2020/10/25

赤木俊夫氏が改ざんの詳しい経緯を書いたファイルが存在する  ]平和
  =たんぽぽ舎です。【TMM:No4058】「メディア改革」連載第46回=
 ◆ 自死の財務省・赤木俊夫氏の妻、雅子氏が元上司の音声提出
浅野健一(アカデミックジャーナリスト)

 ◆ 「改ざんは佐川さんの判断」と池田靖統括国有財産管理官が明言

◎ 「赤木(俊夫)さんは改ざんを指示された際の経緯を記録したファイルを残している。めっちゃきれいに整理してある。どこがどうで、何がどういう本省の指示かっていうこと。これを見てもろうたら、我々がどういう過程で(改ざんを)やったのか全部分かる
 「初めから赤木さんは改ざんに抵抗し、涙を流していた」
 「もちろん、改ざんは佐川さんの判断だ
 「少しでも野党から突っ込まれるようなことを消したい、ということでやった」
 「8億円の算出(値引き)には問題がある」
 無機質なトーンで生々しい事実を伝える声がテレビでオンエアされた。


 10月14日午後、安倍晋三記念小学校(瑞穂の國小學院と改称、安倍昭恵校長)疑獄を巡り、公文書改ざんを命じられ自死した財務省近畿財務局上席国有財産管理官、赤木俊夫氏の妻、赤木雅子氏が今年3月18日、国と佐川宣寿財務省理財局長(当時)に損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁に提出した音声データ(約2時間)の生音声だ。

◎ テレビ、新聞では、赤木俊夫氏の「当時の上司」などと氏名を伏せて伝えたが、声の主は近畿財務局統括国有財産管理官・池田靖氏だ。
 池田氏は赤木俊夫氏を伴い、森友学園の籠池泰典前理事長との国有地のゴミ問題などの交渉に当たっていた。
 池田氏は2017年2月27日、赤木俊夫氏を呼び出して、改ざん作業をさせた。その日は日曜で、赤木氏夫妻は神戸市内で休日を楽しんでいた。その後、何度も改ざん作業を強いられた。池田氏は現在、近畿財務局・管財総括第三課長に昇進している
 池田氏は、赤木俊夫氏の1周忌直後の2018年3月9日に赤木雅子氏の自宅を訪れた際、赤木俊夫氏が改ざんの詳しい経緯を書いたファイルを職場のパソコンに残していることを明らかにしていた。
 このファイルは大阪地検にも提出されているが、雅子氏はまだ見ていない。

◎ 赤木雅子氏側は裁判でファイルの開示を求めてきたが、被告の国側が回答を拒否。このため、14日の第2回口頭弁論で、池田氏との会話の音声データと反訳文書を証拠として提出し、改めてファイルの開示を求めた。弁護団が地裁内にある司法記者クラブにも提供した。
 赤木雅子氏は相澤冬樹氏(元NHK記者)との共著『私は真実が知りたい 夫が遺書で告発「森友」改ざんはなぜ?』(文藝春秋)で、自宅を弔問などで訪れた元上司たちとの会話をボイスレコーダーで録音したと書いている。赤木雅子氏は同書で、当時17歳だった赤木俊夫氏の甥っ子が機転を効かして録音したと明かした。

◎ 赤木雅子氏は7月15日に開かれたこの裁判の第1回口頭弁論での意見陳述で、夫の「上司」5人の実名を挙げた。
 5人は国有地払い下げの担当者だった池田氏
 近畿財務局管財部次長の小西眞氏(近畿財務局金融安定監理官を経て、大臣官房専門調査官)、
 財務省秘書課長だった伊藤豊氏(金融庁監督局審議官)、
 池田氏の前任者だった前西勇人氏(神戸財務事務所総務課長)、
 美並義人近畿財務局長(東京国税局長)だ。
 赤木雅子氏は陳述の中で、池田氏が<文書の修正、改ざんについて、ファイルにして、きちっと整理していた。修正前と修正後、何回かやり取りしたような奴がファイリングされ整理されている>と話したことを詳しく述べた。

◎ また、他の上司についてもこう述べていた。
 <財務省秘書課長だった伊藤豊さんは、2018年10月、私に対して、「この首相の発言によって野党が理財局に対して資料請求するなど炎上したため理財局は改ざん前の文書を出せなかった。その意味で、首相の発言と改ざんは関係がないとはいえない」と言いました>
 <池田さんも、池田さんの前任者の前西勇人さんも「裁判になれば本当のことを話します」と私にはっきりと言いました>
 この音声テープはキシャクラブメディアで報道されたが、報道の仕方に問題があった。
 毎日新聞は14日夕刊で、<雅子さん側が大阪地裁に提出した録音データの記録で判明><(元上司の)詳しい発言が明らかになるのは初めて>と、自社のとくダネのように前打ちした。記事には伊藤遥記者の署名がある。

◎ 赤木雅子氏に取材し、赤木俊夫氏の手記などをスクープした相澤氏は10月18日、ヤフーニュースで、<日本語の読めない記者が書いたの?森友公文書改ざん 音声データ巡る新聞記事のデタラメ>と題した記事で、毎日新聞の記事をデタラメと批判した。
https://news.yahoo.co.jp/byline/aizawafuyuki/20201018-00203541/

◎ 私もこの記事を読んで、音声テープの内容は相澤氏が3月から「週刊文春」などで明らかにしており、赤木雅子氏との共著にも詳しく書かれていることから、「初めて」は誤っていると思っていた。
 相澤氏によると、「週刊文春」は毎日新聞に抗議。毎日新聞は誤りを認めなかったが、ウェブ版の記事を「一連の裁判手続きのなかで詳しい発言が明らかになるのは初めて」と修正した。
 相澤氏は<素直に「最初の記事に誤りがありました。内容が明らかになったのは初めてではありませんでした。お詫び致します」と伝えるべきでしょう>と指摘している。
 同感だ。毎日新聞のやり方は、日本学術会議問題での甘利明自民党税調会長の“修正”方法と酷似している。


