2021/9/26

根津公子の都教委傍聴記(2021/09/24)  Y暴走する都教委
 ◆ 英語スピーキングテスト事業は、都教委をアピールするためか? (レイバーネット日本)

 公開議題議案が@「杉並区学校教育職員の教育管理職(副校長)任用審査に係る事務の杉並区の議案提出依頼について」、
 報告事項がA「都中学校英語スピーキングテスト事業について」 B「来年度都立高校入学者選抜実施要綱・同細目について」 C「学校における新型コロナウイルス感染症対策の状況について」 D「第11期都生涯学習審議会建議(都における今後の青少年教育振興の在り方)について」ほか。
 非公開議題では、「元都公立学校教員の退職手当支給制限処分について」という、いったい何、という議題があがっていた。

 A「都中学校英語スピーキングテスト事業について」

 昨年度は公立中学校3年生600人を対象にして試験的に行ったスピーキングテスト。これを今年度は3年生全員8万人を対象に9月25日から行い、来年度からは翌年の高校入学者選抜に使うという。


 都教委と事業者(ベネッセコーポレーション)が、都教委の監修のもと問題を作成する。入学者選抜では、これまでは1000点満点だったところに、スピーキングテスト20点を加算し、1020点満点とする(「学力検査の得点700点+調査書点300点+スピーキングテスト20点」)。
 日常の授業でスピーキングの力をつけることは好ましいことと思うが、機器を使うことでのトラブルやそこでの子どもの不安を考えると、スピーキングテストを入学者選抜に使うことは止めるのがいい。スピーキングテスト事業は東京が初めてという。都教委をアピールするためか、と疑りたくなる。

 ところで、スピーキングテスト事業でベネッセに流れるお金はいかほどか。18年には、グローバル人材育成を掲げ、子どもたちの英語力を高めるために体験型英語学習施設TOKYO GLOBAL GATEWAYを開設した。ここには学研・市進・博報堂などが事業者として入った。
 こうした巨額な金を教育産業につぎ込むのをやめて、そのお金を文科省に先駆けて30人学級、25人学級実施に回したら、誰もが喜ぶことは間違いない。毎日が「過労死」ラインぎりぎりの超過勤務の教員の負担が軽減され、子どもたちには先生に話を聞いてもらえる時間ができる。税金の使い方をまちがえてはいけない。

 B「来年度都立高校入学者選抜実施要綱・同細目について」

 大きな変化は、従来の「男女別定員」から段階的に「男女合同定員」に変えること。「男女別定員を採っているのは東京だけ」と都教委。一気に「男女合同定員」にするのは中学校の進路指導に与える影響が大きいことから、段階的に移行する。
 来春の入学者選抜では、対象校全校(109校)で10%分を「合同定員」とし、その結果の分析を踏まえて次は20%を「合同定員」、100%「合同定員」としていくとのこと。私は知らなかったが、すでに今春の入学者選抜で42校が10%「合同定員」を実施したという。

 これまで普通科は、女子は男子よりも10点ほど高得点でないと合格ラインに乗らないという不条理があった。しかし、「男女別定員」でよかったこともあった。それは中学校と同じように男女同数のクラス編成ができた点。「合同定員」になると、それが崩れる。都教委の計算では、移行の段階で男子の合格者が600人減少するという。どう捉えたらいいのか…、思案中。

 D「第11期都生涯学習審議会建議(都における今後の青少年教育振興の在り方)について」
 10人の委員で2年間12回の審議会を重ねて、出されたという「建議」。建議のポイントは4点、
 「ア.青少年教育が持つ固有の役割を確認し、イ.青年期から成人期への移行の困難さの克服を目指し、ウ.全ての青少年が将来の担い手として成長するための エ.育成・支援方策の考え方を示す」といい、エでは「自己決定する力を養うことを目指した支援・援助」という。

 「自己決定する力」を学校教育が育てず、押しつぶしている現実には一言も触れずに、また、非正規・低賃金雇用で安心して生きることもままならない現実を指摘し改善の道筋を示すことなく、「将来の担い手として成長」云々という。有識者のことば遊び、か。こんな建議を都教委はどう活用し、青少年の支援につなげるというのか。

