2021/10/2

国内の障害者にワクチン優先接種しないのに、なにがパラリンピックだ!  ]平和
 ◆ 東京・障害者施設 オリパラ中に2度のクラスター
   〜優先されないワクチン接種
(週刊新社会)
介護福祉士 白崎朝子(ライター)

 東京オリ・パラ開幕直後に2度のクラスターに見舞われた東京都内の障害者支援施設(以下、施設A)がある。3月から毎週PCR検査を定期実施していたにも関わらず…。いまだ収束しないクラスターとたたかう施設Aの管理者Sさんを取材した。

 ◆ ワクチン接種がパラ開催日

 クラスター渦中の7月末。Sさんから、入所者のワクチン接種状況を聴き驚愕した。高齢の障害者も接種されてなかった
 施設Aでは昨春からクラスター対応マニュアルを作成し感染防護物資も備蓄。3月からはPCR検査も職員全員に毎週実施し、7月中旬まで、ずっと全員陰性だった。
 だが、オリンピック開幕直前に職員の1人が陽性となり、開幕後に感染拡大。入所者17入が感染し、死者が3入出た。


 敷地内に使用していない建物があり、感染者はすぐ隔離できた。
 だが介護には適さない建物に加え、真夏に防護服や医療用マスクを装着しての介護は、息苦しさと汗で過酷を極めた。同居する幼児など、家族への二次感染の可能性もあり、職員たちの緊張と心身の疲弊は大変なものだった。
 入院できたのは約半数。「積極的な治療を望むならば搬送先はないです。待機者がたくさんいるから、5分で判断してください」と救急隊員に言われた。
 その時の入所者は知的障害と認知症があった70代。熱痙攣があり酸素飽和濃度は88だった(93以下は危険域)。
 施設Aの職員は、「医療崩壊」の実態に直面。入院できても積極的な治療は受けられない病院ばかりで、そのことに”同意”しなければ入院できなかった。
 「それでも施設にいるよりは、100倍もいい」と語る職員もいた。

 8月中旬、私は、3日間で3人もの訃報を聞いた。オリンピック選手はワクチンの優先接種だけでなく、毎日2回もPCR検査を受けていた。
 「障害者はワクチンの優先接種がされない。支援者の私もパラリンピックが終わったあとにしかワクチンの抗体ができない」「医療現場で働いているのに、昨年から1回もPCR検査を受けられない」というワクチン接種と検査体制に関する声を多数聞いていた。
 熱心に検査をしていた高齢者デイサービスにクラスターが発生したと聴いた矢先、やはり毎週検査していた施設Aにもクラスターが発生した。私は死者の冥福を祈るしかなす術がなかった。


 ◆ ワクチン難民と自治体格差

 「障害者も高齢者と同時に優先接種されるべきです!」と憤る支援者の声を複数聞いた。
 施設Aの入所者のうち高齢者は約4分の1。同じ自治体の高齢者の入所施設は、入所者も職員もオリンピック前にワクチン接種が済んでいた。
 だが施設Aが1回目のワクチン接種できたのは、近隣の高齢者施設より2カ月以上後だった。クラスターで亡くなったのは全員、高齢の障害者だった。

 国がこれほどワクチン接種を推進しながら、障害者には優先接種する体制を構築しないのは明らかな障害者差別だ。
 自治体の裁量で優先接種したところもあるが、自治体格差が激しい。
 神奈川県B市の障害者支接施設では入所者、職員(実習生も含む)の接種が早かった。
 だが同県C市にある精神障害者のグループホームでは、入所者も支援者も接種の予約が難航したという。

 国は高齢者を優先接種の対象にしたが、障害ある高齢者が接種会場にいくのは難しい。
 制度的には対象になっていても、連日のように高齢・基礎疾患のある入所者の定期・急変時の通院があるため、対象者全員を接種会場に連れて行く日時の確保が難しい。
 優先接種されるべき基礎疾患のある高齢障害者に接種するには、接種会場に行かずとも施設内で早期に接種が行われる手立てが必要だ。

