2020/1/25

教科書から個性が失われ、教育内容の統制が末端まで広がっている  ]Vこども危機
  《教科書ネット21ニュースから》
 ◆ 新学習指導要領で小学校社会科教科書はどう変わったか
教科書シンポジウム世話人 本多道彦(ほんだみちひこ)

 新学習指導要領のもとで来年度から使われる新しい小学校教科書が、採択を終えて決まりました。そのなかでも問題が山積みの社会科教科書は、どう変わったのでしょうか。
 10月27日、第49回教科書を考えるシンポジウムで、現場からの報告を受け検討されました。

 ◆ グローバリズムとナショナリズムが共存した内容

 都内公立小学校の高野毅さんから次のような報告がありました。
 第1に、学力観をめぐって、
 @道徳の教科化・英語の教科化・プログラミング教育の必修化等の教科の増設及び教科内容の過密化による子どもたちの負担増。


 A子どもたちや学校の現実と結びついていない、上から下ろされてきた3つの資質・能力観(「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」)の押しつけによる学習の疎外化
 Bアクティブ・ラーニングの視点から「主体的・対話的で深い学び」、「各教科の特質に応じた物事をとらえる視点や見方・考え方を働かせる」としたことによる授業方法の統制化などの問題点が指摘されました。

 第2に、ナショナリズムの強調
 つまり、愛国心・郷土愛の強調しかり、領土問題の強調しかり、自衛隊の活躍の記述しかりという問題点が明らかにされました。
 第1の一見高邁な学習の理想をかかげながら、その実、科学的な認識や認識能力を身につけさせるのではなく、国を愛する国家有為の人材を育てることが強調されています。
 学習指導要領解説には、「有為」つまり「役に立つと言う」という言葉が入っていますが、かつては、「国家有為」が四字熟語として使われてきました。
 このように、学習指導要領は、グローバリズムとナショナリズムが共存したものであるという指摘がありました。

 第3に、教育統制の問題。
 教科書は、「学習指導要領」のみならず、文科省の官僚の著作に過ぎない「学習指導要領解説」の記述に沿ったものにしなければならないとされました。
 小学校社会科では、3社が教科書を出版していますが、その内容はほとんど「解説」に沿ったものであり、変わり映えがしません。
 教科書から個性が失われ、教育内容の統制が末端まで広がっています。

 教職員は上意下達の体制の中で、自由に意見を言うことが抑制され、自主的な教育実践がしにくくなっていてスタンダードによる授業方法の締め付けも強いなど、教育現場の統制が強まっている状況が明らかにされました。

 以下、「社会的な見方・考え方」の不可解さ、教科書統制の強まりと出版社の減少、明治以降の歴史美化、自主編成へ向けてA〜C案など、全部で30ページ余の資料をもとに報告が行われました。


 ◆ ジェンダー・労働をどう位置づけるか

 参加者からは、
 「教科書での提示順が歴史と政治との前後関係で逆転している、歴史があって結果が生まれた」
 「子どもたちは、難しい→わからない→やる気になれない→諦めるの循環に陥らせられている」
 「ジェンダーの視点が不足している。歴史の中にどう入れるのかが問われる」
 「労働を社会科でどう位置付けるかに留意する必要がある」
 「防災のカリキュレートにも注意が必要」など、
 教科書内容について意見が出されました。

 また、「疑問を持たずただやる気だけの教員づくりが進行している」「教員の同僚性が今こそ大切だが、暇がないことが最大の障害」など、教員の世界の息苦しさも語られました。

『子どもと教科書全国ネット21NEWS 129号』(2019年12月)


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