2020/11/27

国際条約に違反し、外国人労働者受け入れ政策に逆行する「入管法改訂案」  ]U格差社会
 ◆ 「入管法改正」は誰のため?
   〜「送還」ではなく「正規化」を
(労働情報 No.999)
安藤真起子(NPO法人 移住者と連帯する全国ネットワーク)

 今秋(2020年秋)の臨時国会で入管法改定法案が提出されようとしている。
 入管法は2018年に改定(施行は2019年〉があったばかりだが、その時は、在留資格「特定技能」の創設、「受入れ」が焦点であった。
 今回の入管法改定は、「受入れ」ではなく、「送還」の方である。
 「送還」を拒む外国人を対象とした刑事罰や、難民申請者も送還できるようにする送還停止効の例外規定、他にも、仮放免中に逃亡した者に対する刑事罰などが盛り込まれる。

 1.入管法改定法案の背景

 今回の入管法改定には伏線がある。従来より日本の「入管収容」に関しては多くの人権侵害が指摘されてきた。つい最近も、国連人権理事会恣意的拘禁に関する作業部会から、日本の入管収容は国際人権規約に違反すると意見書が送られたばかりだ。


 これまでも入管収容施設では、被収容者たちが極度のストレスにより精神疾患を発症したり、自傷行為、自殺未遂を図るケースが多く発生していたが、近年、政府による「締め付け」の方針により、被収容者たちは究極の状況に追い込まれた。

 2018年2月に当時の法務省入管局長名で仮放免の運用の厳格化を示す通達が出された。以降、仮放免がほとんど許可されなくなり、収容の長期化が進んだ。

 2019年に入ると、被収容者たちはこれに抗議し、全国の収容施設でハンガーストライキが決行された。ハンストの影響で衰弱したあまり、自らの意思とは無関係に食べ物を受けつけられなくなる者、排泄機能に支障をきたす者、歩行不能となり、車椅子の生活になる者などが多数出た。
 そして、6月には大村入管の収容所でナイジェリア人男性が亡くなった。ハンストの末の餓死であった。

 こうした状況を受け、政府は、2019年10月に、法務大臣の私的諮問機関である第七次出入国管理政策懇談会の下に「収容と送還に関する専門部会」(以下、専門部会)を設置する。
 ここで、送還忌避者の増加、収容の長期化の防止、収容の在り方について協議がされ、6月に「提言」2が発表された。これが今回の法案の骨子となる。

 2.法案の主な問題点
 法案には、専門部会からの「提言」を踏まえ、以下の内容が含まれる予定である。

 (1)送還忌避罪(退去強制拒否罪)
 退去強制を拒否している外国人に対して刑事罰を科すことが提案されている。
 しかし、人びとが退去強制を「拒否」するのは、帰国できない、つまり、日本に在留を希望する事情があるからにほかならない。
 「送還忌避者」とは、日本政府により難民とは認められなかったが国に帰れば迫害の恐れがある人、もう20年も30年も日本で暮らし、本国とのつながりをなくしている人、あるいは日本で生まれ育った子どもがいる、日本に家族がいるといった理由で本国には到底帰れない事情をもつ人びとである。
 「送還忌避者問題」は「送還忌避者」にあるのではない。
 日本に在留する十分な理由があるにもかかわらず、なかなか在留が認められるしくみになっていない、在留特別許可を含む現行制度に問題があるのである。

 (2)送還停止効の例外規定
 政府は、「送還停止効」に一部例外を設けることにより、複数回難民申請をしている者の送還を可能にしようとしている。
 送還停止効は、難民条約に示される「追放及び送還の禁止」(ノン・ルフールマン原則)にもとづき、難民認定手続きが終了するまでは送還を停止するものとして入管法に規定されている。
 今回の法案では、ここに一部例外を設けることにより、難民申請者の送還を可能にしようとしている。これは、難民条約の原則に反する

 2019年の日本の難民認定数は44入、認定率は0・4%であった。日本の難民認定制度には多くの課題があり、本来難民と認められるべき人が認められていない。
 「従前の難民不認定処分」の判断にこそ問題があるのであり、その解決を行うことなく送還停止効に例外を設けることは許されない。

 (3)仮放免逃亡罪
 また、仮放免中に逃亡した外国人に刑事罰を科す仮放免逃亡罪の創設が含まれる予定である。
 昨年ハンストが発生した直後、入管庁は、2週間だけ仮放免をする措置をとった。2週間だけ外に出され、再収容される措置は、人びとにまた別の大きなストレスを与えた。
 しかし、また再収容されるとわかっていてもほとんどの人は、収容施設に戻った。
 中には逃亡をした人もいたと聞くが、国連からも指摘されるような「収容」のあり方を見れば、逃亡する人を非難するのは筋違いと言えるであろう。

 3.「送還」ではなく「在留資格」を

 今回の法案は、邪魔な「送還忌避者」への対処と、今後そうした「邪魔になった人びと」を生み出さないようにするための措置として考案されている。
 しかし、そもそも「送還忌避者」を生み出したのは、「移民政策はとらない」と言い張ってきた日本の入管政策である。外国人労働者政策の結果と言ってもいい。

 80年代後半のオーパーステイ容認政策、90年代初頭の日系人受入れ、技能実習制度、留学生30万人計画、技能実習制度の拡大、特定技能の創設といった変遷の中で、一貫しているのは、一定期間働いてもらい帰ってもらう、不要になれば追い返す、定住させない政策である。

 しかし、国家権力がどう扱おうが、在留資格があろうがなかろうが、人は人である。一定期間、同じ場所に住めば、仕事をし、生活をし、家族ができ、あるいは、人のつながりができ、地域に溶け込み、人生がそこに根付く。
 「送還」で何が解決されるだろうか。

 私たち移住連は、今回提出される入管法改定法案に反対するとともに、「送還忌避者」として非正規滞在の状況のまま置かれた外国人の状況について、政策的な責任をふまえて「正規化」(在留特別許可)の措置をとるよう政府に求めている

『労働情報 No.999』(2020年11月)


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