2021/9/18

9月9日午後7時NHK「ニュース7」を電波ジャックした菅総理記者会見  ]平和
  =たんぽぽ舎です。【TMM:No4293】【TMM:No4295】「メディア改革」連載第75回=
 ◆ 退任表明から7日目の会見も「お芝居」手柄・自慢で終了
浅野健一(アカデミックジャーナリスト)

 ◆ 最後まで他人事で、サクラ質問に棒読み回答の連続

◎ 日本のテレビは、「選挙の顔」を代えるだけの一政党の党首選びを報じているが、11月までにある総選挙を前にして、特定政党・政治家を宣伝するのは公選法違反ではないかと思う。その原因を作った菅義偉首相(自民党総裁)が首相退陣についてきちんと説明していない。

 菅氏は9月9日午後7時から、NHK「ニュース7」を電波ジャックして、コロナ対策の緊急事態宣言の延長について記者会見を開いた。
 二階俊博自民党幹事長を切る党役員人事に行き詰まり、政権投げ出しを表明(3日)してから7日目の会見だったが、コロナ問題の会見であり、首相退任の会見ではなかった。


 菅氏は3日午後、官邸で玄関ホールでの内閣記者会(永田クラブ)番記者のぶら下がりで約2分間、一方的に発言し、最後に「来週にでも改めて記者会見をしたい」と言い残して、記者の質問を受け付けず逃走していた。

◎ 各紙によると、菅氏の官邸会見は19回目で、ぶら下がり取材を127回受けている。首相として最後の会見だったが、菅氏になぜ6日半も会見しなかったかを追及する質問はなかった。
 記者会の記者は最後まで安倍晋三・菅政権のマウスピースだった。
 菅氏は、ワクチン接種の進展を前提に、行動制限を緩和していく方針を示したが、また、これで民衆の危機意識が緩むと思う。
 最後まで無責任な男だ。

 菅氏は退任の理由について、「コロナ対策に専念するため」と説明したが、コロナを甘く見て、「GO TO」、「五輪強行」などで感染拡大を防げず、コロナ対策に失敗した末の自爆辞任ではないか。
 会見の感想は10日、フェイスブックに投稿した。
https://www.facebook.com/profile.php?id=100022241222173

 官邸HPでは、「菅総理は新型コロナウイルス感染症に関する記者会見を行いました」と題して、動画と文字記録を載せている。
 首相退任表明の会見ではないのだ。
https://www.kantei.go.jp/

 ◆ コロナ禍で「道筋をつけた」「行動制限緩和」と無責任発言

◎ 会見はいつものように元キャリア外交官、小野日子内閣広報官の司会で始まった。
 菅氏は、「コロナとの闘いに明け暮れた日々だった。1年はあまりにも短い時間だった、安心と希望を持てる未来のために道筋を示すことができた」と語った。会見では相変わらず、視線が定まらない。
 「コロナという見えない敵との闘いは、暗いトンネルの中を一歩一歩手探りで進んでいくことにも似たものだった。救急車の音を聞けば、必要な医療が届いているのか、飲食店や観光業の皆さんのなりわいや暮らしは大丈夫か、そうした不安を何度も感じてきた」

 菅氏の仕事先の永田町、住居のある赤坂付近には、庶民の住宅はほとんどない。自宅に放置された患者のために救急車の音を聞いたとは思えない
 7月30日の会見で、他の先進国より死者が少ないと発言した冷酷首相の嘘くさい冒頭発言に憤りを感じた。

◎ 菅氏の言の後、記者の質問に移り、最初に記者会の幹事社、日本テレビの山概[ヤが指名され、「宣言が延長され、医療の逼迫も改善されない中、総理は退陣する。この1年のコロナ対策のどこに問題があったのか、反省すべき点について自らの考えを具体的に説明してほしい」と質問した。

 菅氏は「ワクチンが切り札だ。海外でも、ロックダウンでは感染拡大を阻止できなかったが、ワクチンによって大きく改善された」「できない部分は、病床を確保することだった。コロナは、医師、看護師も通常の3倍ぐらい掛かる。コロナ対策にはなかなか新しい人に来てもらうことは難しい」などと答えた。

◎ コロナ失政を「縦割り行政」や現場の医療関係者のせいにしている。五輪開催で政権浮揚を企んだ自分の責任を棚に上げて、他人事のように語る卑怯な政治家だ。菅氏は、「尾身先生も、ちょっとよろしいですか」と同席した政府分科会の尾身茂会長に振ったが、質問は菅氏に向けられていたので、尾身氏が答えるのは問題だ。小野氏は菅氏に注意すべきだった。

 次に、幹事社の読売新聞、黒見記者が「衆院解散についてどう考えていたのか」と質問した。
 菅氏は「様々なシミュレーションを行ったことは事実だ。内閣支持率が高かった就任当初の解散には、やりたい仕事をするため首相になったので解散よりもそちらを選んだ」と語った。

