2021/9/24

国の体面や企業の利益のためでもない、大人の都合で子どもが犠牲にならないオリパラ観戦のあり方を  ]Vこども危機
  《子どもと教科書全国ネット21ニュースから》
 ◆ 子どものいのちと健康を守れ!コロナ禍の教育と子どもたち
   〜オリパラ学校連携観戦および中学生のボランティアの中止を求める市民と東京都教職員組合のとりくみ
大友育子(おおともいくこ・東京都教職員組合)

 ◆ コロナ禍の中、緊急事態宣言下でのオリパラ観戦

 4度目の緊急事態宣言下にも関わらず、新型コロナウイルス感染症は、全く収束の兆しを見せません。五輪組織委員会は、オリンピックの無観客を決定し、東京都教育委員会も、7月9日にオリンピックでの児童生徒の観戦は中止、また7月16日に、生徒のオリパラボランティアの中止を決定しました。
 しかし、これはあまりにも遅い判断であり、これまで再三にわたる多くの市民・労働組合からのオリパラ観戦中止の要請・申し入れがあったことを忘れてはいけないでしょう。


 五輪組織委員会が決め、都がすすめてきた「学校連携観戦」は、埼玉・神奈川などの近隣県では、6月の時点で、多くの自治体が中止を独自決定し、教職員や保護者、専門家、地域からも中止を求める声が多数上がっているにもかかわらず、都は五輪組織委員会が無観客を決定するまで強行しようとしていました。
 感染症に加え、8月の猛烈な暑さで熱中症の危険もある中、この都の姿勢に、多くの市民や現場の教職員は強い憤りを覚え、全都で反対運動が起こりました。


 ◆ 再三にわたる中止の申し入れ

 都教組はコロナ禍以前から、オリパラ観戦の実施自体に懸念を表明してきました。
 オリパラ観戦は当初、混雑を懸念して最寄り駅での降車を不可としたため、一つ前の駅から徒歩で会場に向かうことや、水の持ち込みができないことなどの、子どもの熱中症対策や安全への配慮に問題がありました。

 現場教職員からも、「選択の余地もなく、強制動員では」「学校課程への影響や、教職員の服務について全く説明もない」などの声が上がりました。
 都教組では、
   子どもたちの安全対策や
   学校の教育課程編成権の保障、
   また、観戦において子どもに「日の丸」の旗を振らせることや
   「君が代」の歌唱を強制させることのないように
 求める要望書を提出してきました。

 オリパラ観戦に対する教育的な意義を、すべて否定するものではありませんが、教育課程に位置付けられるとすれば、これまでも各校の自主性や地域性、子どもの実態に基づいて教育を実施してきた現場の教職員がしっかりと議論をすることが必要です。
 2020年・コロナ禍による3月からの全国一斉休校を経て、この間、都教組は数回に及ぶ「コロナ対策を求める都教委への申し入れ」の中で、引率しての中学生ボランティアも含めた学校観戦の中止を求めました。
 「さすがに中止では」と誰もが思っていた矢先、新年度の学校行事計画に五輪学校観戦が入っていることが分かり、4月末に都教委からオリパラ観戦の会場への実地踏査命令が各学校に出され、拡大しつつある感染状況の中での開催がいまだに予定されていることに、現場は驚愕しました。
 何より子どもと教職員のいのちと健康が危険にさらされ・学校・教職員の負担と責任がさらに増すことは容易に想像できました。


 ◆ 保護者、学校関係者、専門家、都民からも中止の声高まる

 感染症対策が学校に丸投げされている実態も明らかになり、子どもたちのオリパラ観戦がそのままであることを知った市民・保護者からも、学校や報道各社に不安の声が寄せられました。
 都の医師会からも中止の声があがり、ある地区の女性団体が始めた中止を求めるネット署名は短期間に3万筆を超えました。
 ある地区では、校長会が地教委に中止を申し入れたそうです。
 東京の労働組合や有志団体からなる東京教育連絡会も、都教委に対して、都が地教委に先立って中止の決定をするように要請しました。
 都教組の各支部・地区協からも、地域の市民団体や労働細合などと共同した首長や地教委などへの中止要請がさらに大きくひろがりました。
 都教委からは、「地教委と相談した上で学校から中止の意向があれば尊重する」という回答を得ました。

