2019/11/11

安上がりの教育政策のつけが回っている(ブラック化、教員不足、未配置の連鎖・悪循環)  ]Vこども危機
  《教科書ネット21ニュースから》
 ◆ 「教員未配置」のサプライズ
   子どもの教育を受ける権利の侵害はなぜ・どうする

徳田暁夫(とくだあきお 全教千葉教職員組合特別執行委員)

 ◆ 子どもの学習権があぶない
 「産休や病休の代替の先生が来ない」「担任がいない」「○○の授業がずっと自習」
 本来配置されるべき教員が配置されず、こんな異常事態が全国的に日常化しています。
 これを「未配置」といい、子どもの学習権を侵害しかねない重大な問題になっています。

 朝日新聞の調査では、4月の始業日時点での全国の未配置は、表面に出ているだけで、1231件(東京都、神奈川県は不明)にも上ったことが報道されました。
 千葉県内の公立学校では毎月未配置があり、100件を超えることも珍しくありません。昨年度には県教委調査で最大174件にまで達しました。


 1つの学校に2件、3件の代替が来ていない状態が生まれています。
 4月以来3月までずっと代替の教師が赴任していないケースが4件もありました。
 休む先生の代替の教員が配置されない事態が生じても、仕方がないではすまされません。子どもたちの時間は止まってくれないのです。

 学校は何とかしようとします。
 教務主任や教頭などの担任をもっていない教師が日替わり、時間替りに、入れ代わり立ち代わりで担任を受け持つこともします。これでは子どもが落ち着かなくなるのも当然です。
 また、その教科の免許を持っていない教師が教えている。子どもが自習をし続けている。などという事態も生まれます。
 これではわかる授業をすることは困難です。

 そして、千葉県では、「未配置を少なくするために」本来児童生徒が38人以上いれば、学級を分割して少人数で行き届いた教育を進めることになっていたのに、学級を分割せず大人数のままにする学校が少なくありません。
 それどころか、2016年にはある学校の小学3年生で3クラスのうち2人が休んで、代替が来ず、3クラスを2クラスに、1クラスを50人にしました。
 また今年はある小学校の6年生で、代替が配置されないために、当初60人を1つの教室にして授業をしていました。
 こんなことが全国規模で起こっています
 ひとりひとりの子どもに心を寄せ、ひとりひとりに合わせた授業や学級実践がしたいと思っても大変困難になっています。こんな状況が続けば子どもの本来的な学習権は守れません。

 ◆ 「妊娠してしまいました。申し訳ありません」

 こんな言葉が学校で聞かれます。
 自分が妊娠して産休に入っても、代替の先生が来るとは限りません。そうなったら、教師は子どもたちをどうするのかと悩みます。ただでさえ忙しい周りの先生方に・自分のやっていた仕事をさせることになる。そのなかでの偽りのない本音の言葉なのです。
 中には産休になっても隠れて内緒で、学校で働いている人さえいるようです。

 また、千葉県では休暇の代替の臨時採用教職員には代替が付かず、臨時採用の教師が妊娠すると各学校の校長はその教師に必ず退職を迫ります
 命の大事さを教える学校で、命を生みだそうとする女性へ「自己都合」退職を迫るのです。
 子どもの担任がいなくなっては困るので校長も致し方ないのかもしれません。
 自分の子ども、新たな命の誕生を喜べなくて、喜んでやれなくて、子どもを大事にする学校になるでしょうか。

 今、中学校の教師は平均で月80時間の過労死ライン突破の長時闇残業をしているのが60%です。100時間オーバーの教師も少なくありません。
 そこに、未配置が起きると何とかして穴を埋めようとします。今まで自分がしていた仕事の上に休む先生の仕事も「こなす」ことになります。
 ただでさえ何とかしないと大変だと「働き方改革」が言われるくらいなのです。その上未配置と穴埋めが追い打ちをかければ、心身の健康を壊し、療養休暇に入る教職員がドミノ倒しのように増えていきます。
 未配置の連鎖、悪循環が広がっていきます。