 ◆ 改ざん作業を強いた直属上司をなぜ仮名報道するのか

◎ テレビでは、17日のTBS「報道特集」が池田氏を含む上司6人の音声データ(計9時間半)を入手したとして、3人の発言の重要部分を抜粋して放送した。金平茂紀キャスターが雅子氏を再びインタビューした。
 最初に音声を流した財務省秘書課長だった伊藤豊氏だけ実名で、顔の映像も放送した。伊藤氏は、「この首相の発言(安倍氏の2017年2月17日の「事件に関与していれば首相も議員も辞める」との国会答弁)によって野党が理財局に対して資料請求するなど炎上したため、理財局は改ざん前の文書を出せなかった。その意味で、首相の発言と改ざんは関係がないとはいえない」と話している。

◎ 改ざんは佐川財務局長の指示で、安倍首相の答弁と関係があると言い切っている。伊藤氏は2018年10月に赤木雅子氏を訪ねた。番組は伊藤氏へ取材も掛け、財務省が回答した。
 次は「元管財部長」の音声だった。「報道機関が押し寄せたら、えらいことになりますから」「新聞社って怖いですよ」「(記者が)ストーカーみたいになってる」と忠告した。遺書とマスコミを気にしていた様子が分かる。この人物は、赤木氏と同じ官舎に住んだことのある楠敏志近畿財務局管財部長(当時)で、赤木俊夫氏が亡くなった翌日、部下と共に自宅を訪れた。

 3人目が池田氏(番組では「統括官」)。ファイルについての発言の他、「赤木さんは涙を流しながら抵抗していた。僕自身も抵抗したけど止めきれなかった。やる必要もないと思っていた」「(国有地売却については)確実に撤去する費用が8億になるかというところの確信というか、確証が取れてない」などと説明した。

◎ ネットのテレビに関するコメント欄に、「番組で取り上げたうちの2人とも、はっきり佐川氏の指示だったと述べた。また一人は安倍の国会での辞めるとの話が関係したとも述べた。ここまで来て、佐川氏も関係者ももう保身は止めた方がいい。これは犯罪である」と書き込んでいた。

 15日のフジテレビ「バイキングMORE」では、池田氏の音声を放送した後、MCの坂上忍氏が「圧力がかかって赤木さんは、やりたくもない改ざんに対して手を染めてしまって、その気持ちから自ら命を絶たれてしまったのかなと僕は素直にそうやって受け止めてしまいました」と述べた。
 この番組では、元裁判官だという清原博弁護士が「改ざんは悪いことだが犯罪にはできなかった」と地検の佐川氏ら財務省職員38人の不起訴を当然視し、赤木雅子氏が開示を求めている「赤木ファイル」についても、「現状では国側に提出を強制することは難しい」などとコメントしていた。
 あまりに当局側に偏向している。
 ゲストの人たちが「真面目に働いてきた一人の公務員が亡くなっている。雅子さんの願いにこたえるべきだ」と語っていたのは良かった。

◎ TBSも含め、キシャクラブメディアが池田氏の実名を報じなかったのは理解できない。
 私が見た限りでは、朝日新聞、毎日新聞。東京新聞は「近畿財務局統括国有財産管理官」という役職を書いていた。他の新聞・通信社、テレビは「元上司」などと仮名だった。
 京アニ事件では、犠牲者の遺族が実名報道を拒んでいるのに36人全員(遺族が実名を承諾したのは14人だけ)の実名を報じたのと比較すると全くのダブルスタンダードだ。

◎ 赤木雅子氏が第1回弁論で元上司6人の氏名を挙げた時は、一部メディアが池田氏と美並義人近畿財務局長の実名を出しただけで、池田氏の前任者の前西勇人氏、近畿財務局管財部次長の小西眞氏、財務省秘書課長だった伊藤豊氏は仮名だった。

 取材記者は音声の主が池田氏とすぐに分かるのに、「実名報道原則」を主張する報道機関が揃って仮名(実名の対語)報道したのは、全く理解できない。
 大阪のメディア関係者によると、原告弁護団が匿名にするよう要請したようだが、池田氏を敵に回したくないという配慮だろうと思う。
 匿名、顕名は報道機関が決めることであり、当時、池田氏しかいない統括国有財産管理官という肩書を報じて、実名を報道しないのは、官僚への忖度としか考えられない。相澤記者は池田氏を顕名にして報じている。


 ◆ 「調査される側」の菅首相は真実解明に協力せよ

◎ 大阪地裁は池田氏があると明言したファイルを被告側に提出させるべきだ。ファイルは地検から財務省に戻っているかは分からないが、なぜ赤木俊夫氏がメンタルを病み自死に追い込まれたかの解明には、ファイルは欠かせない。

◎ 菅義偉首相は赤木雅子氏の再調査を求める訴えに対し、「財務省で調査を終え処分も行った。検察が捜査もして、結果が出ている」として、再調査を拒んでいる。赤木雅子氏は「安倍前首相、麻生太郎財務相は調査される側で、再調査について語る資格はない」と言っている。

◎ 14日のTBS「NEW23」で星浩氏「新事実が出ているのだから、再調査すべきだ」と強調した。
 菅首相は官房長官時代の2017年2月22日、佐川氏らを官邸に集めて緊急の協議をしており、そこで改ざんが決まった。菅氏もまた「調査される側」である。
 菅首相は「当たり前でないことをなくす」と公言している。
 財務省から独立した調査委員会での再調査は当たり前のことではないか。(了)


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