2020/5/27

子どもより都教委官僚が主人公の児童・生徒等表彰式  Y暴走する都教委
 ◆ 「子どもの善行表彰」のはずが、都教委幹部が主人公?
   〜“君が代”含む官僚に“威厳”持たせる式の改善を、都民ら要望 (マスコミ市民)
永野厚男(教育ジャーナリスト)

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2020年2月8日の児童・生徒等表彰〜都教委HPから

 東京都教育委員会が幼稚園児にまで“君が代”の起立・斉唱を強制した上、幹部職員の入退場を出迎え見送らせる、“子どもより都教委官僚が主人公の児童・生徒等表彰式”を毎年開催している事実が、情報開示請求した都民への5月16日までの取材で明らかになった。

 都教委は1984年度から、「心豊かな児童・生徒等を育成することをねらいとして、善行や優れた活動を行った公立学校(園)に在学する幼児、児童及び生徒を表彰し、広くこれを顕彰」するとの目的で、次の5つの表彰基準で校長に(都立高校・特別支援学校等は直(ちよく)で、小中は区市町村教育委員会教育長を通し)表彰候補者を推薦させている。


 今年1月9日の都教委定例会配付資料によると、
(1)地道な活動を継続的に行い、他の児童・生徒等の範となる者、
(2)当該児童・生徒等が行った活動が契機となり、その効果が波及し、他の児童・生徒等の具体的な行動や取組に良い影響を与えた者、
(3)環境美化活動や福祉活動、伝統・文化の継承活動、奉仕活動、子ども会等、地域における活動を継続的に実践した者、
(4)スポーツ・文化活動において著しい成果を上げた者、
(5)人命救助又はこれに類する行為を行った者。
 そして都教委は、表彰審査会(教育監を審査委員長とし、指導部長、総務部・指導部・地域教育支援部・多摩教育事務所の課長で構成)で推薦内容を協議し、教育長が表彰者を決定する。
 今年2月8日は推薦405件中225件を表彰した。
 内訳は幼稚園が2件、小学校が63件、中学校が60件、高校が68件、中等教育学校が22件、特別支援学校が10件だが、団体を含むので、表彰時の登壇者はもっと多い(因みに2019年2月9日は推薦358件中283件を表彰)。

 都民が開示請求で入手した、19年2月の表彰式の「全体司会」と題する進行表は、13時30分に司会の田村砂弥香(さやか)・指導企画課主任指導主事が開式の辞に続けて、「国歌斉唱。一同、御起立下さい。前奏に引き続き、御斉唱ください」と発声する旨、明記している(「国歌CD※前奏付き、伴奏のみの音源を再生」という文言は太字ゴシックで記述)。


 ◆ 幼児も含め“君が代”全員起立、引率の校長らが指示したか

 このため都民側は、
 @幼稚園児・小学校低学年児童の多くは「一同御起立、前奏、御斉唱」の意味が分からない。12時55分から15分間も設定した「作法指導」と称する“説明”の時間帯等に「一同御起立」等の意味を幼児らに教えたのか、

 A都教委の佐藤聖一(せいいち)・高校教育指導課長は19年3月の卒業式から、都立高校に派遣する都教委幹部職員に「所作」を指示する文書で、「君が代は声高らかに」と指示している(『週刊金曜日』19年4月5日号拙稿参照)が、本件表彰でも“君が代”の声の大きさを指示していたのか、とメール質問。

 19年度から担当の片桐あかね主任指導主事は、「作法指導時を含め、国歌斉唱時の『一同御起立』等の意味を、幼児・低学年児童等に説明したり、国歌の声の大きさを指示したことは、一切ない」と、電話回答した。
 過去の同伴者によると、“君が代”時は幼児を含む全員が起立し、歌う人が多かったという。よって幼児や低学年の児童らには、引率者の校長や教員が指示し、憲法の思想・良心・信教の自由の意義や歌詞の意味(天皇の治世永続)も理解できないまま“君が代”時、起立させてしまった可能性が高い。
 都民側は「では、作法指導では何を指示しているのか」と追及。
 片桐氏は「対象者の人数が多いので円滑に式を進めるように、動線(自席から登壇し賞状を受け取り、自席に戻るまでの動き)を説明している。賞状を受け取る時、左手か右手が先とか(居並ぶ)教育庁幹部に礼をする等の説明はしていない」と回答した。


 ◆ 舞台照明が照らし出す、都教委幹部職員が式の主人公?

