2022/5/26

米軍基地からコロナ感染「染みだし」。日米地位協定を見直し、基地内の検疫に国内法を適用すべき  ]平和
  《「子どもと教科書全国ネット21ニュース」から》
 ◆ 米軍のコロナ問題と日米地位協定
明 真南斗(あきらまなと・球新報社東京支社報道グループ記者)

 新型コロナウイルスの感染拡大が始まって以来、沖縄県内で問題となってきたのは米軍基地の存在だ。
 コロナの感染拡大は、フェンス1枚を隔てて別の国の軍隊が駐留している状況のいびつさや普段と異なる形の基地負担、日本の国内法を適用できない日米地位協定の欠陥を改めて浮き彫りにした。

 最初に沖縄の米軍基地内で大規模な感染拡大があったのは2020年7月だ。最終的に米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)とキャンプ・ハンセン(沖縄県金武町などにまたがる)でクラスター(感染者集団)が発生した。
 同時期に五〇〇人の感染が確認されたが、そのうち少なくとも20人余が基地の外に出ていたことも判明。


 7月4日の「独立記念日」に合わせた非公式のパーティーが開催され、米軍関係者が参加していたとの情報も駆け巡った。
 感染が広がった普天間飛行場とキャンプ・ハンセンは海兵隊基地だが、在沖の米陸軍第10地域支援群司令官のセオドア・ホワイト大佐は軍人や民間従業員ら宛てに注意喚起する通知(メモランダム)で、感染拡大の要因について「人事異動に伴う到着者が行動制限に従わなかったことやビーチパーティーなど大人数の集会に関するソーシャルディスタンスの指示に従わなかったことを含む複数の要因の結果」と指摘した。


 ◆ 見えぬ感染

 米軍基地内での感染拡大に関し、まず問題となったのは日本側や地元の保健当局との情報共有だ。
 基地の外で感染者が見つかった場合、地元の保健所が情報を聞き取って濃厚接触者を特定し、県保健医療部にも情報を共有する。
 一方、米軍関係者が感染した場合県は直接、聞き取ることはできず、米海軍病院から情報を受け取ることになっている。

 20年7月以降の感染爆発を受け、県に感染者数は知らされたが、感染対策上、必要な情報として検査の全数などもすぐには得られていなかった。
 各部隊から収集した情報を海軍病院が集約して県に伝えるため、情報の遅れも生じた。
 さらに、県民への情報開示も不十分だった。米軍は当初、感染者の人数さえも非公表にしていたのだ。
 在沖米軍の判断ではなく、基地別の感染者数を公表しないという米国防総省の方針に沿った対応だった。

 この時期・西太平洋を航行していた米海軍の原子力空母「セオドア・ルーズベルト」で集団感染が発生し、約2カ月、アジア太平洋地域ではただちに展開できる空母が事実上、不在となる事態に陥っていた。
 米国防総省としては対外的に米軍の感染状況を知らせないようにしたい考えがあった。

 一方、同じ時期に韓国に駐留する米軍は国防総省の非公表方針が出された後も積極的な情報開示を続けていた。

 発表文には、感染が判明した経緯として検査前に訪れた店舗や検査結果が出るまで隔離されていた場所、陽性確認後に隔離されている場所なども記載されており、感染者数を「複数人」などとしていた在沖米軍と対照的だった。

 沖縄県は感染者数を知らされていたが「米軍からもらった感染者数を県が公表すると情報を得る道筋が閉ざされるかもしれない」という懸念があり、板挟みとなった。
 玉城デニー沖縄県知事が在沖米軍トップのクラーディ四軍調整官(当時)と電話会談し、同意を取り付けて感染者数の公表に踏み切った
 現在は県が米軍に了承を得た上で、毎日、県民に米軍関係者の感染者数を公表している。在日米軍もウェブサイトで各基地の感染状況を更新している。

 米軍との情報共有に関する問題は、新たな変異株が確認ざれた際にも感染対策の障壁として立ちはだかった。
 変異株「オミクロン株」が国内に入ってきたばかりだった21年末、沖縄県内では見つかっていなかった。
 玉城知事は12月17日夕に緊急会見を開き、県内で初めてオミクロン株が確認されたと発表した。感染したのは、米軍基地で働く従業員だった。
 同じ日に同じ基地内で米軍関係者99人の感染も報告された。オミクロン株に感染した基地従業員に渡航歴はなかった。

