2019/12/5

桂太郎を死に追いやった言論のもつ魔力  ]平和
 ◆ 言論の力 (東京新聞【本音のコラム】)
鎌田 慧(かまたさとし・ルポライター)

 緊張感はない。無視、拒絶、改竄(かいざん)、揚げ句の果てのシュレッダー。言論の府は冒涜(ぼうとく)されている
 「そのうち不思議な感じが私の心にわいてきた。ここでハッと桂公を指せば、公はきっと引くり返って、椅子からころげ落ちるというような感じが、ふとおこった。演壇から大臣席にいる桂公とのあいだは数歩にすぎなかった。そこで大声疾呼しながら、全身の力をこめて二三歩進み出で、指頭をもって桂公を突くがごとく、迫っていった。その瞬間、公は真青になった」
 尾崎行雄『咢堂(がくどう)回顧録』の一節である。

 指弾されたのは桂太郎首相
 「公の顔色はにわかに蒼白(そうはく)にかわった。しかし、予感に反して、桂公は椅子からころげ落ちなかったので、私は失望した」


 これを引用して花田清輝は「そこには、言論のもつ魔力にたいする確信のようなものがうかがわれる。その結果、内閣は倒れ、桂太郎は、間もなく死んだ」(言論の力」)と書く。
 桂は病床で「尾崎がおれを殺した」と繰り返した。

 まともな説明ができない。それでも国会内で安定多数。牛の涎(よだれ)のような、歯止めなき宰相在籍日数
 野党に内閣打倒、退路を断つ気迫があるのか。
 花田は書いている。
 「私には、今日、言論の自由を説く連中が、尾崎行雄ほどにも、言論の無限の力を信じていないような気がしてならない」

『東京新聞』(2019年1月1日【本音のコラム】)


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