2020/1/25

「理想の家族」を子どもたちに押し付ける家庭科の学習指導要領、教科書  ]Vこども危機
 《教科書ネット21ニュースから》
 ◆ 小学校家庭科教科書はどうなっているか
家庭科教育研究者連盟 海野りつ子(うんのりつこ)

 ◆ 新学習指導要領と解説にここまで忠実なのか!という驚き
   そして背景を考える

 2015年、「義務教育教科書の不合格による再申請は翌年度に回す」と教科書検定制度が改悪され、一度で合格しなければ翌年の4年に一度の採択に間に合わず採算が取れないという状況が作られました。
 大きく変わった新学習指導要領の内容をどれだけ反映しているかが各教育委員会での採択の基準になるという予測もあったことでしょう。
 教科書の記述は今まで以上に学習指導要領と学習指導要領解説(以下「解説」)に合わせて「自主規制」せざるをえず、萎縮させられたのです。

 ◆ 「生活の営みに係る見方・考え方」の4視点を強調


 学習指導要領目標にある「生活の営みに係る見方・考え方」4つの視点(協力・協働、健康・快適・安全、生活文化の継承・創造、持続可能な社会の構築)が、教科書の冒頭で示されます。
 生活の中の問題に対し意見を表明したり、共同で行動し現状を変えたりしていく力、主権者を育てようとする視点はありません
 「現状の中でよりよい生活を営むために工夫する」ことが強調されます。
 しかし逆に、主権者としての生活者を育てる立場から4つの視点に係わる実践を行うことも考えられるのではないでしょうか。

 ◆ 学習の方法がPDCAサイクルとして提示されている

 「解説」は、学習過程を踏まえた改善として「生活の中から問題を見いだし、課題を設定し、解決方法を検討し、計画・実践、評価・改善するという一連の学習過程を重視」するとしています。
 この過程は、経営管理の枠組みPDCAサイクル《Plan(目標)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)》と同じです。

 T社 @課題発見(見つめよう)
 A課題解決・実践活動(計画しよう、実践しよう)
 B評価・改善(生活に生かそう、新しい課題を見つけよう)

 K社 @見つける・気づく
 Aわかる・できる(考える・計画する、実践する、ふり返る)
 B生かす・深める

 特に課題解決の手順例として、T社5ページ5例、K社4ページ3例の特設ページが新設されています。
 どの例も「○○のために(家族のため、学校のため、お世話になった方のため)○○しよう」が課題となっており、道徳の内容項目「感謝」「家族愛・家庭生活の充実」「よりよい学校生活・集団生活の充実」などに対応し、自助・共助を引き受ける「主権者」を育てようとしています。

 ◆ 「団らんの計画」が子どもたちを追い詰める

 解説は、社会の変化への対応として「家族・家庭生活に関する内容の充実」を上げ、「少子高齢社会の進展に対応して、家族や地域の人々とよりよく関わる力を育成する」としています。
 新学習指導要領「Bア(ア)家族の触れ合いや団らん」を扱うページ数が増え(T社は単元を新設)、(4)アの「課題と計画、実践、評価」が組み込まれています。
 家族でゆっくりと穏やかな時間を持ちたい、しかしそれができない現実が存在します。

 親の低賃金・長時間労働が家族と過ごす時間や環境を奪っている。
 習い事や塾通いで子どもも忙しい生活を送らざるを得ない。
 虐待、貧困など命に関わる状態に置かれている子どもたちもいる。

 現実の生活を見つめることを素通りし、子どもたちには「家族で団らんするのは当たり前団らんは楽しいはず」を前提として知恵を絞らせ、団らんの計画・実行・振り返りをさせようとする。
 この矛盾と「理想の家族」を子どもたちに押し付ける学習指導要領、教科書とはいったい何なのでしよう。

 国連子どもの権利委員会「日本政府第4・5回統合報告書に関する最終所見」は、パラグラフ27(a)で、「仕事と家庭生活との適切なバランスを促進することを含めて家庭を支援しかつ、強化すること、十分な社会的支援、精神的支援と指導を、必要とする家庭に提供すること、特に、子どもの遺棄と施設入所を防止すること」と勧告しています。

 また、教科書には三世代同居家族のイラストや写真が多く挿入されていますが、平成30年国民生活基礎調査児童世帯構成によれば、核家族世帯は83%(夫婦と未婚の子のみの世帯76%、一人親と未婚の子のみの世帯7%)、3世代同居世帯は14%、その他の世帯は3%です。

 ◆ 生活を科学的に見つめ行動する視点は?
   =「季節の変化に合わせた住まい方」から考える


 K社「すずしく快適に過ごす住まい方」の単元は、
 1、暑い日はどのように過ごしているだろう
 2、すずしく快適な住まい方を知ろう
  @日射(熱)をさえぎろう
  A空気の流れをつくろう
  Bすずしさを感じさせる音を聞こう
 3、エコ生活ですずしさアップを工夫しよう、
 と章立てされています。

 世界の気候変動はますます大きくなり、日本でも猛暑が年ごとに勢いを増しています。(大雨や巨大化した台風、地震などの災害の閥題もあります。)
 上記快適な住まい方の@ABや、エコ生活「空調機器など、エネルギーの無駄のない使い方を考え、機器類に頼りすぎないように心がけ、すずしさを感じられるように工夫しましょう」等で対処できるレベルを超えています。
 「健康・快適・安全」「持続可能な社会」を掲げるのであれば、未来を生きる子どもたちが地球温暖化やエネルギー問題について、生活者の視点で考えることを保障する必要があります。
国連子どもの権利委員会「日本政府第4・5回統合報告書に関する最終所見」パラグラフ37
 気候変動の子どもの権利への影響(b)気候変動と自然災害を学校の教育課程と教師の研修プログラムに組み込むことにより、このトピックに対する子どもの意識を向上させ、子どもの心構えを高めること。
 ◆ 生活文化の継承・創造=伝統って何?と考えてみよう

 左がT社、右がK社です。(略)
 どこまでを自信を持って「伝統」と言うのでしょうか。またその意図は何でしょう。
 家庭科のみならず他教科の学習指導要領にも「我が国の○○」があふれています。「日本、すごい!」が、子どもたちの広い視野形成と自由な発想力を閉ざさないように教育に携わっていきたいものです。

『子どもと教科書全国ネット21NEWS 129号』(2019年12月)


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