2008/7/31

カウンターレポート〜日の丸・君が代  Z国際人権
 ★ 日本の実情を伝える人権報告書
 自由権規約第5回日本政府報告に対する「カウンターレポート」

17.国旗(日の丸)・国歌(君が代)への崇拝の強制
 〜思想・良心の自由の侵害 (18条)
A 結論と提言

 東京都教育委員会及び各都立学校校長は、入学式・卒業式等の学校行事において、教職員に対し「国旗(日の丸)に向かって起立し、国歌(君が代)を斉唱せよ」、あるいは音楽教師には「国歌(君が代)をピアノ伴奏せよ」との職務命令を発令した。
 この職務命令に違反した教職員は懲戒処分を受け、また嘱託教員らは任用を取り消された。このような国旗国歌に対する起立斉唱の強制は、思想・良心の自由及び信仰の自由を侵害するものである。

B 自由権規約委員会の懸念事項・報告内容
 該当なし

C 政府の対応と第5回日本政府報告の記述
 該当なし

D 意見
1.日本における日の丸・君が代問題の歴史的背景

(1)戦前の歴史

 日本における国旗・国歌問題を検討するには、日本の近・現代史に関する知識が必要である。日本は1968 年の明治維新を経て近代国民国家化を進めることとなったが、1889 年に天皇によって制定された大日本帝国憲法下では、天皇を本源的な主権者であり、統治者とし「神聖不可侵」な存在とし、国民はその「臣民」とし天皇に従属すべきものとしていた。このような天皇の統治の象徴として、「日の丸」が国旗、「君が代」が国歌と扱われた。


 「君が代」の歌詞の内容は、「わが天皇陛下のお治めになる御代が永遠に続いて栄えるように」という意味であるとされた。天皇制下の日本が,アジア諸国への侵略をおこない、ヒットラーのドイツとムッソリーニのイタリアと同盟して第二次世界大戦に突入するなか、「日の丸」「君が代」は、その軍国主義と超国家主義にもとづく侵略行動を鼓舞する象徴としての役割を担った。特に戦前の学校教育では、子どもたちに超国家主義と軍国主義を注入する役割を果たしていた。
(2)戦後の状況
 第二次世界大戦の敗戦後、現在の日本国憲法が制定され国民主権が確立した。戦後は、戦前の神権天皇制と軍国主義を象徴する「日の丸」「君が代」を国旗・国歌として扱うことに対して反対意見が強力であり、これらに対する戦前、戦中のような取り扱いは事実上停止された。特に、戦争中、子どもに国家主義・軍国主義教育を行い、戦場に駆り立てた教師たちの多くが、戦前教育が果たした「罪」を反省し「再び教え子を戦場に送らない」ことを誓った。
 この誓いは、若い世代の教職員に引き継がれていった。そのため、2005 年までは、東京都、特に都立学校(都立の高等学校、中学校、高等専門学校、盲学校、ろう学校及び養護学校)では、思想・良心の自由及び信仰の自由が尊重され、学校行事の中で「日の丸」「君が代」が強制されることはなかった。教職員の中でも、卒業式等にて国旗国歌に対して起立斉唱をしない者が少なくなかった。
 日本国を戦争前の状況に立ち帰らせようという勢力が強まっていく中で、1999 年、「日の丸」が国旗、「君が代」が国歌とする国旗国歌法が制定された。その法案を審議する国会における提案者である政府の発言は「日の丸」「君が代」に対する国民の反対意思が強いことを考慮してその国旗化、国家化によって国民にそれらを強制するものではないと言明していた。ところが、2003 年以降、東京都では次の述べるような大きな転換がおこった。

