2007/7/29

日雇い派遣  ]U格差社会
 ☆ 日雇い派遣 ☆

 「こんな生活、いつまでできるかな」。神奈川県の女性(三一)はため息をついた。人材派遣会社に日雇い派遣のスタッフとして登録して二年。「得意先」「作業時間」「支払い給与」など翌日の業務のあっせんを携帯電話のメールで受け、了解すれば契約となる。
 自宅の周辺市域を派遣先に希望する。午前八時半から午後五時半の業務が多い。百円ショップのレジ打ちや、コンビニ店員、倉庫での仕事などだが日当は五千−六千円だけ。「何とか週に六日は働くようにしてるけど、それでも月収は十三、四万円そこそこ」という。
 地元の高校を出た一九九〇年代後半は、就職氷河期だった。正社員になれず、アルバイトで食いつないだ。正社員を目指し何度か企業の面接を受けたが、年齢を理由に断られたり、「結婚しないの?」と心ない言葉を浴びせられたり。「腹を立てる気にもなれなかっ
た。それで不採用だから人間不信になりました」
 一人暮らしをしていた半年前までは、日雇い派遣の収入の半分以上が家賃に消えた。やむを得ず親元に帰ったが肩身は狭く、インターネットカフェに泊まることも。事情を抱えて心が壊れたような人が大勢いた。「まじめにやってきたつもりなのに、自分もその中の一人だと思うと心がぼきんと折れてしまって」−。


 今春、個人加盟できる労働組合に入った。月々二千円の組合費は突然の労働トラブルに備えた保険のようなもの。何より「境遇を理解し合える仲間ができてうれしい」。

■ 休憩、トイレなし8時間

 同県内で働く男性(二四)は日雇い派遣スタッフに登録して六年目。多くが倉庫作業で、六千−七千円の日当と千円の交通費。「ペットボトルの重い箱や二十キロの米袋を積み上げる」という。
 人手不足で、女性が同じ仕事をさせられていた。「手配の時に作業内容は知らされないから、女性たちは『だまされた』って怒ってました」
 アパートの家賃は三万八千円。「節約して三日で一万円をためる。半月働いて、やっと家賃を払えると思ったら、次は電気と水道代」。身長一b七五だが体重は五五`とやせている。
 「朝食べたきり夕方まで食べられないから。午前八時半の始業から四時半の終業まで休憩なし」。トイレに行きたくても、責任者は「男の体は行かなくても大丈夫なんだ」と言い放ったという。
 劣悪な条件でこき使われ、懸命に働こうとは思えない。「仕事するほどたくさん言いつけられるから。物乞いは根性なしだと思っていたが、今は自分がなってもおかしくないと思える。結婚したい人が現れた時、相手の家族に何と言えばいいか。想像すると怖くなる。」

■格差ただす候補者に一票

 二人は、もう黙っているつもりはない。増え続ける非正規雇用。人間らしい生き方を奪い、格差を広げる労働政策をただせる候補者に、怒りの一票を投ずるつもりだ。「私たちが貧乏になっても『自己責任だ』とうそぶく政治家を許せない。非人間的な派遣労働を認めるなら、『代わって働け!』と叫びたい。」

※非正社員の拡大と雇用格差

 派遣・契約社員、パート、アルバイトなど非正規社員は2006年には労働者の3人に1人
 雇用格差が広がった背景には、肉体労働や単純作業などの業務規制を解禁した1999年の労働者派遣法改正がある。
 人材派遣業界ではこの間、一日契約の仕事を発注する「日雇い派遣」が急増。顧客の派遣先から支払われる作業代金の4割を粗利益とするなどして高収益を得ているとされ、マージン規制がないのが問題視されている。
 90年代の就職氷河期に正社員になれなかった20代後半から30代前半の若年層がフリーターや派遣社員のままでいる、格差の固定化も問題となっている。


『東京新聞』(2007年7月24日 朝刊'07参院選 選風)


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