2019/12/1

徳仁天皇の「代替わり儀式」をめぐって  ]平和
 ◆ 象徴天皇とは何か
   〜人を序列づけするシステムに反対だ
(週刊新社会)
女性史研究家 鈴木裕子

 去る5月1日、徳仁皇太子が新しく天皇に即位した。明仁前天皇は上皇となり、近現代皇室における最初の生前退位をし、皇太子に皇位を継承させたものである。
 明仁天皇の狙いはひとえに皇位の安定的継承にあった
 この10月から11月にかけて、即位に伴うさまざまな式典、行事、加えて皇室神事・宮中祭祀が挙行された。政界・マスコミ挙げての天皇・天皇制賛美が、侵略戦争や植民地支配の歴史を歪めたうえで行われ、天皇・天皇制への敬愛や崇拝が声高になされた。
 わたくしたちは否が応でもそれに直面することになった。天皇・天皇制への寿ぎを半ば強制されたことに暗澹たる気持ちに囚われる。

 ◆ 皇室神事や宮中祭祀、古式な継承儀式を取り入れた「即位の礼」は国家行事なのか


 10月22日、即位礼正殿の儀が皇居・宮殿で挙行、外国賓客をも交えての祝宴「饗宴の儀」が22,25,29,31日にわたり開催。
 即位礼正殿の儀では新天皇が高御座、新皇后が御帳台に立ち、幕が侍従と女官の手で開かれ、新天皇・新皇后が姿を現した。これが「宸儀初見」と称するもので、より神々らしさを演出する。こうした登場は、平安時代初期に編纂された日本最古の儀式書「貞観儀式」に沿ったもの。
 新天皇が即位を宣言すると、「天皇陛下万歳」の安倍晋三首相の掛け声に合わせ、参列者が万歳三唱。万歳を唱える首相が「天孫降臨」の神話に基づく「高御座」に立つ新天皇を仰ぎみる形で発唱、どうみても主権在民ではない

 天皇に従う侍従が「三種の神器」と呼ばれる剣璽(けんじ)を高御座に運んだ。これらの儀式に対し、「国民主権」や「政教分離」の立場からそぐわないとする見解が憲法学者や歴史家・宗教学者たちの多くから示されている。
 政府はこれらの意見に対し、戦前に神聖とされてきた神器や高御座を現行上の解釈で宗教色のない「由緒物」「調度品」と強引に性格づけ、即位礼を国事行為とするが、剣璽はいまも目にすることが許されない神秘性を帯びさせていること一つとっても、政府見解には無理がある(『東京新聞』19年10月21日付「代替わり考 即位礼 下」)。

 ◆ 民主主義の進歩を妨げる天皇制

 敗戦後の象徴天皇の存在は日本国憲法で「国民の総意に基づく」が根拠。
 戦前の天皇制は、天照大神の天壌無窮の神勅「豊葦原の千五百秋の瑞穂の国は是れ吾が子孫の王たるべき地也。宜しく璽皇孫(いましすめみま)就きて治せ」の、国体観念や神聖天皇制とは根本において異なる
 新天皇は即位の宣言で「国民に寄り添いながら、憲法にのっとり、日本国及び日本国民統合の象徴としてのつとめを果たすことを誓います」とあるように、父上皇の時と同様な言葉を開陳した。
 天皇の地位は「国民の総意」に基づくとしながら、いまだに「国民」の意思は問われたことがない。
 「正殿の儀」以後の即位関運行事としては、一連の宮中祭祀や皇室神道が行われる。即位の礼関係の儀式は大部分が国庫(税金)から支出され、その額は約166億円に及ぷ見込み。
 「正殿の儀」当日には東京は警官2万6000人が厳重な警備態勢を敷いた。この費用も少なくはないであろう。新自由主義政策のもとで貧困に喘ぐ人びとや高齢者、障がい者らにとってはとてつもない金額である。これで「国民に寄り添」うといえるのだろうか。


 ◆ 天皇制に反対する市民も存在する

 ことは金銭の問題に限らない。神奈川大学元学長の中島三千男氏は、即位礼正殿の儀は、「日本は神国」、「天皇が統治」するという国家神道の教義「天皇制正統神話」に基づくと、批判の意を表している。日本人は天皇教ともいうべき宗教に呪縛され続けている。

 敗戦後、昭和天皇と側近の功妙な戦略で生き残った天皇制は皇統保持に全力を注いだ。
 政治・軍事両面にわたる最高責任者であった昭和天皇が米占領軍に免責されたことで、日本は対米一辺倒、沖縄を米国に売り渡した
 責任を取るべき者が取らないという「無責任の体系」が日本社会を覆つた。

 1990年代初めから争点化された「慰安婦」問題をはじめとする植民地支配、戦争責任問題に対し、日本政府は実に無責任な姿勢を取り続けている。
 しかし、市民のなかには被害国市民と連帯し、戦後賠償運動に取り組み、天皇制の悪を暴き、廃絶を主張する人びとも存在する

 「正殿の儀」当日も、厳戒下の銀座で「終わりにしよう天皇制!”代替わり”反対ネットワーク」がデモを敢行、約500人が参加。
 デモに先立ち、集会が開かれ、若い女性から天皇制の下で女性は「お世継ぎ」を産めと、「産む機械」に位置づけられた、女性蔑視のシステムと主張。
 鵜飼哲一橋大特任教授は、「天皇制は民主主義の進歩を妨げる。必要ないという声がもっと出てこな」くては、と述べた(『東京新聞』10月23日付「こちら特報部」参照)。
 わたくしはもとより天皇制に反対である。
 天皇制というシステムが人を序列づけ、階級差別、貧富格差、性差別、民族差別等の隠蔽化に資するからである。

『週刊新社会』(2019年11月26日)


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