2.概括的な事実関係
(1)教育委員会の通達に基づく校長の国旗国歌起立斉唱等の職務命令

 東京都教育委員会は、2003 年10 月23 日付通達により、都立学校の校長に対して、卒業式等にて教職員に「国旗に向かって起立し国歌を斉唱せよ」、「音楽教師に対してピアノで国歌を伴奏せよ」との職務命令を発令することを命じた。
 この職務命令に従わず、起立・斉唱あるいはピアノ伴奏をしなかった教職員が約170 名にのぼった(都立学校の教職員の人数は合計約73,520 名−’05 年度)。この約170 名の教職員は,起立斉唱の拒否,ピアノ伴奏の拒否を理由として懲戒処分を受けた。
(2)都立学校の現状
 多くの日本人の生徒は、「日の丸」「君が代」に対して違和感を持たないが、都立学校には、日本の侵略の被害にあった朝鮮・韓国籍や中国籍の生徒も少なくなく、また信仰上の理由から「日の丸」「君が代」を歌いたくないという生徒も存在している事実もある。
 東京都教育委員会の国旗国歌起立斉唱等の職務命令が発令された後、都立学校の生徒会が「日の丸」「君が代」の強制ついて、生徒同士の討論会を開催した。
 ところが、東京都教育委員会は、討論会に関与した教師と校長らを事情聴取した上、生徒討論会は不適切な指導だとして注意処分をした。また、国旗国歌に対して起立・斉唱しなかった生徒が多く出た学校については、教師や校長に対しても適切な指導をしていないとして注意処分が行われた。
 このように生徒や教師が「日の丸」「君が代」に対して批判的意見を述べることも、東京都教育委員会から「不適切だ」として抑圧される状況にある。

3.争点
 教職員らが起立斉唱やピアノ伴奏を拒否した理由は多様である。これを大きく分類すると、@「君が代」は国家神道と結びつき、また神格化した天皇を賛美する歌なのでキリスト教などの宗教上の理由で起立斉唱等ができない、A過去の日本のアジア侵略において「日の丸」「君が代」が果たした役割から、それに敬意を表すことは自己の歴史観、世界観に反するから起立斉唱等ができない、B教師全員が一斉に起立斉唱等をするようになれば多様な国籍や信仰、価値観を持つ生徒に起立斉唱を強制することになり、それは自己の教育観に反するから起立斉唱等はできないという理由である。
 日本国憲法は、第19 条で思想・良心の自由を保障し、第20 条にて信仰の自由を保障している。そこで、この国旗国歌に対する起立斉唱命令・ピアノ伴奏命令が教職員の思想・良心及び宗教の自由を侵害するか否かが問題となる。

4.訴訟の展開と判決
 国旗国歌起立斉唱等職務命令を受けた教職員、懲戒処分を受けた教職員が、東京地方裁判所に起立斉唱義務等の不存在を求める訴訟を提起した。また、不起立をしたことを理由に研修命令を受けた教職員が研修命令を違憲違法であるとして損害の賠償を求めて提訴し、また、嘱託教職員として合格したにもかかわらず、不起立をしたことを理由に合格を取り消されたり,採用を拒否された教職員らが損害賠償等を求めて提訴している。
 2006年9月21日、東京地方裁判所の一つの部が、本件職務命令は憲法が保障する思想及び良心の自由を侵害し違憲であるとの判決を言い渡した。他方、東京地方裁判所の別の部では、不起立を理由にして教職員に対する研修命令や、嘱託教員の合格取り消しは思想良心を侵害するものではないとして合憲とした。

5.国内世論の状況
 日本の多くの新聞の社説では、教育の場である学校において「日の丸」「君が代」を強制する東京都教育委員会の通達及び校長の職務命令に対して批判的である。特に、不利益処分をもって起立斉唱を義務づけることは強制に該当するとして反対意見が多い。
 国民の世論調査でも「日の丸」「君が代」を国旗国歌として尊重する国民であっても「強制は望ましくない」とする意見が多数派である。日本弁護士連合会は、2007 年2月16日付の意見書にて、教育委員会の通達に基づく各校長の職務命令による国旗・国歌の強制は教職員の思想良心の自由を侵害するもので許されないとの見解を明らかにしている。

6.自由権規約第18条違反
 自由権規約第18条1項は「全ての者は、思想・良心及び宗教の自由について権利を有する」と定め、同条2項では「何人も、自ら選択する宗教又は信念を受け容れ又は有する自由を侵害するおそれのある強制を受けない」と定めている。
 教職員が自己の歴史観、世界観に基づく信念ないし信仰に反して、「日の丸」「君が代」の起立斉唱の強制、ピアノ伴奏を強制されることは,自由権規約18条違反となることは明白である。

 2008年 3月

国際人権活動日本委員会
自由法曹団
日本国民救援会
治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟

http://jwchr.s59.xrea.com/x/shiryou/08counterreport.pdf

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