 だが今年4月からワクチン接種について、何度も障害福祉課に問い合わせたが、「まだ協議中」と言われ続け、6月末にやっと、「嘱託医と調整して連絶ください」と言われた。
 月に2回しかこない嘱託医の問診や、家族の同意書もとらなければならず、連休や盆休みと、嘱託医との調整は難航。それら事前準備がなくても7月末にしかできなかったという。

 「基礎疾患がある高齢の入所者には、慎重な問診が必要ですが、あくまで施設での接種時期は、高齢者がいようがいまいが同じで、むしろ『高齢の人以外の障害者も打っていいよ』という対応。自治体の調整があまりにも遅かったのです」とSさんは憤る。

 また優先接種のクーポン券を貰えても、すぐ打てるわけではない。集団生活をしている高齢の障害者が会場に行くには、その人が住む施設がクラスターに発展するリスクや、違う環境でパニックになる可能性がある人への職員配置も必要だ。
 だが人手不足で安全確保のための人員配置は厳しい。それら複合的な理由で高齢入所者二十数人の接種すら困難だった。
 「国内の障害者、それも高齢障害者にすらワクチン優先接種しないのに、なにがパラリンピックだ!」と、私の怒りは爆発した。


 ◆ パラ観戦強行と第2のクラスター
   職員の奮闘功を奏す


 クラスターに苦しむ現場を踏みにじるかのように、パラリンピックへの学校連携観戦が強行され、私は観戦中止の抗議活動に奔走した。
 三多摩地区では私の知る支援者たちが障害者運動を担う当事者や家族と抗議活動をしていた。
 千葉県柏市で妊婦の救急搬送が間に合わず赤ちゃんが死亡する事件があり、熊谷知事は小児科医たちの反対を押し切り観戦を強行。しかし引率した教員が感染していたことが後に判明し、8月30日午後、観戦は中止された。
 観戦を強行した自治体は、新宿区、渋谷区、杉並区、八王子市等。杉並区では、保健所が機能せず、職場で療養していた男性が死亡した。

 一方、実態調査ができないくらい逼迫した保健所から斡旋されたDMAT(災害派遣医療チーム)のF医師は、施設Aに酸素濃縮器を導入し、施設の職員が看取る体制も構築しでクラスターを収束するために活動した。
 幸い施設内での死者はでず、オリンピック閉幕後に、クラスターは一旦は収束に向かった。
 だがパラリンピック開幕後の8月26日〜31日にかけ、新たに12人の陽性者が判明。第2のクラスターだった(ただ24日にワクチン接種をした効果か、無症状か軽症で済んでいる)。
 休む間もなく次のクラスターに突入したが、「一番キツかったとき、F医師から、『初動対応も良かったし、クオリティが高い』と言われモチベーションがあがって頑張れました!」というSさん。
 「職員さんが頑張って、入所者さんたちの尊厳を守り、見送ることができたと思います」という最高のねぎらいの言葉をF医師からもらい、DMATの支援を受けてクラスター収束のために尽力している。


 ◆ 社会的検査の徹底を

 7月26日は相模原障害者殺傷事件から5年目だったが、1回目のクラスターが発生しはじめた施設Aでは、黙祷すらできなかったという。
 昨春、植松聖被告の死刑が確定。「そのいのちで、罪を償え」と命じた”国家権力”側は、自分たちの無策による多数のコロナ感染者の死に対して誰も責任を取らないまま、総裁選に明け暮れている。

 国は、「ワクチンパスポート」と言っているが、私はワクチン接種より、ずっと蔑ろにされてきた社会的検査を実施すべきと思う。
 いまだPCR検査には高額な費用がかかる。今のまま衆院選に突入すれば、安倍退陣のときと同様に感染対策は後回しにされ、いのちに寄り添う現場におけるクラスターは続くだろう。
 昨年からずっと、介護現場の苛酷な実態を国会議員や自治体議員に伝えている。その甲斐あって厚労省や自治体に働きかけてくれる議員もいる。
 いのちに対峙する仲間たちの叫びでもって、いのちを蹂躙する政治に終止符を打ちたい

『週刊新社会』(2021年9月28日)


※投稿されたコメントは管理人の承認後反映されます。

コメントを書く

名前
メールアドレス
コメント本文(1000文字まで)
URL




teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