2021/6/30

「この道はいつか来た道」憲法9条を失う道?  ]平和
 ◆ 今からでも遅くない (東京新聞【本音のコラム】)
鎌田 慧(かまたさとし・ルポライター)

 小田急線・下北沢駅近くに住んでいたのは五十年ほど前だが、昨日、二、三年ぶりに降り立ち、景色が一変しているのに驚嘆した。まるで別の町になっていた。
 「ザ・スズナリ」で別役実の戯曲四編を劇団「燐光群(りんこうぐん)」が坂手洋二の演出で一挙上演するのを観にいったのだが、二度も道を聞くほどに迷い、開演時間に遅れてしまった。

 若い人たちがいっぱい歩いていたのだが、わたしはまるで不条理な迷路を彷徨(さまよ)っているように焦っていた。
 息を切らしてたどり着いた劇場はすでに真っ暗で、係員のちいさな懐中電灯で誘導されながら、穴蔵に墜(お)ちて行くような感覚だった。


 劇作家の坂手洋二が選んで演出した世界は、別役実特有の、日常に紛れ込んでくる不思議や不条理な事件というようなテーマである。
 その中の一編「この道はいつか来た道」は、ホームレスになった男女が、路上で出会い、おなじゴザに坐りこんで話し合うようになる。やがて、同じホスピスから逃げ出してきたもの同士と分かる。

 二十年以上前の作品だが、今またホームレスが増えだしている時代に切実である。
 タイトルは、北原白秋・山田耕筰の「この道」からの引用で、舞台にはその歌が低く流れている。
 しかし「いつか来た道」は、あかしやの白い花が咲いているようなのどかな道ではない。憲法九条を失う道のようなのだ。(ルポライター)

『東京新聞』(2021年6月29日【本音のコラム】)

 ※ 別役実短篇集 「わたしはあなたを待っていました」
   作=別役実 演出=坂手洋二
http://rinkogun.com/Betsuyaku_Tanpen.html



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