2020/2/17

第2回の「大学入試のあり方に関する検討会議」の様子  ]Vこども危機
 ◆ 大学入試改革失敗への反省は進んでいるか?
   検討会議で何が議論されたのか
(ハーバー・ビジネス・オンライン)
<取材・文/清史弘>

 2020年2月7日に第2回の「大学入試のあり方に関する検討会議」が開かれました。今回の議事は、以下の通りでした。
1.令和3年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テストの報告
2.中央教育審議会(第124回)における意見の報告
3.過去の検討経緯の整理
4.委員からの意見発表
5.その他
 今回は、これまで配られたものよりもかなり厚い資料が配られました。この資料は、萩生田大臣の指示で用意するように指示されたもののようで、この資料の準備のために第1回の会議から1か月空いたのかもしれません。
 配布資料は文科省のホームページでも公開されるでしょうが、文科省でないと集められないような貴重な資料もあります


 このように、大臣が一声かければ本来有能であるはずの役人は適切に動くので、今後も大臣のリーダーシップが期待されます。

 今回の中心的な議題は、「3.過去の検討経緯の整理」でしたが、特に、英語の民間試験の導入の見送りと数学、国語の記述式の見直しが中心でした。


 ◆ 英語の民間試験導入に関する反省

 文科省はこの件についての責任者ですが、資料を用いた説明によると導入についてはかなり苦労していたようです。ここでは、これまでの文科省の行動を許す、許さないという議論ではなく、まず客観的な事実を説明しましょう。
 例えば、「受験に係る地域的事情への対応」に関しては、早くから問題点を認識しており、平成26年(2014年)12月22日の中央教育審議会答申において入学希望者の受検場所を考慮することが取り上げられ、その後、平成28年(2016年)9月の検討・準備グループ第4回でも再び同様の議論がされています。その後、追加措置的に(この問題がまずいと思っているからこそ)数回対応したものの対応しきれずに延期となりました。

 なぜ、そうなったかと言えば、それは文科省の民間業者に対する遠慮があったようです。すなわち、「課題解決に向けて努力はしたが、この枠組み(民間業者への委託)の中では解決できなかった」ということで、民間業者に働きかけたものの思うように動かず、結果どうにもならなくなり、民間試験は延期となったとのことです。
 なお、この件は、萩生田大臣の指導の下で文科省に半強制的に出させたため出てきたもので、大臣が何も言わなければ、文科省は永久に黙っていただろうというのが私の感想です。
 これを含めた具体的なやりとりは次の通りです。ただし、ある程度要約してあります。

 ○ 益戸委員(UiPath株式会社):
 唯一の民間企業の委員として意見を述べる。課題・問題点を洗い出し、多角的な検討が必要である。これまでは結論が先に決まっており、2020年という目標に縛られ過ぎた。とりまとめではやれることとすぐできないことを見極め、将来へ課題を残すことも大切である。

 ○ 末冨委員(日本大学):
 リスク・技術的制約を踏まえた再検討が必要である。学習指導要領と民間試験は対応しているのか疑問が残る。民間企業への委託は妥当だったのか?2016年3月の高大接続システム改革会議の最終報告では、民間試験の利用は決定ではなかったが、その後の文科省の決定では積極的利用に変わっていた。会議がない間の判断はどうなっていたのか?

 ● 塩崎課長(文科省):
 学習指導要領と民間試験の整合性については、目的や試験問題などを見て専門家が判断した。また、会議がない間も連絡協議会などが開かれて議論は進められていた。ただ、会議の詳細が必ずしも確実に引き継がれなかったかもしれない。

 ○ 渡部委員(上智大学):
 区別して考えた方がよいことがある。4技能の評価と民間試験はイコールではない。CEFRの対応表には目的が異なるテストが並んでいる。また、過去の成果を見る到達度テストと将来の能力を見る熟達度テストは分けて考えるべきである。それから、海外の事例を検証した痕跡がない。

 ● 塩崎課長:
 海外の事例については検討した。また、4技能評価は実施手段を検討して、入試センターでも各大学での実施も難しいということになり、実績のある民間試験を利用することになった。それから、到達度テストと熟達度テストについては、新テストとして2種類のテストを検討した。(「高校生のための学びの基礎診断」のことを指していると思われる)

 ○ 小林委員(日本私立大学協会):
 学習指導要領との整合性の指摘は過去にもあった。結論付けが強引だったのではないか?