 菅氏は質問の時に、ずっと下を向いて台本を見ている。回答も官僚が用意した台本の棒読みだった。

◎ 小野氏は「ここからは幹事社以外の方の質問に移る」と述べ、「それでは、秋田魁(さきがけ)日報の加藤さん」と指名した。加藤記者は「秋田魁新報の加藤です」と言って質問した。「シンポ―」に力が入っていた。
 官邸報道室が加藤氏と事前に謀議したサクラ質問なのに、小野氏は新聞社名を間違えた。台本の間違えか、小野氏のミスなのか分からないが、官邸HPの記録では、小野氏の発言は「秋田魁新報」に改ざんされていた。3日のぶら下がりも、何の断りもなく、「コロナ対策にセンニン」も「専念」に書き換えている。歴史の捏造だ。

◎ なぜ、幹事社以外の質疑応答のトップに秋田の記者が指名されるのか、私には理解できない。
 菅氏は「秋田県で生まれ育ったことを誇りに思って、政治の世界に入っている」「ふるさと納税を提案し定着させた」「秋田については洋上風力が大いに期待できる」と原稿を読んだ

 小野氏は「はい、続きまして、それではTBSの後藤さん」と述べ、後藤記者は「総理が最初に力を入れたGO TOをどういう環境になれば再開できるか」と聞いた。

◎ 後藤氏は、官邸のお気に入りのようで、ほぼ毎回指名される。彼はテレビでも無意味なことをしゃべっているが、この質問はアウトだ。
 人民の命より権力維持を優先し、「GO TO」と「五輪」を強行したことで、感染爆発を招いたのだ。
 ところが、菅氏は「ワクチンや検査を受けた方については旅行を自粛する要請の対象には含めないよう検討する。GO TOトラベルも当然課題に上ってくる。まずは県内だけのやつもある」と答えた。

 小野氏は続いて「ストレートタイムズ(シンガポールの英字紙)のサムさん」と指名。同紙の記者は「より早い段階でコロナ政策が強化されていれば、宣言の発令を繰り返し、延長する必要がなくなり、内閣支持率の低迷、総理の退任も避けられたのではないか」と聞いた。
 菅氏は「専門家の意見を聞きながら、飲食に対応して、世界と違ってピンポイントで行ってきた」などと答えた。菅氏が途中、質問内容を聞き直す場面があったが、これは完全に芝居だ。

◎ 小野氏は「はい、それでは、NHKの長内さんです」と指名した。長内記者もお気に入りだ。
 「それでは、日本経済新聞、重田さん、どうぞ」と指名。重田氏も常連で、「感染症対策の行政組織のどこに課題があり、どういう組織の在り方が望ましいと考えるか」と聞いた。
 菅氏は「国と自治体との壁もある。保健所の在り方も様々な問題があった。コロナのような状況では一本で様々なことに対応することができる組織が必要」と語った。
 「自治体」が今回もジエイタイに聞こえた。すべて、他人事のように言うが、「コロナに専念する」というなら、行政の一本化などを今すぐやるべきだ。

◎ 続いて、小野氏は「それでは、ドワンゴの七尾さん、どうぞ」と指名。ニコニコの七尾氏は「連日お疲れ様です。総理、様々な改革を実現されたことは今後の日本にとって非常に大きなことだった」と述べた。安倍氏に近い記者だ。七尾氏は毎回、「お疲れ様」と言うのだが、違和感がある。
 七尾氏は「菅政権でも、北朝鮮による拉致問題が未解決のままだ。一旦総理は退任されるが、今後、この拉致問題にどう向き合うのか」と聞いた。「一旦退任する」とは、第二次菅政権があるということか。

 菅氏は「拉致問題に当選1回の時から携わっている。日本に1年間に15回も出入国したマンヨンボンギョウ(万景峰号、マンギョンボンゴーが正確な名前)、あれの入港禁止の法案を作った一人だ。総務相のときはNHKに対して短波の国際放送で拉致問題について重点放送命令放を出した。退陣後も、積極的に解決に向けて取り組んでいきたい」と答えた。

◎ 菅氏の特高体質が出た発言だ。万景峰号の入港禁止で、朝鮮学校生を含め、在日朝鮮人の祖国との往来が困難になっている。
 菅氏は、日本が2002年の平壌宣言で約束した朝鮮民主主義人民共和国との侵略・占領の過去の清算、国交正常化に向けた努力を一切していない。「拉致」だけが未解決なのではない。

◎ 「続きまして、共同通信、吉浦さん、どうぞ」と小野氏が氏名。吉浦記者は「衆院選には、これまでと同様、神奈川2区から出馬するのか」と聞いた。菅氏は「その予定だ」と答えた。
 菅氏が全面支援し完敗した横浜市長戦での神奈川2区では、立民候補に2万票も差を付けられている。自民神奈川県連幹事長が「総裁選で菅氏の運動はしない」と2日に表明していた。菅氏自身の落選の危機も退陣の要因だ。

