2020/8/11

東京の中高一貫校10校すべての歴史・公民で右派系教科書の採択が止まる  Y暴走する都教委
  《尾形修一の紫陽花(あじさい)通信から》
 ◆ 都教委、育鵬社を採択せず−中学教科書問題


 東京都教育委員会の定例会が2020年7月27日に開かれ、来年度からの都立中学校、特別支援学校の教科書を採択した。その結果をホームページで確認すると、今回は育鵬社の歴史、公民教科書が採択されなかった
 1990年代に「新しい歴史教科書をつくる会」が登場して以来、中学の歴史教科書が大きな問題になってきた。都教委は今までずっと扶桑社か、その後身の育鵬社を採択してきたが、19年ぶりに右派系教科書を選ばなかったのである。

 まず採択結果を見てみると、歴史では都立中高一貫校10校すべてが山川出版になっている。特別支援では視覚障害が教育出版、聴覚障害、肢体不自由・病弱では日本文教出版(日文)である。


 公民では、白鴎を除く中高一貫校と視覚障害で教育出版、白鴎附属中と聴覚障害、肢体不自由・病弱で日本文教出版(日文)になっている。
 採択のための調査研究資料も公表されているが、いつものように採択された理由が全然判らない。

 中学教科書は原則として4年間同じ教科書を使用することになっている。4年ごとに新しい教科書が検定を受け新たな採択が行われる。前回は2015年なので、本来は去年が新規採択の年だけど、学習指導要領の改定に伴って新しい教科書が出なかった。そこで2020年が新規採択の年になったわけだけど、例年なら集会などが行われてマスコミでも取り上げられる。僕も今まで前回、前々回には教科書展示会に出掛けて記事を書いた。
 しかし、今年は新型コロナウイルス問題でどっち側の集会も開きにくい。僕も教科書を見に行ってないのである。

 今回は清水書院が撤退し、代わりに高校で圧倒的なシェアを持つ山川出版社が新たに参入した。高校教科書との連続性をウリにしているので、まあ中高一貫校で採択されるのは納得できる感じか。
 歴史では育鵬社と並ぶ右派系教科書の自由社が、今回は検定で不合格となった。そういう検定のあり方をどう考えるかという問題はあるが、問題が多すぎたのだろう。育鵬社も執筆者を見ると故人(渡部昇一、岡崎久彦氏など)が多く、インパクトに欠けたのか。山川参入で全国の中高一貫校はほぼ同じ傾向になると思う。

 90年代の歴史修正主義運動は、「新しい歴史教科書をつくる会」が執筆した教科書を生み出した。「扶桑社」(産経新聞の子会社)から出版されたが、最初は東京と愛媛の養護学校しか採択しなかった。あまりにも右派的な記述が多く、全国的な広がりが難しかったのである。
 扶桑社で2回出した後で、もっとマイルドにするべきだという八木秀次らが分かれて、育鵬社(扶桑社の子会社)に代わった。藤岡信勝らは自由社から出版を続けたが少数派となった。

 育鵬社の教科書は「大東亜戦争」と書く。「当時の公式的呼称」だけど、今の時点でそう教えるべきなのか。僕は社会科の教員として、「歴史修正主義」には抵抗しなければと思ってきた。中学教科書は無償だから、税金を使って特定の歴史観を奨励するのと同じである。一般書を書くのは自由だが、教科書を作って右派系政治家の力を使って採択するやり方はおかしい。
 都教委が中高一貫校を設置し、附属中の教科書を都教委が決めるとなったとき、その最初のターゲットとなった白鴎高校は僕の出身校だ。そこで同窓生としての反対運動を始めたのである。

 前回(2015年)のときとは教育委員も代わっていることが大きいのだろう。はっきり言って、もう都教委はずっと育鵬社かと半分諦めていた
 右派系の人は、右派的な首長が選んだ右派的な教育委員に期待を掛けてきた。「左翼的労働組合」などが圧力を掛けるから、一番ふさわしい教科書が選ばれないなどと「妄想」を抱いていたのである。
 だから、「圧力」のない「静かな環境」で採択するべきだとか言っていた。今回はコロナ禍のため、市民運動もマスコミ報道もなかった。「静かな環境」のもとで選んだら、育鵬社が選ばれない皮肉な結果になったわけだ。

 この問題はもっと早く書くべきだった。弁護士の澤藤統一郎氏のブログ「憲法日誌」を読むまで気がつかなかった。都教委のホームページも新しい情報がすぐに画面から見えなくなってしまう。いつもだと第4木曜が都教委の定例会だが、今年は4連休のため月曜日に延期されていた。その告知は見ていたんだけど、つい確認を忘れてしまった。寄席に出てる人なんかはチェックしてるのに、我ながら問題意識の薄れ方に驚き、反省した。

『尾形修一の紫陽花(あじさい)通信』(2020年07月31日)
https://blog.goo.ne.jp/kurukuru2180/e/7330d8895b31a626dad2415220067255


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