2020/7/5

子どもが大人に「ほかに方法はないの」という時に思い出して欲しい「請願権」  ]Vこども危機
  <教科書比較の私見A−2>
 ◆ 請願権の行使を阻害し続けている全国の自治体WEB案内
   皆さま     高嶋伸欣です


 相変わらず「請願権」についてこだわっています。
 最近も、大学センター入試についての話題が取りざたされ、マスコミでは高校生などの不満の声が伝えられていますが、それらの報道でも相変わらず、高校生が請願権の行使に気付いている気配がないことや、報道自体が文科省や大学入試センターなどが請願権行使の対象である”官公署”であるという指摘をしていないようです。

 記者たち自身に、請願権認識が希薄なのではないかという気がします。文科省クラブの記者たちが、検定結果報道解禁の際に、「請願権」記述の誤りについて全く無関心であるのも、そのためと考えられます。
 文科省クラブの記者だけではありません。


 2017年の総選挙後に『政治を動かす投票以外の方法』という見出しの長文記事を見つけた時は胸が躍りましたが、その中には「請願権」に触れたものが皆無でした(『毎日新聞』2017年10月24日、東京本社版)。

 『東京新聞』の今年5月23日(土)の夕刊「ティーンズランド(子どものページ)」に。2月27日の安倍首相による全国一斉休校要請で「突然学校が休みになり、友だちにちゃんとお別れできないまま卒業した人もいると思います。大人が決めたことに『ほかに方法はないの』と言いたかった人もいるよね。実は子どもには意見を言う権利が認められています」という書き出しの大きな記事が載っていました。
 この時も、胸が躍りました。けれども、記事本文を埋め尽くしていたのは「子どもの権利条約」のことで、「請願権」については一言もありませんでした

 今ほど、小中高校生たちが「ほかに方法があるのではないですか」と声を上げたいと切実に思っている時がこれまでにあったでしょうか。
 それなのに、そうした声を「大人(官公署も官僚・政治家たち)」に突き付ける権利があることを、大人社会は今もって小中高校生に伝える取り組みを散発的にしているだけのようにわたしには見えます。

 大人社会のこうした腰の重さの背景には、「請願権」認識の定着、啓発を望まない立場からの巧妙な認識操作、情報操作等が長年にわたって講じられ、今やそれが社会構造的で堅固な存在感を持ち、極めて効果的な影響力を密かに発揮している状況が出来上がっているのではないかという疑いを、私は持ち始めています。

 「それは、大げさすぎる」と言われそうですが、証明するのは簡単です。

 このメールをご覧の皆さま、PCで北海道から沖縄県までのどこでもいいですので、「都道府県名」と「請願」の2語で検索をしてみて下さい。

 WEB検索による各都道府県HPの「請願案内」はすべて、「都道府県議会(議長)宛の請願案内」のみという点で、全国一律です。実に見事な「右へならえ」の状況です。

 憲法16条と請願法が請願の提出先として明示しているのは「官公署」です。議会だけではありません。

 「官公署」は国会と政府機関でいえば中央省庁の全国にある出先機関を含む全組織(自衛隊も軍隊ではなく行政機関です)が該当し、独立行政法人も該当するはずです。
 地方自治体の場合は、議会だけでなく首長を頂点とする行政執行機関(一般行政部門)や外局等に加え各種独立委員会(教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会、公安委員会、労働委員会、農業委員会、監査委員)など広範な組織・機関が該当します。

 ところが、先の各都道府県のHPでは、「議会(議長)宛の請願案内」を求めて検索したのではないのに、「議会宛の請願案内」しか画面に出てこないようにセットされています。
 一般行政部門や各種独立委員会に請願書を直接提出できるということを、伏せているのです。

 伏せている理由は簡単です。請願書が提出されて行政の不備を指摘されたり、業務が増えることは官僚にとって”不都合な事態”ですから、そのような事態を生じさせる情報を官僚自身の手でHPに掲載するのは、問題にされない限り避けておきたいという思惑が働いているということです。

 しかもこれが全国一律なのですから、全国の自治体に足並みを揃えさせる”力”がどこからか働いている可能性が想定されます。
 その”力”として推認される存在が一つ浮上していますが、詳しい説明が必要になるので、ここでは深入りしないでおきます。

 ともあれ、請願は、議会の議決に関わるものよりも一般行政や独立委員会の業務に関わるものが大半ですから、直接担当の行政部門や独立委員会に要望を伝える方が効果的で、制度の趣旨からも適切であるはずです。

 それなのに、47都道府県すべてが「請願は議会経由で出せます」として、そのための具体的な手続きをいかにも親切な風に案内することのみに徹することで、一般行政部門等への直接の請願ができることに気付きにくくさせるのに成功しているのが、目下の日本社会の状況です。

 しかも、請願は「議会宛」のみ可能であると思い込ませる「請願案内」にはさらに実際的な請願阻止「効果」が仕組まれているのです。

 それは、HPの「議会宛請願案内」に従って請願をしようとしても、添付資料にある「国会法」や「地方自治法」の条文から明らかなように、「議会宛請願」には「所属議員の紹介」が必須条件として定められていることです。

 地方議会議員の「紹介」については「請願の内容に賛同して署名することをいいます」(山梨県議会の案内)とか「請願内容に賛意を表する県議会議員一名以上の紹介が必要です」(兵庫県議会の案内)などと補足説明がされています。

 もともと議員と個人的なつながりがない住民が大半であることからすれば、このような条件をクリアーするのは極めて難しく、多くの場合、断念に追い込まれています。

 それに仮に運よく議員に紹介役を引き受けてもらっても、議会では党派が優先されるので、請願の内容を党派色で判断されて不採択とされるケースが少なくないと、ある県議会議員に言われたのが2年前のことです。

 一般行政部門等の「官公署」官僚は、このように行政部門のHPにアップすべき「請願案内」を議会HPの「請願案内」にすり替える巧妙さをもって、請願のわずらわしさから逃れるという”好都合”な状況を全国で構築し、「官僚天国」を謳歌し続けているのです。

 これが、現在の日本社会の一面ということに気付いたという次第です。

 コロナ騒ぎでWEB授業など変則的な状況が続いているようですが、生徒・学生に地元の自治体のHPの「請願案内」のチェックを呼び掛け、行政部門等への「請願案内」を整備するようにとの請願権行使の実践を体験する機会を創る、という取り組みはいかがでしょうか。

 ちなみに、都道府県以外の市町村のHPでも状況は同じだと思います
    *もしそうでない事例がありましたら、情報を頂けると幸いです。

 ただし、独立委員会の教育委員会の場合、きちんと請願提出受理後の処理等について規定を策定していて、場合によっては教育委員の会議の場で口頭陳述を認めているところも少なくありません。

 その一方で、杉並区教育委員会のように、請願法が「住所・氏名」の記載だけで良いとしているのに、勝手にHPで「電話(番号)」の記載を必要とする請願法違反の案内をしているケースもあります(杉並区教委は、繰り返し「違法だ!」と指摘しても是正していません)。

 また、関西のある県教委では会議規則で「陳情」についての条項を策定していますが、「請願」については何も策定していません。
 「請願」と「陳情」を取り違えている模様ですが、昨今に策定された会議規則ではありません。
 県教委がこのありさまでは、教科書採択のための教科書検討資料つくりの際に「請願権」記述に無関心なのも当然と思えてきます。

 以上 請願権について教科書記述が不適切なままなぜ75年以上も放置されてきたのかについての、高嶋の私見です。   ご参考までに
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