 6月下旬、すでに早くから中止を決めていた檜原村やほとんどの島しょ地域を除けば、まず初めに文京区、目黒区がオリ・パラ両方の学校連携観戦の中止を決定しました。
 それを皮切りに、初めは「都の判断による」「中止も視野に入れる」等の回答にとどまっていた各自治体の首長や地教委からも、中止が相次いで決定されました。
 一方で、「一生に一度の機会、何としても子どもたちに観戦させたい」「都が決めること」としている地区も根強くあります。

 都は正式にオリンピックの学校連携観戦を中止すると決定したあとも、パラリンピックに関しては感染者数によって判断するとしています。そして、新宿・江東・渋谷・八王子・三宅島も、パラリンピックに関しては保留するとし、墨田区は教育長が小5以上の子どもたちにパラリンピック観戦を見せると保護者に通知を出しました(8月8日現在)。
 国段階の労働組合や民主団体からも中止を求める声があがり、国会でもこの問題を立憲野党がとりあげ、政府に中止を要求しました。
 当初、「無観客でも学校観戦は組織委員会が決めること」としていた文科大臣も、「無観客ではやるわけにはいかない」と変わってきました。


 ◆ トップダウンの教育施策はやめ、学校現場の声を尊重しよう

 各学校現場でも、校長への要請がひろがり、校長から「中止を求める教職員と同じ意見だ」という反応を得た職場もありました。
 変異株がひろがり、子どもの感染拡大や重症化が懸念されている中、子どもとともに、教職員への感染も心配です。
 学校行事ではざまざまな突飛なことがいつ起きるかわかりません。引率者が20人に1人などでは到底足りるはずがなく、特別な支援を必要とする子どもがいる場合は尚更です。
 学校長が、何よりも子どもと教職員のいのちと健康を第一に考えることは当然のことです。

 ある教職員は、オリパラ学校連携観戦の「子どもが持ち込める飲料水は750mlまで。会場に入るまでに原則『試飲』すること」とされた実施要項を見て、目を疑いました。
 「子どもをテロ対象としているみたいだ。こんな尋常でない対策を押しつけてまで子どもに見せるのはなぜだ」と話していました。
 観戦が中止になったと聞いたとき、子どもたちは「残念だけど感染が怖いから仕方ない」「行事は中止や延期をしているのに、五輪はなぜ中止にならないの」と率直な声が聞かれました。
 一番かわいそうなのは、政府の無策によって拡大したコロナ禍に振り回されている子どもたちなのです。


 ◆ スポーツも教育も、国のためのものではない。「だれのためのものか」を考えて

 スポーツが子どもたちの情操に与える影響は否定しません。
 しかし、いのちの危険にさらしてまで動員することは、けして子どもたちのためとは言えないでしょう。子どもたちが、大人の都合によって犠牲になることも、利用されることも絶対にあってはなりません

 都内の学校には、昨年の12月にいきなり「医療現場の方へ感謝の手紙を書こう」と都から通知が下りてきて、小学五年生から中学3年生に至るまでほぼ全員が書かされた地域や学校もありました。
 休校明けからの遅れを取り戻すために、毎日長時間の授業に追われていた当時の子どもたちにとって、やっとお楽しみ会などで楽しもうとしていた学期末の、都の一方的な通知に、多くの教職員だけでなく子どもも疑問を感じていたと聞きました。

 オリパラに関しても、選手への激励の手紙やメッセージ動画を作って送ろうといったとりくみが行われ、学校連携観戦が中止になっても、学校でのサテライト観戦や夏休みの課題として必ずオリパラに関する課題提出を子どもに課している学校もあります。
 この間の国や都の姿勢について、一方的な感謝や感動を子どもに押し付けるのではない、ましてや国の体面や企業の利益のためでもない「教育」や「スポーツ」の在り方について、考えさせられました。
 少なくとも、教育が子どもたちのもの、学校のものであるために、私たち教職員は、これからも声をあげ続けていかなければいけません。

『子どもと教科書全国ネット21ニュース 89号』(2021.8)


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