜこのような処分を受けなければならなかったのでしょう。
 2018年10月に共同通信配信の連載「憲法マイストーリー」が地方紙に掲載されました。その記事は社会科の授業で何を大切にしているのかということを「慰安婦」の授業をテーマに語ったものです。

 すると、紙面の写真を貼り付けた「「慰安婦」問題を教えているとは問題だ!」といったツイッターがすかさず出回り、それを見た吉村前大阪市長(現府知事)は


 「慰安婦問題を扱うこの教諭は、先の国会で河野外務大臣が「史実に反する」と答弁した事実は生徒に伝えてるんだろうか。歴史学者の反対の立場を生徒に伝えてるんだろうか。公立公務員の教員の授業だ。新文科大臣はこの現状を知ってくれ」と攻撃を煽るかのようなツイッターをすかさず流しました。

 このツイッターがあっという間に拡散し、間もなく学校や市教委への電話攻勢市議会・府議会での議員による追及が始まりました。

 ◆ 市議会・府議会での追求

 10月の府議会では、原田府議(自民)は「記事で書かれているのが本当ならば、大問題」と質問し、府教育庁は「記事にある授業が事実であるならば不適切」と回答しました。
 また西田府議(維新)が、「こういった授業が他の小中学校でも行われていないか調査すべき」という質問には、府教育庁は「歴史的事象を一面的に捉えるなどの不適切な指導がないか、市町村教育委に調査・把握・指導をしたい」と回答しました。
 私が取材時に「慰安婦」の授業をしていたのではないことは普通に読めば分かるはずですが、そこをあえて捻じ曲げて「「慰安婦」の授業をしているのはけしからん!」と攻撃材料に使ったのが真相です。

 ◆ 不当な政治介入に対し毅然とした態度を取らない府教育庁

 何度も校長に呼び出され、経過を説明したり、過去の「慰安婦」の授業に関して訊問される中で、攻撃してきた人々の術中に教育委員会も管理職もはまってしまったのではないかと感じました。
 本来なら、「この取材時には「慰安婦」の授業はしていません。何ら問題はありません」と突っぱねるべきところを、攻撃する側の理不尽な要求に教育委員会は振り回されていました。

 学校現場における教育課程の編成権を保障し、不当な政治介入に対して毅然とした立場を取らなければならないのに、自らの役割を投げ捨てた大阪府教育庁の行為は、教育行政をつかさどるものとしての役割を放棄したも同然です。
 「慰安婦」問題がどういう問題なのかもわからない管理職は、「慰安婦」という言葉を口にするのも恐れ、「『慰安婦』をもう二度と教えないと言ってほしいんです」と、耳を疑うようなことまで発したのです。

 1月25日に府教委に呼び出されたときも、そのほとんどが、「慰安婦B」授業や拙著『「慰安婦」問題を子どもにどう教えるか』(高文研)の内容の尋問で3時間近くにも及びました。
 私は一貫して「今回の問題の本質と違う質問には答えません」で通しました。
 府教委は共同通信へ今後の記事の扱いなどについて直々に申し入れをしに行きました。これは府教委という公権力による報道への圧力にほかなりません。

 10月から始まった攻撃とそれへの対応で気が付けば3月になっていました。そして3月27日を迎えたのです。
 教育長から手交された文面には、以下のような文がありました。
 (前略)当該記事を見たという複数の者から、同校や吹田市教育委員会に電話やメールなどで、偏った内容の授業をしているとの抗議や問い合わせが多数寄せられた。また、記事掲載の学年が参加する校外学習を妨害する趣旨の匿名の文書が同校に届き、記事掲載との関係も想定される中、学校関係者を困惑させ不安に陥れ、校外学習がいまだ実施できていない状況にある。…記者から提示された記事の確認を十分に行わなかったため、当該記事を読んだ保護者、府民から、あなたが、同校において、生徒の発達段階に即さない授業をしていたかのような誤解を与えかねない状況を呈した。以上のことは、学校教育に携わる公立学校教員として、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行であり、その職の信用を失墜するものである。よって、今後、かかることのないよう厳に訓告する。
 ◆ 真実に基づいた教育をこれからも

 これでは、混乱を起こした原因がすべて私にあるとなっています。府教委も、混乱を起こしたのは「攻撃してきた人たちだ」と言っていたにもかかわらず。
 処分の同日、大阪府教育長が記者会見をし、4枚に及ぶ記者レク資料を配りました。そこには「『慰安婦』に関する授業は不適切ではなかった」と書かれていました。

 新年度、3年から1年に降ろされました。「慰安婦」授業ができない学年に変えたということです。
 寂しい年度初めでしたが、新3年生になった子どもたちと、ともに涙し励まし合いました。

 今回のことで、勝手連のように市民の方々が応援の組織を立ち上げ、何度も府教委と交渉を重ね、700に及ぶ署名を集めてくださいました。
 全教は弁護士も交え、筋道立てた対応をアドバイスしてくれました。そのお陰でなんとかやってこられました。
 「慰安婦」の授業をターゲットにした現場への攻撃や歴史の真実を捻じ曲げようとする動きに対して、それに抗い、真実に基づいた教育をこれからも続けていこうと思います。

 ◎ 共同通信の従軍慰安婦記事の取材「校長に報告せず」
   中学教諭処分 大阪・吹田
(『毎日新聞』)


 共同通信社が配信した従軍慰安婦関連の記事を巡り、取材依頼や記事掲載を校長に報告しなかったため保護者らが誤解しかねない状況を招いたとして、大阪府吹田市教育委員会は27日、同市立中学校の女性教諭(58)を訓告処分にした。指導不足を理由に男性校長(60)もより重い訓戒処分とした。
 府教育委員会が同日発表した。記事は教諭が以前・授業で慰安婦を取り上げたことを紹介。連載「憲法マイストーリー」の1回分として昨年、加盟新聞社に配信された。

 定例記者会見で処分を発表した府教委の酒井隆行教育長によると、教諭は共同通信記者に取材を受けたが校長に報告せず、記事内容の確認も十分でなかった。このため生徒の発達段階に即さない授業が行われているのではないかとの誤解を生んだ。慰安婦に関する授業の内容は「不適切ではなかった」と述べた。
 記事について府教委は「事実誤認はない」としている。共同通信編集局は「取材手法や記事の内容に問題はないと考えています。取材に協力していただいた方と関係者が取材に関係して処分を受けたのは遺憾です」としている。

 ◎ 教育の自由度さらに狭く
   山田健太・専修大学教授(言論法)の話

 今回の処分は、慰安婦問題を否定するような、ネット上の書き込みや一部府議の議会質問などに影響されたとみられる。
 本来であれば、外部の圧力から学校での「学問の自由」を守るべき教育委員会が真逆の不当な処分をすることは、その存在意義を自ら否定しているに他ならない。
 また教師より校長の処分を重くしたことは、取材依頼の届け出徹底をはじめ、教育現場の管理をより強めることになるだろう。教師が委縮し、教育の自由度がさらに狭まることに、強い危機感を抱いている。
 (「共同通信」)

『子どもと教科書全国ネット21ニュース 126号』(2019年6月)



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