2021/2/28

東京五輪をテコにした日本社会の「戦前回帰」完成の目論みは、コロナ禍で大きく狂った  X日の丸・君が代関連ニュース
  =千葉高教組「日の丸・君が代」対策委員会『ひのきみ通信』から=
 ◆ 「日の丸・君が代」問題から見た「東京五輪」
渡部秀清(千葉高退教)

(1)

 戦後(1945年)、GHQ(連合軍最高司令部)により、「日の丸・君が代」は禁じられた。
 しかし、朝鮮戦争が始まった年(1950)、文部省は国旗掲揚と「君が代」斉唱を学校に通達した。日本の旧勢力が朝鮮戦争を契機に旧秩序を再建しようとする中でよみがえったのである。

 1958年以降、官報告示による「学習指導要領」で、「国旗を掲揚し、君が代をせい唱させることがのぞましい」と書かれた。1970年代改訂では「君が代」を「国歌」とした。
 1980年代後半には、文部省が「君が代」斉唱・「日の丸」掲揚の実施状況調査と取扱いの徹底を通知、1989年の改訂で、国旗掲揚、国歌斉唱を「指導するものとする」とした。


 これに対し、「日の丸・君が代」強制反対闘争が全国各地で起きた。
 千葉では東葛・国府台・小金・薬園台などの高校で生徒会の闘いも起きた。
 このことは千葉高教組が出した『侵入禁止』(1994年11月発行)という冊子にまとめられた。

 しかし自民党政府は、こうした反対闘争を抑えるために、1999年「国旗国歌法」を強行した。
 千葉高教組は、2000年2月11日に『日の丸・君が代強制反対県民集会』(約1200名参加)を開き、右翼街宣車が多数集まる中、千葉市内をデモ行進した。

 その後東京では、石原知事の下で、2003年「10・23通達」が出された。「君が代」不起立教職員に対し、重い処分と「再発防止研修」が課されることになった(これまでの被処分者は延べ484人)。
 橋下維新の大阪でも、2011年「国旗国歌条例」、2012年「職員基本条例」が出され、同じ職務命令に3回違反したら免職と規定された(これまでの被処分者は延べ64人)。
 ただ、千葉では、現在も不起立者はいるが、10年以上前に一人が文書訓告を受けたにとどまっている。

 2006年12月、「戦後レジームからの脱却」を掲げた安倍第一次内閣で、「教育基本法」が改悪され、<愛国心>が盛り込まれた。その後、「日の丸・君が代」の強制は、幼児教育から大学にまで広がった。
 2012年4月に出された「自民党改憲草案」では、天皇が「象徴」から「元首」に変えられ、戦力の不保持が「自衛軍を保持する」とされ、「国旗及び国歌を尊重しなければならない」という文言が入れられた。
 同年12月に第二次安倍政権が発足し、こうした動きはさらに加速した。
 2015年には「戦争法」が、2017年には「共謀罪」が強行採決された。
 2019年には戦前の儀式に則った「天皇代替わり」が行なわれ、安倍首相は「天皇陛下、万歳」の音頭をとった。
 そのうえで、2020年1月の施政方針演説では、夏の東京五輪を前面に出し、これをテコにした9条改憲を強調、「国民一丸となって、新しい時代へと、踏み出していこうではありませんか」と声を張り上げた。
 教育現場では、「オリパラ教育」で<ボランティアマインド>と<日本人としての自覚と誇り>が強調されていた。まさに、東京五輪をテコにして日本社会の「戦前回帰」完成を目論んでいたのである。


(2)

 しかし、その後のコロナ禍により、その目論見は大きく外れた。
 3月には東京五輪は1年延期となった。その際彼は、「人類が新型コロナウイル感染症に打ち勝った証しとして完全な形で東京大会を開催する」と述べた。
 だが、コロナ感染はその後も全世界に広がった。アベノミクスも行き詰まり、彼の不祥事も次々と暴かれ、8月には首相を辞任するに至った。安倍の夢は消えてしまった。

 それでも「安倍政権の継承」を掲げる菅首相は、安倍の夢を実現すべく、安倍政権に批判的だった学者6名の「日本学術会議」への任命を拒否した。6人の中には、東京の「君が代」裁判で原告らを支援していた早大の岡田教授も含まれていた。
 また、2021年に入り、自民党は「国旗損壊罪」を盛り込んだ刑法改正案を今国会に提出すると言い出した。武蔵野美大の志田教授は、「是が非でも『愛国心』を形成しようという意図があるのかと思わずにはいられない」と述べた。彼らはあくまでも「戦前回帰」にこだわっているのである。

 ところが、コロナ感染は収まらず、1月7日には二度目の「緊急事態宣言」を出さざるをえなくなった。
 その際菅首相は、「1か月後には必ず事態を改善させる」と述べた。しかし改善はせず、医療崩壊状況になり、さらに1か月延長することになった。東京五輪開催に懐疑的な世論は、8割をこえた

 ボランティアの辞退も次々に出てきた。そんな中で、「日本は天皇中心の神の国」の発言で有名な五輪組織委員会・森会長の、女性蔑視発言が起きた。
 これに対し国内外から大きな反発が起き、森会長は辞任に追い込まれた。さらに後継者指名でも問題が起き、会長選出は白紙状態になってしまった(2月14日)。また、森会長の発言で、日本社会の後進性が世界に知らされることになった。
 たとえ誰が会長になっても、大きく躓いた五輪を立て直すことは難しいだろう。それでも強行するなら、多くの犠牲を出すことになるだろう。

 安倍前首相や菅首相にとって、東京五輪は、戦後一貫して進められて来た「戦前回帰」完成への最後の一歩でもあった。しかしここに来て躓き、逆に日本社会の「古い体質」を国内外に知らしめる結果になった。

 ところで、その「戦前回帰」の象徴が、戦後進められてきた「日の丸・君が代」の復活と強制であったと言える。
 だが、その「戦前回帰」(歴史の逆転)路線はこの間の騒動で破綻した。また、その路線を歩んできた勢力の「古い体質」も暴かれてしまった。
 イギリスのサミュエル・ジョンソン(1709〜1784)は、「愛国主義はふらちなやつらの最後の隠れ家」と述べたが、「戦前回帰」を図ろうとした安倍、石原、橋下、森、菅氏らの面々にまさにピッタリの言葉だ。

 この間の五輪騒動で、日本の歴史はもう戦前には戻らないだろう。むしろ新たに前進を開始するだろう。
 だから私たちは、「日の丸・君が代」強制反対闘争に自信をもち、この間に声をあげた多くの人々と共に、「古い体質」を変え歴史の歯車を前進させるために力を尽くすべきだろう。
 そもそも、天皇主権の歌である「君が代」を「国歌」とし、強制し、従わない者を処分するなどというのは、民主主義でも何でもないのである。

千葉県高等学校教職員組合「日の丸・君が代」対策委員会
『ひのきみ通信 第226号』(2021年2月20日)
http://hinokimitcb.web.fc2.com/html/21/226.htm#%E4%BA%94%E8%BC%AA


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