 @「杉並区学校教育職員の教育管理職(副校長)任用審査に係る事務の杉並区の議案提出依頼について」

 杉並区には、山田宏区長の時代に区がつくった「杉並師範館」で育て独自に採用した小学校教員(「杉並区学校教育職員」という。2007年から採用を始めたが、2011年に中止)が66名いる。2015年から主任教諭選考、2017年度からは教育管理職選考を杉並区から都が依頼され実施してきた。今回は副校長の任用審査の事務委託を依頼され、都が受けたいとの提案で、了承された。11月の都議会に議案として提出される。

 この山田区長は深慮したとは思えない「杉並区学校教育職員」採用をしただけでなく、教育への介入もすさまじかった。2001年の教科書採択の際に扶桑社を支持しなかった教育長をやめさせ、区長の側近を教育長にして2005年、2009年の教科書採択では扶桑社歴史教科書採択をやってのけたのだ。

『レイバーネット日本』(2021-09-25)
http://www.labornetjp.org/news/2021/0924nezu


 ※ [管理人RKのコメント]

 この日の定例会で、「杉並師範館」の旗振り役の一人だった遠藤教育委員が、反省の気持ちも込めて「教育に大事なのは継続性である」と語っていた。「杉並師範館」はまさしく、偏った教育観に染まった政治家の「思いつき」で強引に始まってあっけなく頓挫してしまった事例だ。上に立つものの思いつきから、善意の66人の若者たちが人生を振り回され被害を被ることになってしまった。。

 この日の定例会では同じように、将来の「継続性」に首を傾げる議題がすんなり通ってしまったが、これで良かったのだろうか。

 A都立高入試選抜に採用する「都中学校英語スピーキングテスト事業」
 誰もが、つい先頃の「大学入試改革」の「英語民間試験の活用」の導入失敗の事例を連想するのではないだろうか。
 文科省は1年に及ぶ「有識者会議」の答申を受けて、導入断念の最終決断を下したのだのだが、都教委の関係者は、断念の経緯と理由をちゃんと学んだのだろうか。
 「功を焦った」教育再生実行会議&下村文科大臣改革路線は、現場のリアリズムの前に破綻したのだ。反省点として「受験生や教育現場を第一に考えた姿勢や進め方」の欠如があげられた。
 都立高入試へのスピーキングテスト導入も、全く同じ構図に見える。現場の声を聞けば、既に懸念や不安、疑問や問題点が山のように噴出している。「受験生や教育現場を第一に考え」たら、こんなプランは実行されるはずがない。企画立案者は、一見気の利いた「改革」を具体化するに当たって、ていねいに現場の声に耳を傾けるどころか、現場に有無を言わせず上の決定に黙って従わせることが立派な仕事ぶりだとのぼせ上がった了見にとらわれてしまっているように見える。
 すぐに頓挫してしまう「入試改革」なら、迷惑を被るのは実験台になるこれから数年間の受験生達である。

 B「男女合同定員」にいきなり舵を切ったことは、本当に良かったのか。
 近来のジェンダー平等や多様性尊重の流れの中で、都立高入試における女子の不利が話題になって、「男女合同定員」を求める世論が急に高まってきた。その世論を背景に都教委にしては珍しく素早く対応して「男女合同定員」への移行を決めた。
 だが学校における「男女平等」とは、成績の数字上の「平等」だけなのだろうか。学校で学ぶことは勉強はもちろんだが、学校行事や部活動・生徒会活動などで身につける社会性や人間関係形成のノウハウなど、数値化された「成績」だけでは計れないことがたくさんある。それら含めて学校は「全人教育」の場である。そしてそれら全人的資質・能力は男女同数の環境の中でこそ一番「自然」に身についていくことではないか。
 「男女別定員」を止めた大阪では、男女比のアンバランスが生じ始めているというが、東京でも早晩そうなるのは目に見えている。そうなった時に学校が今よりも「男女平等」な雰囲気が広まり、ジェンダー平等の意識が高まっていくかどうか、大いに疑問である。
 この件も、現場の声を聞いてみれば、賛成論ばかりではないはずだ。教育の本質、平等の理念に関わり議論が分かれるかなり大きな問題であって、いきなり一部「意識が高い系」の世論に迎合して現状をいじることには首を傾げざるを得ない。
 この決定も、将来に向けて継続性がある制度改革とは思えない。現場の声を無視して「功を焦った」都教委の暴走が続いている。



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