 前述の進行表は13時40分から約2時間、「1人20秒×350人」への中井敬三(なかいけいぞう)教育長(当時)による「表彰状授与」と、その後の約20分の受賞者4人の発表の問、スポットライトは児童・生徒らを照らし出した。

 だが進行表は、“君が代”斉唱5分前の13時25分、教育長以下、幹部職員らが控室を出発し、スポットライトを浴び入場してくる旨(「舞台照明ON」と明記)も記述している。

 その幹部職員らは“君が代”斉唱後、田村氏が「多数、臨席しておりますが、時間の関係上、紹介は省」いた課長以下を除き、職・氏名を紹介した部長以上だけで7名もいる。進行表は田村氏が、この部長以上の紹介時、「園児・児童・生徒の皆さんは右後ろの関係者席を向いてください」、紹介後は「それでは、園児・児童・生徒の皆さんは、前を向いてください」と、子どもたちや引率者らの視線まで管理した事実を載せている。

 更に進行表は16時25分、田村氏が閉会の辞を発声直後、「教育庁関係者が退席します」と発声し、児童・生徒らに幹部職員の退室を見送らせる旨、記述している。

 このため都民側は、「式の主人公のはずの子どもたちに、都教委幹部職員の入退場を出迎え見送らせる進行は、江戸時代の参勤交代の大名行列時、庶民に土下座させていたのと、発想としては同じ。21年2月の式からは“君が代”、出迎え・見送りをやめる進行に改善せよ」と要望書を出した。


 ◆ 神社の清掃等も表彰〜違憲・違法の可能性も

 今年2月8日の受賞者の前記表彰基準「(3)環境美化活動や…」の事例を都教委は4例公表した(1月9日の都教委定例会で配付したり、HPに載せたりした、「別紙1 児童・生徒等の善行や優れた活動事例」と題する文書)が、うち2例もが「児童会の呼び掛けで、多くの児童が神社等の清掃を行い、地域の環境美化活動に貢献11小学校」「自治会役員と連携して、地域の神社祭りや自治会行事等に参加し、伝統文化の継承に貢献11中学校〉」(下線は筆者)という、神社のための活動だ。

 戦前・戦中、「法律及び臣民(しんみん)の義務に背かぬ限り」という制約下でしか自由権を保障しなかった大日本帝国憲法下の政府は、皇室の祖先神だとする天照大神(あまてらすおおみかみ)を祀(まつ)る伊勢神宮を、全国の神社の頂点に立つ総本山だとし、「神道は国家の宗祀(そうし)であって、宗教ではない」とする“国家神道”の誤った思想を、“忠君愛国”と共に学校教育を通じて子どもたちに教え込み、成長した子どもたちを戦争に駆り出し、多数の戦死者、戦争被害者を出した。
 そして1945年の敗戦後、GHQの神道指令により「国家神道」の廃止が命じられた。

 こういう歴史への反省・教訓の上に、日本国憲法は、第20条で「信教の自由の保障」や「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」等、政教分離を定め、教育基本法も第15条2項で「国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない」と規定している。

 児童・生徒等表彰は毎年、都庁第1庁舎・大会議場で開催しているので、会場使用料はかからないが、会場の光熱水費や引率の校長・教員らの交通費は税金。土曜出勤の指導主事らを含む職員の休日振り替えも必要になるし、表彰状以外に「楯・リボン・手提げ袋代」で20万1906円もの税金(都民が開示請求で得た、19年2月の表彰式の業者の納品書の金額)が出費されている。
 児童・生徒が自分の意思で特定の宗教を信じたり、宗教的活動をしたりする自由は当然、保障されなければいけない。

 だが、靖国神社への閣僚の参拝や地鎮祭の問題でも、特定の宗教への公金支出は問題になっている。手渡す楯等の単価は2350円(税抜き)で少額かもしれないが、神社への”貢献”を公金で表彰したのは、憲法・教育基本法違反の問題が生じる(とりわけ“神社”、即ち神道という宗教と、学校教育との負の歴史を直視すれば、なおさら)ので、都教委の責任は問われてしかるべきだ。


 ◆ 表彰機会のダブり 〜屋上屋で“表彰疲れ”は?