 基地内でのクラスターがオミクロン株だと確認できれば、移入経路の解明につながって対策に生かすことができるが、米軍はゲノム解析に消極的な姿勢を取った。
 県が解析に協力すると申し出たが、米軍はそれも個人情報保護を理由に断っていた
 後に日本側の働き掛けに応じる形でゲノム解析に応じたが、地域の感染状況について地元自治体が米軍の協力なしに把握できない現実が改めて突き付けられた。
 米軍に情報共有を義務付ける仕組みがない以上、今後も十分な情報共有がなされるかは不透明だ。コロナ以外の新たな感染症が流行した場合にも透明性は課題となる。


 ◆ 管理阻むフェンス

 米軍基地と感染症を巡る問題として、米軍基地を経由して入国する米軍関係者には日本国内の検疫を適用できないという日米地位協定など制度の問題がある。
 日米地位協定や関連の日米合意に基づき、米軍基地内では日本の検疫は免除され、米側の検疫手続きが適用される。兵士のみならず、軍属や家族も対象だ。

 米軍が自ら感染対策の内容を決められるため、日本政府がとっている水際対策と齟齬(そご)が生じる場合がある。
 最初に在沖米軍基地でクラスターが発生した20年夏には、日本政府は入国する全員にPCR検査と2週間の隔離措置を求めていた。
 だが、米軍は基地内を経由して関係者が入ってくる場合、症状がない人には検査を義務付けていなかったことがクラスター発生後に判明。
 韓国やオーストラリアに入る米軍関係者は2度、PCR検査を受けており、対応の差が問題となった。

 水際対策のずれが明らかになった後、日米両政府は基地内からの入国時でも全ての米軍関係者がPCR検査を実施するよう調整した。現在は日本がとっている水際対策と整合性を取る形で対策を講じると説明している。
 ところが、21年末、再び米軍基地内で感染が広がった際、米軍が関係者向けの水際対策を緩和していたことが発覚した。
 在日米軍はワクチン接種が進んだ20年9月以降、2回接種済みの人員には出国時の検査義務付けをやめていたのだ。
 入国後の移動制限も14日間から10日間に短くし、期間中も米軍施設内で動き回ることができ「隔離」とはほど遠い状況だった。

 日本政府は21年12月、オミクロン株の水際対策で外国人の新規入国を禁止していた。最短3日に短縮していた日本人帰国者らの待機期間も一律で14日に強化したが、在日米軍の対策緩和は続いていた。
 さらに、日本に入る米軍関係者への検査は緩和する一方で、米疾病対策センター(CDC)が米本国に入る人に検査による陰性証明を義務付けるという片務的な水際の防疫対応にもなっていた。


 ◆ 全国へ波及

 県はもともと、日米地位協定を見直し、基地内の検疫に国内法を適用すべきだと指摘してきた。
 17年につくった地位協定の改定に向けた要請書でも「検疫に関して国内法を適用する旨を明記すること」と盛り込んでいる。

 コロナの感染拡大が始まった20年以降、県や県議会では改めて見直しを求める立場を強めている。変異株を含めた基地からの感染移入の危険性も訴えてきた。
 だが、基地からの「染みだし」が全国的に注目を集めたのは、沖縄県以外の基地所在地でも感染が大規模に広がった21年末になってからだった。
 日本政府は日米地位協定の改定には消極的で、その都度、運用を見直していく方針を示している。

 ただ、コロナ感染拡大を巡る一連の経緯からは日本の検疫を適用できない状態では、感染対策を求めて強化させ、一定の時間がたつと米軍が対策を緩和するという「いたちごっこ」に陥ってることが浮き彫りとなった。
 米軍自身が感染対策を決めることができる体制そのものを変え、日本政府や地元自治体が米軍の感染対策に関与できる仕組みをつくる必要がある。

『子どもと教科書全国ネット21ニュース 143号』(2022.4)


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