2019/10/31

変形労働時間制より、1日4コマの「義務標準法」に基づく教職員定数を確保せよ  ]Vこども危機
  《教科書ネット21ニュースから》
 ◆ 職員の長時間過密労働の解消は抜本的な定数改善でこそ
   〜OECDの教員勤務実態調査から〜

糀谷陽子(こうじやようこ 子どもと教科書全国ネット21常任運営委員、元中学校教員)

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 経済協力開発機構(OECD)が5年おきに行っている国際教員指導環境調査(TALIS2018)の結果が公表されました。日本は、これまでの中学校に加えて小学校の調査にも参加しました。
 小学校は15か国、中学校は48か国が参加し、それぞれ200校の校長と各校20人ずつの教員に回答を求めました。日本でも98%以上から回答を得たとのことです。
 OECDといえぱ、15歳の子どもを対象にした読解力、数学的リテラシーなどに関する学習到達度調査(PISA)がよくとりあげられますが、TALIS学校や教職員の側からそれぞれの国の教育の状況を調査・分析したものです。


 ◆ 「仕事時間」は参加国で最長

 特徴の第一は、日本の教員の1週間の「仕事時間」の合計が、表のように参加国平均を大きく上回り、最長となっていることです。
 中でも多いのは中学校の課外活動(スポーッ・文化の部活動)、小中学校の事務業務、授業計画準備などで、これも参加国最長です。

 その一方、生徒や保護者と関わる時間は参加国平均より短く、また、「職能開発」(いわゆる研修)の時間は、参加国最短です。
 研修参加の障壁は何か、7項目を示して尋ねると、「家庭でやらなくてはならないことがあるため、時間が割けない」「日程が自分のスケジュールに合わない」などの回答がきわめて多くなっています。

 小学校の3分の1、中学校の6割の教員が月80時間の「過労死ライン」を超えて時間外勤務を行い、それほど働いているにもかかわらず多くの教員が「授業準備の時間が足りない」「もっと子どもとふれあう時間がほしい」と感じている日本の実態が、国際的にもあきらかにされたのだと思います。

 ◆ 「授業改善やICT活用の取組が十分でない」

 TALISの調査は、PISAテストとの関連でしょうか、「仕事時間」だけでなく、「主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善や探究的な学習に関わる指導実践」を頻繁に行っているかどうかも調査しています。
 その結果を見ると、前回(2013年)よりは増えているものの、参加国平均と比べるといずれも低い数字となっています。
 ICTを活用した授業に関する質問についても同様の結果です。この結果についてTALISの報告書は、「児童生徒の自己肯定感や学習意欲を高めることに対して高い自己効力感を持つ日本の小中学校教員の割合は低い」とまとめています。

 ◆ 業務の仕分けで解決できるのか?

 このような実態に対し、文科省が示している解決策の一つは、教員の業務の「仕分け」をして、「必ずしも教員が行わなくてもよい業務」を事務職員や専門スタッフにまわしたり、サポートスタッフを学校に配置してそちらにまかせるようにする、というものです。
 中央教育審議会の議論では、プリントの印刷や宿題の丸つけ・休み時間の子どもの見守りなどが例示されていました。
 しかし、それで本当に解決できるのでしょうか。

 今回の調査結果に関する報道で、興味深い記事がありました。
 アンドレアス・シュライヒャーOECD教育・スキル局長が日本のメディア向けにビデオ会談方式で開いた会見の内容です。
 氏は、日本の教員が事務作業や部活動指導など「教室以外の場所」での仕事が多いことについて、教員にとって負担が大きいとしながらも、授業以外で子どもたちと「深く交流する機会をたくさん持てる」「強い個人的な関係・絆を構築できる」ことは日本の教育の「強み」だと述べたそうです。
 そして「授業で教えることしかしない」英国の教員は「子どもを全人的に見る機会がないから」「アンハッピー」だとして、日本の学校の長所を保ちつつ働き方を見直すよう提言したという記事(「内外教育」7月9日)です。

 ◆ 「1日4コマ」の原則を貫いて

 小中学校の教職員定数の算定根拠となる「義務標準法」が1958年に制定されたとき、教員1人が受け持つ授業の平均は1日4コマでした。
 1日8時間の勤務時間の半分で授業をし、残りの時間でその準備や他の校務を行う一そうした働き方を標準として、必要な教職員の数を算定していったそうです。

 しかし今、1日5〜6コマの授業を受けもつことは珍しくありません。学習指導要領が改訂されて学校全体の授業時間数が増えたり、学校週5日制になって週当たりの勤務時間が短くなったりしても、それに合わせて教職員定数を増やし、「1日4コマ」が守られるように、文科省がしてこなかったからです。
 教職員定数を抜本的に改善して、教員一人あたりの持ち授業時間数の上限を設定することは、長時間過密労働を解消するための、最も確かで現実的な方法だと思います。

 ◆ 「1年単位の変形労働時間制」の導入

 教員定数増などの要求には完全に背を向けた文科省がすすめようとしている、もう一つの解決策が、「1年単位の変形労働時間制」の導入です。
 これは、学期中の所定の勤務時間を長くして、その分、長期休業中に休日を増やすというものです。
 しかし、これは学期中の時間外勤務を覆い隠すだけのもので、長時間過密労働はもっと深刻なものになってしまいます

 所定の退勤時刻が今より遅くなることによって、授業準備など個々人で行う業務の開始時刻が今よりもっと遅くなってしまうからです。保育や介護などを抱えながら勤務している教職員にとっては、働き続けることができるかどうかの深刻な問題となっています。

 文科省は、「学期中は大変でも、長期休業中に休みがたくさん取れる」などと宣伝していますが、これもまやかしです。
 長期休業期間中にもたくさんの業務があるというだけでなく、この間にこそ自主的・自発的な研修が保障されなければならないからです。これも勤務の一つです。

 教職員の勤務時間の問題は、労働条件であると同時に、どの子にもゆきとどいた教育を保障するための教育条件でもあります。教職員が笑顔でゆとりをもって子どもたちの前に立てるよう、「教育に人と予算を!」の声を大きく広げていきたいと思います。

『子どもと教科書全国ネット21ニュース 127号』(2019年8月)


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