2020/9/27

関東大震災朝鮮人被害者追悼式典の妨害を繰り返した「そよ風」にヘイトスピーチ認定  ]平和
 ◆ 朝鮮人に対する差別をヘイト・スピーチ認定 (『救援』から)
   前田朗(東京造形大学)

 ◆ 認定内容

 八月三日、東京都総務局は「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」第一四条の規定により設置された審査会の意見を踏まえ、条例第一二条の規定に基づきヘイト・スピーチを認定した。
 対象とされたのは、昨年九月一日、東京都墨田区内の集会においてなされた次の三つの発言である。

 1.「犯人は不逞朝鮮人、朝鮮人コリアンだったのです。」
 2.「不逞在日朝鮮人たちによって身内を殺され、家を焼かれ、財物を奪われ、女子供を強姦された多くの日本人たち」
 3.「その中にあって日本政府は、不逞朝鮮人ではない鮮人の保護を」
 「都の対応」として、次の補足説明が付された。


 1.上記1について、条例第一二条第二項の規定に基づく申出を受け、これらの表現は、不逞朝鮮人という言葉を用いながら、本邦外出身者を著しく侮蔑し、地域社会から排除することを煽動する目的を持っていたものと考えられる。
 また、当該発言がなされた日時、場所、その他の態様等に照らせば、別の集会に対して挑発的意図をもって発せられたものであって、その表現内容も朝鮮人を貶め、傷つける差別的表現であることから、本邦外出身者に対する不当な差別的言動に該当すると認められるため、適切な措置をとるべきとの審査会の意見を聴取した。

 2.条例第一三条第一項の規定に基づき、審査会の意見を踏まえ、都としては、上記1の表現は、条例第八条に規定する本邦外出身者に対する不当な差別的言動に該当する表現活動であると判断した。

 3.都は、条例第一二条第一項の規定に基づき、本件公表を行い、このような本邦外出身者に対する不当な差別的言動はあってはならないものとして、その解消を推進していく

 以上が「都の対応」である。ヘイト・スピーチを認定したが、主体が明示されていない。
 これは、ヘイト団体「そよ風」が、関東大震災朝鮮人虐殺に関連して、都立横網町公園に建立された朝鮮人犠牲者追悼碑前で毎年、震災のあった九月一日に開かれてきた追悼式典を妨害するために、式典のすぐ近くで二〇一七年から集会を開催し、式典参列者に向けてヘイト・スピーチをまき散らしてきたものである。
 レイシスト団体そよ風は、朝鮮人虐殺の事実を否定し、犯人は「不逞朝鮮人」と罪を擦り付けるなど差別発言を繰り返し、追悼式典を妨害してきた。


 ◆ 変転する東京都

 本件ヘイト認定の背景には、コリアン・ジェノサイド(関東大震災朝鮮人虐殺)をめぐる歴史否定主義との闘いがある。
 都立横網町公園での朝鮮人犠牲者追悼式典は長年開催され、これには東京都知事のメッセージが寄せられてきた。石原慎太郎でさえ歴史の事実の前でいちおうは敬虔な姿勢を示してきた。
 ところが二〇一八年、小池百合子都知事はメッセージを送らなかった。背後にはそよ風の暗躍があったと伝えられる。多くの市民やメディアからの批判にもかかわらず、小池知事は「虐殺については様々な見方がある」などとメッセージを拒否し続けた。これに勢いを得たそよ風は、追悼式典の妨害行動を繰り返した。
 追悼式典主催者はヘイト・スピーチ被害を訴えた。

 二〇二〇年の集会について、公園管理者である都は、会場となる横網町公園の使用許可をめぐり、双方の団体にトラブルを防止する目的の「誓約書」を求めた。
 これに対し追悼式典主催者側「トラブルを惹起しているそよ風に対して個別に問題行動について注意するべきだ」として、五月一八日、声明を発した。
 声明は広く反響を呼び、都にはさらに批判の声が寄せられた。

 条例に基づいて設置された人権審査会では、多数の委員が「これはヘイト・スピーチだ」と断言し、誓約書要求については全委員が「こんなやり方は間違っている」と都の対応を批判したようである。
 こうしてようやく右のヘイト・スピーチ認定に至り、都は式典主催者に誓約書を求めることを撤回した。都を舞台とする歴史修正主義との闘いが一定の成果を勝ち取った。

 しかし、都と小池知事の姿勢は追悼式典潰しを控えるというレベルにとどまり、式典へのメッセージもなければ、そよ風による妨害活動の制止も考えていないという。
 ヘイト認定を都のホームページに掲載したが、そよ風に直接通知することもしていない。

 都は条例に基づいて「不当な差別的言動の解消を図る」ために「公の施設の利用制限」に関して「ヘイト・スピーチが行われる蓋然性が高いこと」と「ヘイト・スピーチが行われることに起因して発生する紛争等により、施設の安全な管理に支障が生じる事態が予測されること」を掲げた。
 ヘイト・スピーチの蓋然性が高く、被害が生じる事態が予測されるから、そよ風には公共施設を利用させるべきではないだろう。
 施設利用の態様等を総合的に勘案するために、審査会の調査審議を経ることが必要だ。

 なお、本年九月一日の追悼式典は、新型コロナの影響のため一般参加なしのインターネット中継となった。

『救援 617号』(2020年9月10日)


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