 前記1月9日の都教委定例会では、増田正弘(まさひろ)指導部長が2月8日の式の表彰内容の事前説明をしたが、前記・神社のための活動の表彰の是非の議論は、一切出なかった。
 だが、5つの表彰基準の「(4)スポーツ・文化活動…」については、北村友人(ゆうと)委員(東京大学大学院准教授)が「順位が出たり、大会があったりするので、やはり(略)学校としても推薦しやすいと思いますし、明らかに数字が圧倒的に多いわけです。けれども、(略)そういったものは既に表彰されているものですので、それをまたもう一度表彰する、それも考え方としてあるかとは思うのですが、なかなか日の光が当たっていないものでも、一生懸命頑張っている子どもたち(略)を応援するような、そういう表彰がより大事ではないか」と、表彰のダブりを暗に批判した。
 増田氏は北村氏らの意見を受け、「表彰基準については見直していく予定」だと答弁したが、表彰のダブりの問題にとどまらず、“君が代”と都教委幹部職員の出迎え・見送りを廃止し、真に児童・生徒等が主人公の表彰式へと、抜本的に改善する必要がある。

 なお表彰のダブり問題については、都民が「スポーツ大会当日の表彰式でまず主催者から、次に各学期の終業式等で校長から、そして都教委から、更に表彰式をやっている区市もあるので、同じ表彰状を計3〜4回となると、屋上屋、“表彰疲れ”になってしまう」と、電話で追加質問。
 だが前出・片桐氏は「都教委の表彰は、校長からの推薦によるものなので、特に回答はできない」と答えるに留まった。


 ◆ 都教委の特異な国家主義の施策等に沿う表彰は、やめよ

 前述通り84年度から開催しているこの表彰式は、表彰件数が延べ4106件に上るが、前出・増田氏は1月9日の都教委定例会で「表彰件数に上限は設けていないので、積極的に表彰していきたいと思っています。因みに、今年の405件という推薦数は、今までで一番多い数になっています」と発言した。
 この35年間の表彰件数のうち、今年2月の推薦分は何と1割弱を占める状態に膨れ上がったのだ。

 筆者は表彰基準(表彰内容・対象)の「見直し」について、前記・神社等、特定の宗教への“貢献”の表彰をやめることに加え、以下1・2で表彰廃止を求めた上で、どうしても表彰式を続けるなら、表彰内容・対象を3・4等に絞るよう提言する(以下、カッコ内の「年月」は表彰式の開催時期)。

 1
 「ラグビーワールドカップの交流活動等に取り組む姿が、他の生徒や市内全体に波及」(20年2月、表彰基準2、中学校)、「高円宮賜牌(たかまどのみやしはい)第52回全国高等学校アーチェリー選手権大会女子個人戦優勝」(同年2月、表彰基準4、高校)、「ボランティア・サミットへの参画を通じ校内の主体的なボランティア意識の向上に貢献」(19年2月、表彰基準2、高校)やこれに類するものは、廃止すべき。
 理由はこれらは、都教委の特異な施策や皇室と関係し、政治的中立性の上で問題があるから。

