2022/5/14

観光船事故での、メディアフレンジーの実態が伝わらない日本のメディアの危機は深刻だ。  ]平和

  =たんぽぽ舎です。【TMM:No4476】「メディア改革」連載第97回=
 ◆ 知床観光船事故でまた人権侵害取材
浅野健一(アカデミックジャーナリスト)

◎ テレビは2月24日からウクライナ戦争をほぼ毎日、トップで報じていたが、2カ月経った4月23日、北海道・知床半島沖で観光船が浸水し、乗客乗員26人が安否不明となる事故が起きてからは、2、3番目のニュースになった。
 また、同日、山梨県道志村で行方不明になっている小学1年生(当時)のものとみられる骨が発見され、その後、靴や衣類などが見つかり、連日、報道されている。

 観光船事故では、第1管区海上保安本部(小樽)は5月2日までに発見救助した14人全員の死亡を確認したと発表。犠牲者全員の身元が記者クラブに広報された。残る12人の捜索は今も続いている。


 ◆ 家族の強い匿名要請を無視して実名報道

◎ キシャクラブメディアは全く報じていないが、被害に遭った乗客が9都道府県の13グループだったことから、報道記者が各地の乗客宅や関係者へ暴力的な取材を行い、メディアフレンジー(凶乱)が起きている。

 共同通信の配信記事を見ると、「公表」された犠牲者の氏名を掲載した配信記事に、「遺族が匿名を強く希望しています」「犠牲者の中に、家族が匿名を希望している人がいます」という【編注】が頻繁に付いている。
 昔なら、すぐに乗客名簿が報道されていたが、今は、行方不明者は全員がずっと仮名で、身元が確認された犠牲者に対し、海上保安庁・警察などの行政機関が直近の遺族に「実名報道」について意思確認をしていると思われる。

 ◆ 地元町長が「家族に寄り添う取材を」と要請
◎ 観光船の運航会社の桂田精一社長は4月27日午後、斜里町内のホテルで記者会見した。
 事故後、桂田社長が会見を開くのは初めてだった。乗客の家族への説明会を終えた後の会見は約2時間半に及んだ。

 記者会見に先立ち、国土交通省の現地対策本部長の坂巻健太・大臣官房審議官と地元の斜里町の馬場隆町長は、乗客の家族への取材を抑制するよう強く要請した。
 この記者会見の動画は、朝日新聞のHPにアップされている。動画の開始から6分40秒から11分30秒ごろまでに、二人の発言がある。
https://www.asahi.com/video/articles/ASQ4W4RH4Q4WUTIL01V.html?iref=video_ranking_rank5
 また、TBSのHPにも掲載されている。
https://newsdig.tbs.co.jp/articles//31886?display=1

◎ 坂巻、馬場両氏は並んで登壇し、まず、坂巻氏が「現地対策本部長の坂巻です」と自己紹介し、次のように発言した。
 「ご家族の滞在先、行動先への取材が非常に過熱されている。それに加え、全国各地にある家族のご自宅へもかなり取材が行っており、家族の方々がかなり疲弊しておられる。ぜひ、皆様方のご配慮をお願いしたい」

 続いて、馬場町長が参加した報道関係者に訴えた。
 「亡くなった3歳の加藤七菜子ちゃんのおじいちゃん、おばあちゃんが、見つかってよかったという喜びと同時に、まだそのご両親、息子さんたちがまだ見つかっておらず、今も辛い思いでおられる」
 「聞けば、実家にもどんどん報道の方が寄せているということだった。殺到しているという。加藤さん曰く、全員が揃ったら、その暁には、しっかり皆さんにお話しさせてもらう、だから、今はまだそっとしておいてほしいと、先ほど、事業者の説明の後に話された」
 「毎度、記者会見やぶら下がり取材などで、このようなお願いを繰り返しているが、一番辛いのは亡くなった方、ご家族の方なので、その気持ちに寄り添った取材の仕方を考え、見るだけで、心で感じてそれを記事にしていただきたい。生のコメントを望む気持ちは分かるが、今はまだそんな時ではないのではないか」

 記者たちに要請した。会見参加者は黙って聞いていた。
 私が見た限り、坂巻、馬場両氏のメディアに対する痛切な訴えを報じたテレビ、新聞はない
 両氏の発言は、ブログ「浅野健一のメディア批評」にアップした。
http://blog.livedoor.jp/asano_kenichi/archives/29169292.html 
 2022年05月09日

 ◆ 企業メディアは談合で取材批判を黙殺

◎ 死亡が確認された福島県の男性(28)が取締役を務める企業は4月28日、「遺族は大切な家族を突然失い、悲嘆に暮れており、取材などはくれぐれも控えてほしい」とのお知らせを公表した。
 北海道内に取材拠点のある報道各社計24社は28日、観光船事故の取材について、被害者家族や関係者の心情に配慮し、節度を持って当たることを申し合わせた。この申し合わせは事故から5日後に行われており、遅すぎる。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/675794

◎ 七菜子さんの祖父は4月30日、斜里町ウトロ支所前で記者団に、行方不明者の捜索を求めた後、「なぜ私達をそっとしておいていただけないのでしょうか。みなさんの報道のあり方、モラルに非常に残念です」と強い口調で批判した。
 ・日刊スポーツ
https://news.yahoo.co.jp/articles/739a2f6fafee8c8da0a7e2a26e43f11cde2507fe
 ・東京新聞
https://www.tokyo-np.co.jp/article/174863

 東京新聞と日刊スポーツに、祖父のメディア批判の記事が出たが、テレビ各局と全国紙は全く報道していない。日本ではメディアが報じない事実、問題は社会化しない。
 観光船事故での、メディアフレンジーの実態が伝わらない日本のメディアの危機は深刻だ。


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