2012/7/1
書評『ルポ 子どもの貧困連鎖』 ]Vこども危機
書評『ルポ 子どもの貧困連鎖 教育現場のSOSを追って』
保坂渉、池谷孝司=著 (光文社 1680円)
▲ 生き苦しさへの「告発状」
黒々と欠落(デフエクト)が染みだしている。にもかかわらず人びとのほとんどは、その欠落の激しさに眼を閉ざしている。
それは例えば、空き缶拾いで暮らすホームレスを「汚い」と蔑視することであり、炊き出しの配給に、長い列を連ねる失業者を「厄介者」と攻撃することであり、公園の片隅でやっと眠りにありついた重労働の若者を、「怠け者」と嘲(あざけ)る眼である。
本書は、そのなかでそうした冷たい差別の眼差しに晒された子どもたちの「貧困」の現実を、その「生き苦しさ」の現在的意味を、眼を閉ざしたままの日本社会に”告発状”として突きつけた渾身のルポである。
軽忽(きようこつ)な小泉改革ののち、「貧困の連鎖」は、黒々と社会の底に沈殿し、貧困に吹き寄せられた子どもたちは、自らの未来の生活基盤形成の機会を、根こそぎ奪われてしまっている。
給食費を払えないほどの貧困。
風呂に入れず、垢じみ、粗末な服で凍える子どもたち。
学校が始まれば、まっさきに保健室に駈け込み、前日の給食の残りのパンと牛乳に手を伸ばす子どもたち。
せめて高校だけはと、必死になって一日数件ものアルバイトを掛け持ちしながら、綱渡りのような日常を強いられている定時制高校の生徒たち…。
それに対し、いまだに「勝ち組」意識に乗り、不遜な物言いに終始する企業人や官僚たち。
軽薄で無自覚なマスメディア。
「変革」の空虚な一つ覚えに自己実現だけを欲望する政治家。
そして劣化が著しい行政機関。
子どもの未来が保障されている世の中こそ、豊かさの源流である。
まずこの事実に眼を開きたい。わたし自身、かつて定時制高校の教員をし、その苛烈な現実の一端を知る者として、本書が告発する意味は深くて重い。
『週刊金曜日』(2012/6/22 900号【本】)
保坂渉、池谷孝司=著 (光文社 1680円)
▲ 生き苦しさへの「告発状」
八柏龍紀(やがしわたつのり/哲学者)
黒々と欠落(デフエクト)が染みだしている。にもかかわらず人びとのほとんどは、その欠落の激しさに眼を閉ざしている。
それは例えば、空き缶拾いで暮らすホームレスを「汚い」と蔑視することであり、炊き出しの配給に、長い列を連ねる失業者を「厄介者」と攻撃することであり、公園の片隅でやっと眠りにありついた重労働の若者を、「怠け者」と嘲(あざけ)る眼である。
本書は、そのなかでそうした冷たい差別の眼差しに晒された子どもたちの「貧困」の現実を、その「生き苦しさ」の現在的意味を、眼を閉ざしたままの日本社会に”告発状”として突きつけた渾身のルポである。
軽忽(きようこつ)な小泉改革ののち、「貧困の連鎖」は、黒々と社会の底に沈殿し、貧困に吹き寄せられた子どもたちは、自らの未来の生活基盤形成の機会を、根こそぎ奪われてしまっている。
給食費を払えないほどの貧困。
風呂に入れず、垢じみ、粗末な服で凍える子どもたち。
学校が始まれば、まっさきに保健室に駈け込み、前日の給食の残りのパンと牛乳に手を伸ばす子どもたち。
せめて高校だけはと、必死になって一日数件ものアルバイトを掛け持ちしながら、綱渡りのような日常を強いられている定時制高校の生徒たち…。
それに対し、いまだに「勝ち組」意識に乗り、不遜な物言いに終始する企業人や官僚たち。
軽薄で無自覚なマスメディア。
「変革」の空虚な一つ覚えに自己実現だけを欲望する政治家。
そして劣化が著しい行政機関。
子どもの未来が保障されている世の中こそ、豊かさの源流である。
まずこの事実に眼を開きたい。わたし自身、かつて定時制高校の教員をし、その苛烈な現実の一端を知る者として、本書が告発する意味は深くて重い。
『週刊金曜日』(2012/6/22 900号【本】)






