2008/12/31

教科書検定制度・採択システム  Z人権
 ▲ 小石川メール通信08.12月号(2008年12月19日発行)

 ▲ 総会・公開学習会報告
 「教科書検定制度・採択システム―現状と問題点―
 」

 有志の会設立以来、3回目となる総会と公閥学習会が、2008年11月29日(度)に法政大学富士見校舎にて行われました。
 公開学習会は、こどもと教科書全国ネット21事務局長の俵義文さんを講師にお願いし白鴎・両国・都立大附の有志の会の共催で行われ、各校のOBも多く参加され、俵さんのお話に熱心に耳を傾けました。

▲ 1.教科書が子どもたちにわたるまで
○検定申請まで(期間は1〜3年)
 教科書の出版企面が開始されてから、検定申請図書(いわゆる白表紙本)が完成し検定申請に付される。
○検定の経過(期間は4月から翌年の4〜5月まで約1年)
 白表紙本が検定意見を受け修正を加えられ、検定合格すると、見本本が文科省に提出される.
○採択と供給(期間は約1年)
 見本本が各教育委員会に送付され、採択が行われ、供給本が印刷され教科書供給所、教科書取次店を経て学校・子どもの手にわたる。
 この間に見つかった誤記・誤植や資料の更新は、教科書会社が「訂正E申請」すると文科省の承認で訂正することができる。
 先の沖縄戦記述の修正はこの訂正申請のかたちをとって行われた。


▲ 2.検定はどのように行われているか
○教科書調査官による調査と匿名の調査員の調査を経て、調査意見書が検定調査審議会に付される。
○ここで、合格・不合格が決定されるが、「検定意見」が文書で通知された場合は、教科書会社は35日以内に「修正表」を提出しなければならない。修正表提出の前に、「申立書」を提出できることになっているが、時間的な制約が厳しく、制度はあっても活用できないのが現状である。
○提出された修正表・再修正表が再び調査審議会に付されるが、この段階での不合格は最終決定となる。したがって、教科書会社の立場からすれば、検定意見に沿った修正表を提出しなければ検定不合格になるという不安がつねにつきまとう、ということである。
 このような検定過程によって、「検定意見」の強制力が非常に強くなっているわけである。
○80年代までは、「条件付合格」があり、「合格」が決定した後で、検定意見について質問・やりとりする余裕が存在していた。

▲ 3.検定は教科書を良くするために役立っているか
 ここで俵さんから、実際に行われた検定意見と修正の例が、沢山紹介された。

○「原爆の図」(丸木位里・俊作)〔現代社会〕
 「絵がほかの社のものより大きく色が鮮明に出ていて、原画に近い感じ」で「みた印象が鮮烈」で「絵が1ページに1枚で、見開いたときの印象として悲惨な感じが強く、事実をことさらに強調するものは適当でない」
 →【削除】

○「おふろからでてはしったときとまったときあるいたとき同じ足なのにあしあとはかわる」〔小学校生活科〕
 「しつけに問題がある。お風呂から出たらちゃんと身体を拭くはずだから、足跡はつかない」
 →【小さな妹の話に修正したら合格】

○「たかいところところがらみると、がっこうはまちのなかにある」〔小学校生活科〕
 「地域社会を扱っている。(学習指導要領では)地域社会は3年生の社会科で扱う」
 →【削除】

○「世界文学」という単元を設けて、「春香伝」「カムイユカラ」「ギルガメッシュ叙事詩」「イリアス」「般若心経」「ネイティヴ・アメリカンの口承詩」を載せた。〔高校国語〕
 「指導要領に照らして、不必要なものを取り上げている」「外国の古典とアイヌの古典は、日本語の古文で書かれたものではないから古典教材として認められない」「カムイユカラは日本の古典ではない」「アイヌ語は外国語である」
 →【不合格】

 会場は、初めは、爆笑・苦笑・失笑の連続でしたが、徐々に笑えない現実を突きつけられたような空気となりました。

▲ 4.今日の検定の主要な問題点
○学習指導要領の「目標」「内容」に加えて90年代からは「内容の取扱い」も検定基準に加えられ、学習指導要領に忠実な教科書を作らせる傾向は層強まっている。
○調査官によって恣意的な検定が行われても、それを防ぐ制度になっていない。

▲ 5.教科書採択の問題点「広城採択」により以下のような問題点が生じている。
○教員が教科書を選べない。
○教科書発行者の寡占化・記述内容の画一化
 1995年行革委員会で「教科書の自由化」を考えたことがあり、俵さんもレクチュアを行った。
 98年意見書では「教科書は将来的には学校ごとに」「それに向けて教員意見を聞けるように」との文言が盛り込まれ、98・99・04年にほぼ同じ内容で閣議決定されているが、その後の動きが認められていない。
○教育委員会による採択の問題
 採択権限について書かれた法律は存在しない。文科省が根拠にしているのは、地公行法での「教育委員会による教科書に関する事務取扱い」の項など。

▲ 6.教科書の低価格制度と供給をめぐる問題
▲ 7.改訂学習指導要領の問題

 すべての教科書に、道徳や愛国心、国家に対する奉仕、日本人としての自覚などを盛り込むことを、強制できてしまう。

▲ 8.検定制度と採択制度
 日本の検定制度は、国際的に見ても遅れた制度。
 ドイツにも検定があるが、日本とは全く異なる。
 時間ぎりぎりまで行われた質疑応答の後、俵さんから最後に「教科書をよくするためには、学校そのものをどの.ように展開するかが重要であり、広い視野が必要です」というお話がありました。


小石川メール通信08.12月号(2008.年12月19日発行)

http://www.k-yuusi.jp

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