2020/3/17

まやかしの「聖火リレー」から学校教育を守るとりくみに向けて  ]Vこども危機
  《教科書ネット21ニュースから》
 ◆ 次々と明らかになる東京五輪の不都合な事実
高嶋伸欣(たかしまのぶよし・子どもと教科書全国ネット21代表委員)

 2020年元旦から新聞もTVも「オリンピック・イヤー」一色、お祭りムード作りにまっしぐらでした。けれどもその雲行きが怪しくなってきました。まずは、東京開催の謳い文句「世界一コンパクトな五輪」の破綻です。国の負担は1500億円のはずでした。それが、会計検査院の調査で2018年度までの6年間ですでに約1兆6000億円に達しいると指摘されたのです。
 政府は慌てて「2020年度までの8年間で約2777億円でしかない」と発表(1月24日)しました。これだけでも当初見積もりの1500億円超えの公約違反です。


 しかも、会計検査院は、首相官邸がまとめている『五輪取り組み状況報告書』に挙げた各省庁の施策の個別経費を合算したのです。気象庁による本来の気象衛星打ち上げ予算409億円も、大会中の天気「予測精度の向上及び充実」という具合です。
 安倍首相の下、政府が総力を挙げて東京五輪の「成功」を目指していると見せかけていた小細工の一つが、露見したといえます。

 五輪は世界的なスポーツの祭典で、スポーツの基本理念は「フェアプレイの精神」です。
 一方で「虎の威を借るキツネ」の手法で首相官邸や大臣たちの横車も押し通していくのが、中央省庁(霞が関)の「文化」だと、国会で繰り返し公言したのが加戸守行・元文部省官房長です。加計学園問題の集中審議に自民党推薦で呼ばれた時です。

 2020東京五輪は、「儲かるイベント」として利権が仕組まれ、新聞やTVもそこに自ら参加しています。会計検査院への政府の反論の記事が小さいのもそのことと関連しているように思えます。
 それにこの件では、政治的思惑を付度する官僚的組織によって、「フェアプレイ」とは水と油の関係の「ヤクザ」同然の論理が、五輪準備の場で優越していることが、いよいよ隠せなくなったのです。

 ボランティアについても問題点が次々と浮上しています。

 五輪とパラリンピックで必要な人数は8万人です。大会組織委員会は若者をターゲットに全国の大学や高校に協力を呼び掛けています。東京では都教委経由で割り当て人数が示され、事実上の強制になっているとの指摘がされています。
 酷暑が予想される7・8月の五輪期間に「一日8時間、10日以上の活動・滞在費は自己負担」での無償活動ですから、応募に慎重になったのも当然でした。

 しかも昨10月から、時給1600円で期間1〜8か月、ほぼ同じ内容の仕事を含む2000人分の求人活動の存在が指摘されました(『東京新聞』1月24日朝刊)。
 無償のボランティアの多くは語学などで力量のある人たちで、通常は有償の対象者です。有償募集の情報を伏せて応募させたことになり、「わなにはまった感じ」との声もでています。組織委員会自身が作った五輪の美名を巧みに「利用」しているように見えます。

 また、組織委員会が用意した割安な「学校連携観戦チケット」による児童生徒の観戦プランでも、不参加の自治体や学校が相次いでいます。
 映像ではなく、実際の場面を体感をもって経験するのは貴重な機会です。けれども組織委員会は、会場への移動は公共交通機関の利用に限定しているので、「低学年を乗り換えで引率するのは無理」「距離がありすぎる」などというのが、学校現場の声です。
 それに熱中症の懸念があります。また高校の場合は就活や進学活動中で、生徒が不参加だからとか。
 これらの事情は、観戦プランの実態が判明すると共に各紙で報道され、特別支援学校に限ってスクールバスの利用が認められるなどの見直しがされました。
 それでも不参加の動きが止まらないと、五輪賛美が際立つ『産経新聞』でさえ詳しく伝えています(1月24日)。

 ◆ まやかしの「聖火リレー」を突く!

 そしてもう一つ教育に関わっている話題が「聖火リレー」です。
 3月12日にギリシヤのオリンピァ市で華々しく採火行事が行われ、日本から小中高校生140人が聖火引継ぎ行事のパフオーマンスに参加して、マスコミ向けの演出がされます。
 聖火の日本到着地は3月20日の宮城県東松島市の航空自衛隊松島基地です。25日まで「復興の火」として被災3県に展示されます。
 「復興」を強調するのであれば、なぜあの日津波に呑まれる映像が世界中に伝えられた仙台空港でないのか不思議です。松島基地では「ブルーインパルス」が空に五輪マークを描く猛練習の最中と報道されています。