 「ニッポン放送のハタナカさん」が指名され、畑中記者は「莫大なエネルギーというよりも、菅降ろしのエネルギーに気圧(けお)されたのではないか。解散のチャンスは何度もあった。悔恨の念はないか」と質問。畑中氏がスタンドマイク前で立ったままでいると、小野氏が「お席にお戻りください」と注意した。立ったまま答弁を聞いてもいいではないか。

 菅氏は「毎日のこの公務をこなしながら総裁選の準備をするのは、私は派閥がないので、自らいろいろな行動をしなきゃならない、そういうことにも直面した。同時に、12日の宣言解除は難しいと覚悟するにつれて、コロナ対策に専念すべきと判断した」と答えた。
 派閥がないから総裁選に出られないというなら、1年前も同じはずだ。情けない。

◎ 小野氏は「それでは、産経新聞、杉本さん、どうぞ」と指名。杉本氏は「東京電力の福島第一原発の処理水の海洋放出、高齢者の窓口負担の引上げ、日本学術会議の会員任命拒否、コロナ対策でも経済と社会の両立などと、支持率を減らしかねない政策に取り組んできた理由、思いを聞かせてほしい」と質問した。悪質なサクラ質問だ。

 菅氏は「ALPS処理水の問題は6年間をかけて方向性はほぼ出ていた。福島の街づくりを考えたときに決断しなければならない。医療費の問題は社会保障制度の継続のため。私の性格からして必要なものは先送りはやめようという中で行った。自衛隊関係の土地の問題もやった」と答えた。
 核汚染水の海洋放出決定を政権の成果と自慢している。「必要なものは先送りしない」というが、安倍政権は2015年8月、福島県漁連に対し「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」と書面で回答している。

 ◆ キシャクラブ廃止以外に国際標準の会見は実現しない

◎ ここで、小野氏は「大変恐縮ですが あと二問にする」と一方的に告知。
 「毎日新聞 小山さん」と指名。小山記者は「党役員人事の行き詰まりが退任の原因ではないか」と質問した。
 菅氏は「12日の宣言延長で、感染拡大を放置できないと思った」と答えた。これまで、自身の権力維持を最優先にコロナ対応を誤った反省がない。
 何度も宣言延長を決めながら、今回だけを退陣の理由とするのは全く理解できない。

◎ 小野氏は「それでは、ジャパンフォワードのアリエルさん、こちらで最後とさせていただく」と述べた。
 アリエル記者が「水際対策」について質問。
 菅氏は「ワクチン接種の進展と諸外国の動向、さらに国内外の感染状況などを踏まえて、社会経済活動の回復に向けて適切に検討を進める」と答えた。
 小野氏は「それでは、挙手している方は、恐縮ですが、後ほど1問、メールでお送りください。後日書面にて回答する。それでは、以上で本日の記者会見を終了する。協力ありがとうございました」と告げて会見を終了した。

◎ 幹事社を含め13人が指名されたが、菅氏の回答はすべて台本の朗読だった。全員が事前に質問内容を官邸側に提出しているのだ。

 多数の記者が挙手する中、会見は1時間で打ち切られたが、各紙の「首相動静」によると、<午後7時1分、記者会見。8時41分、東京・赤坂の衆院議員宿舎>とある。次の日程がないのに、この重要な会見を1時間で強制終了した。

◎ 官邸での首相・官房長官の会見の主催者は内閣記者会だ。
 主催者ではない小野広報官が首相の記者会見、ぶら下がりの司会を務め、会見全体を仕切るのが間違っている。
 また、官邸側は昨年4月、コロナ禍を理由に会見場を変更し、会見参加者を29人(記者会幹事社19社から各1人、記者会非常勤幹事社・専門紙・外国メディア・ネットメディア・フリーから抽選で10人)に制限している。

◎ 元東京新聞記者の半田滋氏は9日、「憲法9条−世界へ未来へ連絡会」(9条連)の講演会で、「キシャクラブ制度についてどう思うか」という私の質問に、「首相の会見を見たら、多くの人が、記者は何をしているかと思うだろう。なぜ、あんなにひどい会見になるのかというと、ジャーナリストとして仕事をする気がない人たちがやっているからだ。取材相手に取り込まれてしまうことをよしとしない記者が必要だ」と答えた。

 ◆ 立民、共産、社民、れいわの四党政策合意に「記者クラブの廃止・広報センター設置」を追加すべき

◎ 詳しくは「紙の爆弾」10月号の拙稿を読んでほしいが、キシャクラブ制度がある限り、国際標準の記者会見は実現しない
 現在、官邸に参加登録しているフリー記者は11人(うち1人はカメラ)いるが、すべて鳩山政権で登録された人たちで、菅・安倍政権で新たに登録されたフリーは一人もいない。

◎ 自民党総裁選で誰が総裁・首相に選ばれても、衆議院議員の任期は10月21日に切れる。新首相は3週間の任期しかない。
 本格首相を決めるのは、11月までに予定される衆院選挙の後だ。
 立民、共産、社民、れいわの四党は、政策合意に、「記者クラブの廃止・広報センター設置」を追加して、人民の知る権利にこたえるジャーナリズムを創成しよう。



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