2019/9/15

教員の多忙化解消には、更新講習・中堅研修のどちらかを廃止する抜本的改革が必要だ  ]Vこども危機
 ◆ 教員の多忙化解消進まず
   〜免許更新講習と法定研修のダブリ
(週刊新社会)
教育ジャーナリスト 永野厚男

 ◆ 初めは特定教員排除目的
 第一次安倍政権が2007年6月、教育職員免許法を改定し、09年4月から導入した教員免許更新制は、小中高校等の教員免許状の有効期間を10年間とし、”非正規”化。
 有効期限までの2年間に免許状更新講習(大学等が開設。以下、更新講習)を受講、試験に合格し履修証明書を免許管理者(都道府県教育委員会)に提出しないと、失職するシステムだ(校長ら管理職や主幹教諭、教委の指導主事らは免除)。

 第一次安倍政権は当初、”君が代”反対や平和教育実践等の教員を”不適格教員”として排除する謀みがあったが、こちらは”指導力不足”と決め付ける別の枠組みを作った。


 更新講習は、免許状更新講習規則第4条で30時間以上と規定し、毎年約9万人(今年度はグループ分けの関係で16万人)もの該当(免許状取得・更新から10年目・20年目……)の教員が受講している。
 公務でなく職務免除扱いなので、講習受講料と会場との往復交通費は教員の自己負担。夏季休業等に、主に5日間を費やす。

 文部科学省が8月1日に開催した教師力向上フォーラムで、総合教育政策局教育人材政策課の柳澤好治課長は、「中堅教員等資質向上研修(第二次安倍政権が16年11月、教育公務員特例法を再改定し導入。以下、中堅研修)を受講したら、30時間の更新講習のうち18時間分は受けたこととする教委も、出てきている」と発言した。
 だが、同省のHPに出ている「中堅教諭等資質向上研修実施状況(平成四年度)調査結果について」によれば、@中堅研修を受ければその一部を更新講習として認定する教委は11・3%、A更新講習を受ければ中堅研修の一部を受けたこととする教委は21・7%、に留まる。
 教育行政の都合で教員を多忙化させる屋上屋を、解消していないのが実態だ。

 ◆ 免許更新代替の重い研修

 「屋上屋」と書いたのはそもそも、02年2月21日の中央教育審議会答申「今後の教員免許制度のあり方について」が、
  @「我が国全体の資格制度や公務員制度との比較において、教員にのみ更新時に適格性を判断」する「更新制を導入することは、なお慎重にならざるを得ない」、
  A「主要先進諸国の中で教員資格、免許の更新制が導入されているのは、アメリカ合衆国のみである」
 等の理由で、教員免許更新制を見送る代わりに、中堅研修の“前身”に当たる10年経験者研修(以下、10年研)導入を提言した経緯、があるからだ。

 教育公務員特例法改定を受け、02年8月8日、当時の小野元之・文部科学事務次官が発出した10年研の通知は、「教負一人一人の専門性の向上や得意分野を伸ばすなど、教諭等のニーズに応じたものとなるよう、各々の実情に応じて」と、教員の要求が活かされるような書きぶり。
 だが小野通知は、
  @都道府県教委作成の評価基準に基づき、校長は10年研を受ける教員の能力、適性等について評価案と研修計画書案を作成し教委に提出、
  Aこの評価案と研修計画書案について教委は必要な調整を行い、研修受講を決定、
  B校長は対象の教員に対し、研修計画書に基づき10年研を受けるよう職務命令を発する、
  C研修終了時に個々の教員の能力・適性等を再び評価し、その結果を後の研修等に活用すると、
 管理統制かつ強権的だ。

 10年研は日数も、小野通知が「校外20日(夏季体策期間等に教育センター等で)、校内20日」の計40時間も強制。10年研が中堅研修に替わり、日数は例えば東京都の公立学校の場合、校外が14〜22単位(都教委は半日を1単位としているので、日数に換算すると7〜11日間)と少し減った。だが校内は18〜30単位と、むしろ増えている(授業や準備等を合算するので、時間換算は柔軟だが)。
 このように採用10年目で初めて更新講習を受ける教員はダブりで、多忙を極めている。

 ◆ 生徒らに直結しない内容

 更新講習と中堅研修は、内容面でも「国の教育政策、法令改正及び国の審議会の状況等」「学習指導要領の変遷」「服務=上司の命令に従う」など、児童・生徒の教育に直結しない政治的なテーマがあり、重複も少なくなくムダだ(15年ほど前、都教委の10年研・選択研修の中に自衛隊朝霞駐屯地見学があった。中堅研修でも選択研修6単位の中に、自衛隊は入っている)。

 更新講習・中堅研修のどちらかを廃止し(最低限、日数・時間数を大幅に減じ)、「生徒と向き合う時間」や自主的な研修の時間に回す、抜本的改革が必要だ。
 なお、中教審が今年1月25日に出した学校“働き方改革”の答申は、「免許更新制がより教師の資質能力向上に実質的に資するようにすることも含め…改善・見直し」との記述に留まり、パブリックコメントで多かった廃止要求を無視した。

『週刊新社会』(2019年9月10日)


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