 ◆ 臨時の使いまわしが未配置につながる

 言わずもがなですが、教師の休暇等の代替に配置される教師はほとんどが臨時採用になります。一定の期間だけの採用になるからです。
 しかし、臨時採用の教師たちの仕事は代替だけではありません。「定数内講師」という教師がいます。本来正規雇用の教師を配置しなければならない所に臨時採用の教師を配置するものです。
 この人たちの割合は非常に多く、千葉県では、毎年4月の始業式時点で1500人程度が配置されます。

 これは、小泉自公政権時代の2004年に「総額裁量制」を導入して政策的に大幅に増やしたのです。
 それまで、教職員の給与は国が1/2をもち、人数分を配当していましたが、この制度で、国負担分を1/3にする。
 ただし、今まで正規を原則にした人数分を国が負担したが、以降は人数を限定しないで総額で支出する。正規採用のかわりに、臨時を多く雇っても良いことにしました。
 そこで、各自治体は、安上がりで、文句も言わず、よく働く臨時採用の教師を多量に採用するようになったのです。

 ちなみに、臨時採用の教師は正規と全く同じ仕事をしていても、「教師」としての採用ではないことを理由にして、70数%程度の賃金で、雇用保障はなく、他の雇用条件も劣悪です。
 それでも、教育への情熱を燃やし続けて講師を続けていてくれる人の良心だけで今の教育が成立していると言っても過言ではありません。

 代替と定数内の教師などの臨時教職員は、増加の一途をたどり、自治体のよって多少異なりますが、15〜16%程度とみられます。6〜7人に一人が臨時採用になっています。
 しかし、学校は「ブラック」職場の代表のようになっています。当然のことですが教員志望者そのものも減少傾向にあります。
 そのような中で不安定な雇用で労働条件もお世辞にも良いとは言えない臨時採用の教師に希望者が簡単に集まるわけがありません。
 そこで、代替をしてくれる臨時採用の教師が大幅に不足してくるのです。

 つまり、学校のブラック職場化と、安上がりで、文句も言わず、よく働く臨時採用の教師を大量に便利に採用し、使い回してきたことのつけが回っているのです。
 各自治体はHPやSNSを活用して募集をしたり、電光掲示板やポスターを大規模に張り出したり、転職説明会を開いたりして教師の確保に必死ですが、安上がりの教育政策をそのままにしては改善が難しいのが現実です。

 ◆ 未配置は解消されるか

 教師という仕事は魅力ある仕事だと思います。子どもの成長のため考え、計画し、工夫して子どもと一緒に努力し、その成長を我が事のように喜べる、こんな楽しい仕事はなかなかないと思います。
 「ブラックだ」「コスパ低い」などが改善されれば、もっと教師志望者は増えるでしょう。

 先日国連の温暖化対策サミットで、グレタ・トゥンベリさんが、若い世代が生きる未来よりお金や経済成長が優先されていることを痛烈に批判して大きな反響を呼びました。
 日本は、彼女が批判した経済成長最優先の政策で動いているように感じます。
 急にOECD平均並み(GDP比4.2%)とは言いませんが、GDP比2.9%の教育予算を子どもの未来のためにほんの少しだけ組み替えてほしいと思います。
 教師と父母国民の労働条件は、子どもの教育条件に直結します。

 大人が健康で、子どもたちにゆとりをもって接することができたら、子どもの日々の確かな成長が保障できるのは間違えのないことだと思います。
 教師の定数を増やすこと、臨時採用の教師の大量採用をやめ、正規の教師をきちんと採用して、学校のブラック職場化をストップするための教育予算を増やすことができればこの未配置問題は解消にむけて大きく前進します。
 今転換の時ではないでしようか。

『子どもと教科書全国ネット21ニュース 128号』(2019年10月)


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