2011/11/28

生活保護 最多だが低利用率  ]U格差社会
 ◇ 生活保護 最多だが低利用率

 生活保護の受給者数は、今年七月現在で二百五万四百九十五人(速報値)を超え、一九五〇年に現行の生活保護制度が始まって以来、過去最多を更新した。高齢の受給者の増加や、働ける世代の受給が伸びていることが主な背景だが、他の先進国と比べると利用率は低い。「必要な人がまだ利用できていない」と訴える声も上がる。 (稲田雅文)
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 ■ 受給 貧困層の10人に1人
 「心にゆとりができ、前向きな気持ちになりました」。愛知県の四十代男性は、四歳の長男を育てる父子家庭。九月に生活保護を申請した。
 以前、ハローワークに通ったが、なかなか仕事が見つからない。面接で父子家庭だと伝えると断られることも多かった。
 ようやく見つけた今の運送の仕事で稼げるのは、月八万〜十二万円程度。ここから家賃や保育料、光熱費などを払うと、わずかしか残らなかった。


 生活保護を受けられたのは、法律家の助言があったから。弁護士らでつくる「東海生活保護利用支援ネットワーク」に参加する司法書士に相談すると、「生活できる収入ではない」と受給を勧められた。抵抗感はあったが、働きながらでも不足した収入を補ってもらえ、家賃や保育料の負担がなくなることなどを説明されて納得した。
 保護費と賃金と合わせて収入が約十五万円と安定。「冬も安心して越せる」と気持ちが落ち着いた。少しでも収入を得ようと、空いている時間にできる仕事を増やした。

 ■ 説明できず、申請あきらめる人も
 同ネットワーク事務局長の森弘典弁護士は「低年金の高齢者など、実際は生活保護が申請できる水準の収入の人は多い。しかし、生活に困って窓口に行っても、まず一回目では申請は受け付けないことが多い」と語る。
 自治体の窓口では「働けるのではないか」「頼れる親類がいるのでは」などと聞かれ、うまく状況を説明できずに申請をあきらめる人も多い。ところが、同じ人が同ネットワークの法律家とともに窓口に行くと、すんなりと申請できるという。

     ◇

 「利用者の増加ではなく、貧困の拡大が問題だ」−。「生活保護問題対策全国会議」は九日、生活保護受給者が最多となったことを受けて東京都内で会見し、必要な人がまだ生活保護を受けられていないなどとする見解を発表した。
 同会議の小久保哲郎弁護士は「保護受給者数の人口比である保護率で比べれば、過去最多だった一九五一年当時の三分の二程度。実質的に最多とは言えない」と語った。

 現在の日本の保護率は1・6%。小久保弁護士によると、他の先進国の保護率はドイツ9・7%、イギリス9・3%、フランス5・7%と、日本よりも数倍高い。
 全国民の中で生活に苦しむ人の割合を示す「相対的貧困率」は二〇〇九年時点で16・0%で、生活保護制度は十分の一しかカバーしていない

 ■ 失業時「所得保障制度弱い」
 日弁連も同日、「生活保護のより一層の活用を求める会長声明」を出した。
 受給者の増加は
 ▽長引く不況と非正規雇用の増加で、ワーキングプアが増えている
 ▽失業時の所得保障制度が弱い
 ▽最低生活保障としての年金制度が確立していない
 −ことが背景で、貧困を一手に生活保護制度が支えていると指摘。「低賃金の不安定雇用をなくし、社会保障制度を拡充して対応すべきだ」とする。

 <生活保護受給世帯の内訳>
 生活保護を受けているのは148万世帯。65歳以上の高齢者世帯が63万527世帯と全体の42.6%を占め、傷病者世帯(21.6%)、障害者世帯(11.3%)、母子世帯(7.6%)と続く。
 近年、増えているのが、働ける年代なのに失業などで受給する人を含む「その他の世帯」で、25万1176世帯と全体の17.0%。2008年のリーマン・ショック前の2倍で、背景には雇用が不安定な非正規労働者の増加がある。


『東京新聞』(2011年11月24日【暮らし】)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/CK2011112402000061.html


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