2007/7/30

介護労働者  ]U格差社会
 ☆ 介護労働者 ☆
 制度矛盾 貧困しわ寄せ


 「この時間は、ヘルパーとして稼働していないんでしょ?」。訪問介護大手コムスンの事業所幹部だった高橋久子さん=仮名=は数年前、あるホームヘルパーの女性の残業代をカットするよう上司の地域統括担当者からそう迫られた。

 そのヘルパーは正社員でほぼ毎日、朝六時半から夜十時半まで約十六時間も働いていた。だが、そのうち昼食後から夕方までの三−四時間について、上司は勤務実態を疑っていた。

 事業所には他に時給制の日勤のヘルパーしかおらず、そのヘルパーが長時間労働を承知で早朝と深夜をほぼ一人でカバーしていた。高橋さんは「夕方からの仕事に備えて休むのに必要な時間です」と抵抗、上司の要求を押し返した。


 コムスンは売り上げ増を目指し、毎月獲得すべき利用者数のノルマを課していた。現場ではノルマをこなすため、ケアマネジャーへの“営業”を強いられた。

 要介護高齢者のケアプラン作成を担当し介護サービス事業者を選ぶ立場にあるケアマネジャーに、「コムスンの介護サービスを使って」と頼みに行くのだ。会社への毎月の報告書には、その月に営業に回った件数の記入欄があった。

 約三年前、毎月三人だった利用者獲得のノルマが四人に増えた。「利益至上主義が強まったと感じた」。恒常的なヘルパー不足のため自ら現場に赴き、夜間は管理業務に追われた。

 過労で体を壊した高橋さんは「尊敬できる上司に育ててもらった」と感謝しながらもコムスンを辞めた。

 ◆ 「やりがいあっても続かない」

 コムスンの利益至上体質の背景について「介護保険制度そのものが抱える問題がある」と話すのは、「ホームヘルパー全国連絡会」事務局長の森永伊紀(よしのり)さん(49)。「国が設定した介護報酬が低く、訪問介護事業は赤字になることが多い。ヘルパーには賃金抑制や過酷労働というしわ寄せがいく。制度の矛盾がヘルパーを貧しくし、心のこもった介護をするゆとりも失われる」

 森永さんによると、「良心的な介護をしたい」と考える事業所が売り上げの八割を人件費に回しても、正規のヘルパーに払えるのは年三百万円がぎりぎり。四百万円では赤字だ。時給制のヘルパーだと月収十万円未満のケースも多い。

 介護は精神的にも肉体的にも重労働だ。離職率も高い。「ヘルパー自身がワーキングプアで将来の希望が持てない。やりがいはあるが、続けられない」と森永さんは言う。

 「国は介護報酬を抑えて現場を締め上げるが、このままでは働き手も集まらず、企業が撤退して介護保険制度は崩壊するでしょう」と予測する森永さん。今回の参院選では、ヘルパーが生活に不可欠な報酬と職場環境を確保できる仕組みをどうつくるのかが、争点の一つと考えている。 (西田義洋)

<メモ>介護事業者の経営実態
 厚生労働省の2005年介護事業経営実態調査によると、訪問介護や訪問入浴、ケアプラン作成の介護サービス事業で、1事業所当たりの毎月の平均収支はそれぞれ2万5000円、16万円、12万5000円(補助金を除く)の赤字。
 同省所管の財団法人・介護労働安定センター(東京)の同年度実態調査では、ホームヘルパーなど訪問介護員と介護施設職員の平均月収は17万円。勤続年数は平均3・4年。年間離職率は約2割に上る。


『東京新聞』(2007年7月26日 夕刊'07参院選 選風)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2007072602035977.html


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