2008/6/4
「国策裁判」 W板橋高校卒業式
◎ 「国策裁判」
裁判長が棄却理由を朗読する満席の傍聴席に、不満のつぶやきがひろがっていた。五月下旬、東京高裁の法廷である。
四年前の三月、都立板橋高校の卒業式が始まる二十分前、「できましたら君が代斉唱の時に着席を」と保護者に語りかけた元教員が、「威力業務妨害罪」に問われた控訴審である。
判決文には、「教頭が時速何キロで歩いた」とかの些末な科学主義と「怒号」「喧噪」などの極端な文学的表現がちりばめられ、「威力業務妨害」を証明しようとしている。
つまり、元教員の発言が、「二分間卒業式を遅延させた」(他者の権利を侵害した)のだから、罰しても「違憲ではない」という論理である。
遅延は彼のせいではないのだが、これは立川自衛隊官舎でのビラ入れを、「私生活の平穏を侵害するもの」として、おなじ罰金刑にした、今年四月の最高裁判決を踏襲したものといえる。
怒号や喧躁、平穏な生活の侵害など、その被害が明確に証明されていない「事実」に依拠して、言論表現活動に刑事罰を科する。
いったい、裁判官が「君が代」と「自衛隊」にこんなに弱腰で、これから日本の民主主義はどうなるのだろうか。傍聴席のほとんどが退職教員のようだったが、裁判長が退廷をうながしても、すぐ立とうとする人はなく、「国策裁判」「暗黒裁判」との声がやまなかった。(ルポライター)
『東京新聞』(2008/6/3 本音のコラム)
鎌田慧

裁判長が棄却理由を朗読する満席の傍聴席に、不満のつぶやきがひろがっていた。五月下旬、東京高裁の法廷である。
四年前の三月、都立板橋高校の卒業式が始まる二十分前、「できましたら君が代斉唱の時に着席を」と保護者に語りかけた元教員が、「威力業務妨害罪」に問われた控訴審である。
判決文には、「教頭が時速何キロで歩いた」とかの些末な科学主義と「怒号」「喧噪」などの極端な文学的表現がちりばめられ、「威力業務妨害」を証明しようとしている。
つまり、元教員の発言が、「二分間卒業式を遅延させた」(他者の権利を侵害した)のだから、罰しても「違憲ではない」という論理である。
遅延は彼のせいではないのだが、これは立川自衛隊官舎でのビラ入れを、「私生活の平穏を侵害するもの」として、おなじ罰金刑にした、今年四月の最高裁判決を踏襲したものといえる。
怒号や喧躁、平穏な生活の侵害など、その被害が明確に証明されていない「事実」に依拠して、言論表現活動に刑事罰を科する。
いったい、裁判官が「君が代」と「自衛隊」にこんなに弱腰で、これから日本の民主主義はどうなるのだろうか。傍聴席のほとんどが退職教員のようだったが、裁判長が退廷をうながしても、すぐ立とうとする人はなく、「国策裁判」「暗黒裁判」との声がやまなかった。(ルポライター)
『東京新聞』(2008/6/3 本音のコラム)
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