2020/7/3

いま、日本の教育は構造的に危機的状況にある「データとファクトに基づく日本の教育状況」  ]Vこども危機
 ◆ 「世界一教育にカネをかけない国」日本が生み出した
   “教師のブラック労働化”
(PHP Online 衆知)
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 日本の教育水準を支える学校に異変が起きており、日本の教育現場は危機的だという。教育評論家の妹尾昌俊氏は教師の労働環境が極めて厳しい環境にある現実を指摘する。
 《いま、日本の教師は危機的状況にある。年間5000人が精神疾患休職となる「死と隣り合わせの現場」で働き、その過酷な労働環境が「学ばない教師」「信頼されない教師」を生み出している。しかもその背景には、日本の教育の「構造的な大問題」がある、と全国の学校現場を渡り歩く教育研究家の妹尾昌俊氏は指摘する。

 そこで今回は、そんな妹尾氏の著書『教師崩壊 先生の数が足りない、質も危ない』から、「データとファクトに基づく日本の教育状況」について一部抜粋・編集の上、紹介する》


 ◆ 日本の教育で「世界トップクラス」なのは?

 最初に、ちょっとしたクイズをしたいと思います。
 日本の教育が世界で1番(トップ)なものがあります。それはなんでしょうか?

 答えは数学と科学の「学力」です。

 図はOECD(経済協力開発機構)のPISA(生徒の学習到達度調査)で、各国の15歳の「学力」を測った結果を示したものです(日本では高校1年生の6〜8月)。
 日本は数学と科学で、OECD37か国中、それぞれ1位、2位です。
 ここ10〜15年の推移を見ても、数学と科学についてはトップクラスを維持しています。直近では79の国・地域がPISAに参加しましたが、そのなかで比べても、日本は数学6位、科学は5位と上位です。

 その一方、読解力(リーディング・リテラシー)は、直近の2018年はOECD中11位、79の参加国・地域中だと15位と、数学と科学に比べてやや苦戦しています。このことはニュースでも大きく取り上げられました。

 「学力」の高さについては、もちろん家庭や社会の影響もあります。日本では教育熱心な家庭が多いこと(学習塾の影響など)も一つの要因になっているだろうと思います。

 とはいえ、数学と科学が世界トップクラスである背景には、小中学校(あるいは保育園・幼稚園も含めて)の頑張りもかなり影響していると推測できます。

 ◆ ニッポンは「教師の残業大国」

 しかし、日本の教育には世界トップの反対、世界ワーストの部分もあります。

 まず、政府が教育にかける予算は、ワーストクラスです。

 OECDの2016年の調査によると、初等教育(小学校)から高等教育(大学等)の公的支出がGDPに占める割合は、日本は2.9%となっており、これは35か国中最下位です。なお、OECD加盟国の平均は4.0%です。
 このうち、小学校〜高校(初等教育、中等教育等)への日本の公的支出のGDP比は2.4%で、これはOECD中でも最低レベルです。

 日本の教育のワースト記録は、これだけではありません。もうひとつあります。
 それは、教員の労働時間の長さです。

 (最上部)は、教育社会学者の舞田敏彦さんが、教師の労働時間についてデータ分析をしたグラフです。
 日本の先生(中学校教員)は、グラフの右上に飛び抜けた位置にいることがわかります。週の平均勤務時間は約60時間。さらに、勤務時間が60時間以上の割合が半数を超える国は、日本しかありませんでした

 こちらは中学校教員のデータでしたが、小学校教員の長時間労働についても世界一との結果が出ています。
 「先生が忙しすぎる」という日本のイメージは、世界では当たり前ではないのです。
 「日本の常識は、世界の非常識」というわけです。

 ◆ 日本の生徒の「読解力」は楽観視できない

 さて、数学と科学はトップクラスの一方、読解力はトップクラスには遠く、なおかつ低下傾向にあるとお話ししました。読解力と言っても、OECDではどういうものを「読解力」と定義し、評価しているのでしょうか。

 OECDの資料によると、読解力(リーディング・リテラシー)として主に3点を試しています。
1.情報を探し出す力(関連するテキストを探索し、選び出すなど)
2.理解する力(字句の意味を理解する、統合し推論を創出するなど)
3.評価し、熟考する力(信憑性を評価する、矛盾を見つけて対処するなど)
 もちろん、日本の国語の授業でも1.2.3に関連することは扱っています。ただし、問題例などを見て感じるのは、国語だけでなくて、社会技術・家庭総合の時間など、あらゆる教科で1.2.3は大事になる能力だということです。

 ビジネスパーソンであれば、日ごろの仕事のなかでも1.2.3に関連することを常に行っている人は多いと思います。たとえば、顧客や取引先からのメールを読んで、何が求められているのかを理解する(1や2の能力)。
 その上で顧客のリクエストをそのまま受けていいのか、別の提案ができないかなどを考える(3の能力)などです。

 PISAの結果だけに一喜一憂するのはどうかと思いますが、重要なリテラシーを試していることにはちがいありません。その結果が低下傾向にあるということは、単純に「国語の授業が苦手」といったレベルを超えて、社会に大きな影響をもたらす可能性があります

 ◆ 「基礎的な読解力」がない生徒が増加している

 もう少しだけPISAの結果からわかることを紹介します。
 日本の読解力の平均点は2012年、15年、18年と直近3時点では下がっていて、これは統計的にも有意な差です。

 PISAではいくつか過去問と同じ設問が出ます。同じ問題について比較すると、18年の日本の平均正答率は12年、15年よりも下がっているものが多いです(ただし、同じ問題であっても、18年調査は過年度と調査方法が異なるため、単純な比較はできません)。

 図(略)は、読解力の習熟度別割合の推移を示したものですが、レベル1以下の低学力層が12年、15年、18年となるにつれて、徐々に増えています(レベル2も増加)。

 PISAでは、生徒が知識を得たり、幅広い実際的な問題を解決したりするために、自身の読解力を発揮し始める習熟度をレベル2と置いています。つまり、レベル2は最低限の能力水準と言ってよいレベルです。

 そう考えると、レベル1以下ならびにレベル2の生徒が増えているのは、読解力の順位の低下などよりも、よほど大きな問題です(2018年で約4割の生徒がレベル2以下)。

 もちろん、すべてを学校のせいだけにはできないわけですが、レベル1や2ということは、おそらく小学校からの学習に何らかの課題を抱えたまま、高校まで進学している可能性が高いと推測できます。
 つまり、小中学校において、こうした子どもたちの基礎力の底上げが十分に功を奏していない可能性があるのです。

 ちなみに、日本の数学的リテラシー、科学的リテラシーについては、OECD平均などと比べて、低学力層(レベル2以下)は相当少ないことが示されています。

 もっとも、数学と科学についても、2012年、15年、18年の直近3時点では、低学力層は増加傾向にあり、高学力層(レベル5以上)は減少傾向にあることには、注意が必要です。こちらも決して楽観視はできないのです。

   妹尾昌俊(教育研究家)

『PHP Online 衆知』(2020年6/26)
https://news.yahoo.co.jp/articles/4494388b52390e4fb455743cc00310242271e858


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