 即ち“ラグビーW杯”は、都教委が16年4月から全都の公立小中高・特別支援学校等に義務化した年間35時間程度の五輪教育とタイアップする。が、その『「東京都オリンピック・パラリンピック教育」実施方針』(16年1月14日策定)は、「学習指導要領に基づき、我が国の国旗・国歌について、その意義を理解させ、これをを尊重する態度を育てる」と明記した上、「重点的に育成すべき5つの資質」の一つに、「日本人としての自覚と誇りを持てるような教育」を盛り込んでしまっており、国家主義イデオロギーが濃い。
 都教委が19年11月9日、開催した”第2回都立高校生等ボランティア・サミット”に対しても、「都教委が折り紙キットを送り付け、五輪参加国の国旗の千羽鶴を作成するよう強制した事案」を含め、生徒を引率した教員5人もが感想欄に、当該イベント自体への反対意見を明記している(都民が開示請求で入手)。紙幅の関係で3人分だけ引用する。
 ○働き方改革が問われている現在において、真っ先になくすべきイベント。千羽鶴も、現場に多大な負担であった。常軌を逸している。お金と時間の無駄遣いである本イベントは、廃止すべきです。
 ○ボランティア精神をオリンピック(略)に関連付けすぎている気がする。半ば強制的に千羽鶴を作るようお達しを出しておきながら、その使い道すら決まっていないとはやっつけ仕事に過ぎる。生徒の時間は無料ではないのだから、(略)活用方法を先に決めておくものではないか。
 ○(略)依頼された千羽鶴の作成は、会の趣旨に合ったものとは思えません。これだけが残念でした。

 2
 幼稚園は、「昆虫を採集、飼育して調べたことを発表する姿が、他の園児に波及」(20年2月、表彰基準2)、「学級内の自主的な清掃やゴミの分別、友人への優しい声掛け、動物の世話を継続的に行う」(19年2月、表彰基準1)、「積極的な挨拶、友人への気遣いや声掛け、友人のうれしい出来事を共に喜ぶ」(18年2月、表彰基準1)、「元気な挨拶が他の園児に波及し、園と地域とのつながりに貢献」(18年2月、表彰基準2)が表彰対象だ。
 都教委はこれらより詳しい説明を公表していないので、これら文言からしか判断できないが、これら表彰対象は表彰対象以外の幼稚園でもやっている園は多いと思われる。

 幼児はもとより小中高校生等であっても、教員・保護者等の大人やほ同級生などがその言動や成果を認めたり褒めたりして、自尊感情・自己肯定感を高めることは大切だが、上記の内容程度で幼児を遠い都庁まで連れて行き、“君が代”を強制するピリピリした雰囲気の中、読めない漢字混じりの表彰状と楯を、知らないオジサンである教育長が与えたところで、教育的効果があるのかは疑問だ(幼児期の指導は適時性、即ち過去に遡って褒めるより、その都度、認めたり褒めたりする方が遙かに効果的。これは発達心理学のイロハだ)。
 これら幼児は園でも、少なくとも褒められてはいるはずだから、表彰のダブりの問題に留まらず、「3時間もトイレタイムなしの式」に参加させられることで、心身両面の“表彰疲れ”を強いる危険性がある。
 幼稚園は表彰対象外とすべきだし、少なくとも(賞状や楯を郵送するに留め)都庁での式への参加までさせるべきではない。

 3
 「いじめ防止を目的とした校内の『ホワイトリボン運動』が、近隣小学校や地域に波及」(19年2月、表彰基準2、中学校)、「継続的に高齢者宅のゴミ出しを行う活動が地域のボランティア活動の活性化と連携に波及」(19年2月、表彰基準3、小学校)、「島内のアルミ缶を回収した売上金で車椅子を購入、福祉施設に寄贈するなどの地域貢献」(19年2月、表彰基準3、高校)といった、いじめという人権問題や、都教委の施策下にはないボランティア活動に、地道に取り組む児童・生徒を顕彰するのは賛成である。
 だが、遠方の島嶼(とうしょ)部の生徒に、わざわざ都庁での式への参加を求めるのは、いかがなものか。

 4
 毎年の「表彰基準5」に出ている、「人命救助」等の行為を行った児童・生徒を顕彰するのも賛成だが、消防署長や警察署長に表彰されている人が多いので、表彰のダブりの問題が生じる。故に、一律に都庁での式への参加を求めず、賞状や楯を郵送するに留める等、柔軟な対応が必要だ。

『マスコミ市民』2020年6月号


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