 ● 塩崎課長:
 宿題とさせていただく。

 ○ 末冨委員:
 会議が中心であり、一方で、個人や団体から寄せられた意見はどのように扱われたのか?いろいろな人を招いて意見を聞くべきである。

 ○ 芝井委員(日本私立大学連盟):
 私大は多様な入口を持っているので、共通テストがすべての受験生を縛っていると考えないでほしい。英語は4技能でなくても、3技能でもかなり判断できる。共通テストに過大な課題を押し付けたことが原因であると考える。


 ◆ 数学・国語の記述式の失敗の経緯はこうだ


 文科省は、配布された資料によると少なくとも平成26年(2014年)2月19日の第12回高大接続特別部会ですでに指摘され、その後も何度となく議論が繰り返されました。
 そして、最終的に昨年12月17日に萩生田大臣が記述式の見直しを発表する前日の12月16日に大学入試センターから「採点ミスをゼロにすることは極めて困難」という報告を受け、数学・国語の記述式の見直しを大臣が決断したとのことです。


 ◆ 委員から意見発表について

 これまでの経緯の説明が終わった段階で、時間は16時20分になっていましたので、定刻に終わる文科省での会議はあと40分しか残されていませんでした。ここで、委員からの意見が発表されました。座長から「それぞれ10分くらいで」と言われましたが、15分ずつの発表となりました。
 なお、この委員からの発表は毎回2名ずつ文科省から指名しているようで、発表した委員の中には「もう少しあとの会議で言いたかった」と言っている方もいました。
 このように会議の進め方は文科省が資料を読み上げて説明したり、一方的に委員が発言して意見を述べたりするために時間が使われ、議論や質疑応答の時間が少ないのが現状です。発表要旨は次の通りです。

 ○ 川嶋太津夫委員(大阪大学)(この方は座長代理です)
 AO入試などが広がり、学生は多様化してきている。学力の二極化が進み、大学1年生が高校4年生であるかのように補完教育が必要になっている現状もある。その中で、高校教育改革と大学教育改革とともに多面的・総合的に評価する大学入試改革を行う高大接続が必要となってきた。そのような前提のもとで、本会議の論点を以下の様に整理する。
   ・本会議のアジェンダを委員で共有することが必要
   ・大学入試のどう位置づけるか
   ・学習成果を誰が評価するか
   ・個別試験との役割分担
   ・大学入試における公平性をどうするか

 ○ 牧田和樹委員((一社)全国高等学校PTA連合会)
 団体としての意見ではなく、地方の経済人としてあくまで個人の考えであることを前置きして以下のような意見を述べた。現在の高校生はみんなが行くから高校に行っているという現状があり、半数は学習指導要領をマスターしていない。日本では、多くの洋書が翻訳されていたり、高機能な翻訳機があったり、本当に英語が必要なのか疑問である
 英語4技能の評価は「読む」だけでも十分だと考える。その他の3技能も、記述式の出題も大学側が必要であると考えるならば、共通テストではなく各大学が実施すればよい。これまで通りのセンター試験を実施すべきである
 みんなが一様に小中高大と進む単線型の教育ではなく、高校から選択肢を広げていく複線型の教育にしていくべきだ。

 発表のあと、萩生田大臣が退席し、他の委員からは以下のような意見が述べられた。

 ○ 河野(国立大学協会)委員:(岡委員の代理出席)
 現在いる長崎県は離島が多く、移動も大変なので、地域格差・経済格差を考慮してほしい

 ○ 清水(筑波大学)委員:
 前提が何であるか、検討すべきことはなにか射程の明確化は必要である。時系列ではないまとめ方もした方がよいのではないか?

 ○ 小林委員:
 現在の高校生は多様性があり、共通テストでまとめてやることに無理がある。多様性には対応できない。

 ○ 末冨委員:
 意思決定の権限が錯綜している。権限体系の整理が必要である。


 ◆ 委員の質

 最後に、私はこの検討会議で、これまでの入試改革の中心にいた2名がどのような役割を今後果たしていくのか、なぜ、この2名が今回の検討会議にも名を連ねたのかにも注目しています。
 その一人の荒瀬委員は今回は欠席でした。もう一人の吉田委員は出席していましたが、主観的かもしれませんが、どこか集中力がないようにも見え、会議の途中に電話でもかかってきたのか少しの間でしたが2回退室しました。
 国の将来を決める大切な会議ですので、この会議には最優先で臨んでほしいと感じました。

 第3回の検討会議は2月13日に開催されます。

 ※ 清史弘(せいふみひろ)Twitter ID:@f_sei。
 数学教育研究所代表取締役・認定NPO法人数理の翼顧問・予備校講師・作曲家。小学校、中学校、高校、大学、塾、予備校で教壇に立った経験をもつ数学教育の研究者。著書は30冊以上に及ぶ受験参考書と数学小説「数学の幸せ物語(前編・後編)」(現代数学社) 、数学雑誌「数学の翼」(数学教育研究所) 等。 

『ハーバー・ビジネス・オンライン』(2020.02.12)
https://hbol.jp/212899?cx_clicks_art_mdl=6_title


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