 「聖火リレー」のスタートは3月26日、福島県、Jヴィレッジからです。第1走者は同所を合宿で利用したことのある「なでしこジャパン」のメンバーが、「復興五輪」の意味付けで指名されました。
 ここから開会式の7月24日までの121日間、全国47都道府県を一筆書きの1コースで、約1万人がリレーします。

 ただしリレーとは名ばかりです。実際は2〜3q程の区間を一人200m約2分ずつ走ったら、「はいご苦労様」と火をランタンに移して次の区間まで自動車(スポンサーのトヨタ車)で運び、そこでまた200mずつのランを繰り返すのです。
 しかも「車両移動中の聖火の公開は予定しておりません」と組織委員会のHPにはあります。
 HPでは一日当たりのランナーは80〜90人の予定としています。

 47都道府県では東京都は14日間、福島・神奈川・千葉・埼玉は3日間ですが、その他はすべて2日間ですから、県境から県境ヘリレーで繋ぐところは皆無です。
 しかも12月17日に公表された各県のランニング区間は1日当たり6〜11区間です。沿道に人を集めやすいインスタ映えの区間だけお祭り騒ぎの「リレー」を装い、あとは車でスイーと通り抜けで、「全国一巡」です。

 そこには、野を越え山を越えて繋ぐ苦難の「聖火リレー」を通じ、種も仕掛けもない真剣勝負のスポーツの祭典・五輪の精神と共有を図る、という理念は見当たりません
 あるのはお祭り気分ではしゃぎたて、スポンサー企業の出番をそれとなく仕組むという巧妙さです。

 『毎日新聞』は12月18日朝刊の広告なしの全面2頁で、全国の「リレー」区間(発着点)一覧を掲載しています。それを精査すると、トヨタの営業所などが発着点に多数登場しています。
 そのトヨタなど「聖火リレー・公式スポンサー(パートナー)」は、ランナー選考枠を与えられています。企業広告を通じて募集し、独自に指名するのです。協賛金を通じた一種の利権のように思えます。
 「利益が得られるイベント」化した五輪の変質が、ここまで及んでいるのです。

 それにもう一つ、「臭いものにフタをする」役割も演じています。
 Jヴィレッジからのルートでは避難指示の解除が決まったばかりの双葉町が追加されましたが、除染土の堆積所など何も視野に人らないコースが設定されていると、『朝日新聞』が指摘しています(1月24日夕刊)。
 安倍首相が、招致演説で「福島原発事故については完全なコントロール下にあります」と、大ぼらを吹いたことが思い起こされます。
 「なでしこジャパン」をはじめランナーに指名されたメダリストやレガシーの人々は、目くらましと「人寄せパンダ」の役を体よく演じさせられるのだと、気付いているのでしょうか。

 ◆ 東京・八王子の取リ組みをモデルとして

 加えて気がかりなのが、この「エセ聖火リレー」の沿道に地元の児童生徒が動員されるのではないかということです。
 その際、「がんばれ日本!」とばかり、かれらに「日の丸」の小旗を振らせることで、五輪を「国威発揚」の場とするなど政治的利用を、安倍政権・萩生田文科行政ではやりかねないのです。

 前例が、萩生田氏の選挙区であったのです。
 2019年4月23日、譲位を報告するために東京・八王子の昭和天皇稜に天皇夫妻が参拝した時です。文科省からの依頼を受けた八王子市教委が地元の小学校長に協力を要請し、市内の沿道に児童を並ばせます。その手には、日本会議系の団体が町内会連合会経由で送りつけた「日の丸」の小旗がありました。
 そのことに気付いた地元の人々が、関係者に尋ね、荻生田議員の関与など不明朗な経過が判明したのです。
 そこで賛否の意見がある天皇制に係る行事に児童を動員すべきではないと、教委と校長たちに申し入れがされます。
 その結果、今度は新天皇夫妻が即位の報告で昭和天皇稜に参拝した12月3日には、沿道に児童生徒が動員されることがなかったのです。
 内心では「おかしい」と思っている校長や指導主事などにとって、主権者の側からの正論は支えになることを示した事例とも考えられます。

 3月26日からの「聖火リレー」は、まやかしのパフオーマンスです。全国の地元のコースは、各県聖火リレー実行委員会のHPや前出の『毎日新聞』「市町村別発着点一覧」記事を見れば明らかです。
 そのことを地域や職場・校内などで確認し、児竜生徒がスポンサー企業の宣伝に載せられたり、政治的思惑に引き込まれたりしないようにする状況を、各地で創り出しましょう。「日の丸」以外の準備など、各地の動きの情報共有化も希望します。

『子どもと教科書全国ネット21NEWS 130号』(2020年2月)


※投稿されたコメントは管理人の承認後反映されます。

コメントを書く

名前
メールアドレス
コメント本文(1000文字まで)
URL




teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