2019/10/9

大阪の今春の不起立処分者から  X日の丸・君が代関連ニュース
  《大阪ネットニュースから》
 ◆ 「立たない」ではなく「立てなかった」のです
M高校 S

 今から遡ること30数年前、私はN高校に新任教員として着任し、中国帰国生徒(中国残留孤児の二世・三世)の担当となり、転勤するまでの12年間で多くの帰国生徒と出会いました。
 過去の戦争、日本の戦争責任、戦後処理について、帰国生徒や在日朝鮮人生徒との関わる中で多くを学びました。当時、昭和天皇の代替わりがあり、その後徐々に、式に日の丸掲揚が強行されようとしていました。そのとき多くの帰国生徒は不快感を表明しました。
 体を震わせて泣きながら「日の丸を見たらぞっとする」と言った生徒、「日本は中国への侵略を全く反省していない」と怒りをあらわにし学年集会でなぜ日の丸が認められないかをアピールをした生徒。その卒業生のアピールに熱烈な拍手を送った後輩の帰国生徒。
 私は、今でも式が近づくと、そのことを鮮明に思い出します。生徒たちの涙、怒り、震える肩


 ぼんやりしていた自分の高校時代を思い返しながら、彼らをそこまで突き動かすものはいったい何なのか。なんとしても知りたい。私は帰国生徒たちに迫られ、突き動かされたのです。

 天安門の翌年の1990年と1996年の夏に、私は帰国生徒と一緒に彼らの故郷、中国の東北地方に行きました。
 休みをまとめ取りできた頃だったので、90年にはハルビンの東北烈士記念館や盧溝橋の中国人民抗日戦争紀念館、大連の近くにある平頂山惨案紀念館、長春、渚陽にも帰国生徒と一緒に行くことができました。九・一八歴史博物館は、このときはまだ建設途中でした。
 96年には完成したばかりの731部隊罪証陳列館を一緒に見学しました。そのとき、多くの現地の児童・生徒が歴史学習に来ていました。
 三光作戦のこと、万人坑のこと、中国人を生き埋めにした土饅頭の上に日の丸と日章旗を立て「天皇陛下万歳」と日本の軍隊が叫んだこと、日本では匪賊と呼ばれた人たちが中国では英雄として都市や通りの名前になっていること。
 生徒の故郷の町の名も抗日烈士から採られていました。
 日本と中国の、歴史との向き合い方の温度差。帰国生徒が日の丸・君が代に涙と怒りで抗議するのは当然だと思いました。

 帰国生徒が日本に来た時、待っていたのは自分たちに対する無知・無理解でした。
 肉親捜しの時に一過性の興味を示すだけで、自分の親や祖父母が経験した壮絶な過去のことを日本人の多くは知らない。知ろうともしない。
 「自分は何人か」というアイデンティティの悩みを抱え続け、気がつくと日本語のできない親と会話が成立しなくなり家族はばらばらに。
 日本になじめず精神を病んだり、近所からの偏見や差別に苦しみ孤立する親たち。
 そして、自分たちの入学や卒業を祝う場で待ち受けているのは、あろうことか、棄民とされた自分たち家族の苦難の元凶である、あの戦争の象徴ともいえる日の丸・君が代なのです。

 十年ほど前、帰国生徒との同窓会の時に、帰国生徒の一人はニュースを見たからか私に、「不起立なんかしてたらやばいよ、クビになるよ」と心配してくれました。
 私にすると、当時すでに右傾化の風は吹き始めていましたから、私のことよりも、彼らを取り巻く状況のほうがもつと深刻だと思っていました。そして、それは残念ながら現実のものとなっています。
 今、在日の親は、怖くて子どもの卒業式にチマチョゴリを着られないそうです。カミングアウトすると、身の危険を感じるくらい恐ろしい社会になっているのです。なんて恥ずかしい。なんて申し訳ない。不寛容で狭量な日本社会。

 40秒不起立するくらいでは本当は足りないくらいです。
 君が代が流れたとき、これまで出会った帰国生徒や朝鮮人生徒の涙と怒りにゆがんだ顔が、私の脳裏を走馬灯のようによぎります。しかも、彼らはもう親になり、子どもの入学式卒業式で日の丸君が代を強制されているのです。
 私の心の中に浮かび上がる言葉はただ一言、「ごめんなさい」です。教育の現場でこんな仕打ちをしてごめんなさい、みんなのための式でこんな仕打ちをしてごめんなさい、という言葉しか、私の中にはありませんでした。
 生徒から話を聞いた者の責任。彼らの苦しみを知った者の責任。私にとつては「立たない」というより「立てない」という表現がふさわしい。

 9年ぶりに卒業式会場に入り不起立だった私の今の気持ちは、不思議と清々しい。戒告処分となりましたが、もちろん納得はしていません。
 8月に不服申し立てをしました。いよいよこれから長い闘いが始まります。ご支援宜しくお願いします。

『「日の丸・君が代」強制反対、不起立処分を撤回させる 大阪ネットワークニュース』
(18号 2019年9月22日)


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