2013/5/5
憲法記念日 改憲より被災地の現状解決を ]Xフクシマ原発震災
=河北新報 社説=
● 震災と憲法/被災住民に響かぬ改憲論
復興途上の被災地に歓迎する雰囲気は乏しい。むしろ、戸惑いを隠せないでいる住民が多いのではないか。活発化している憲法改正をめぐる動きについてだ。安倍晋三首相が積極発言を繰り返し、今年夏の参院選で争点に浮上する可能性もある。
東日本大震災から2年余り。憲法を改めることが、思うに任せない復興を加速させるてこになるわけではなく、論戦が激しさを増し焦点化すればするほど、被災地再生への関心がかすんでしまうことを懸念する。
地元にはそれでなくても風化が進むことへの焦り、いら立ちがある。「震災復興を前に進めるのが先だ」。心の内はこんな形に集約できるだろう。
復興庁が発表した避難者(転居者を含む)は4月4日現在、約31万人。今なお、仮設住宅などで先の見えない不自由な生活を強いられている。
避難先は全国47都道府県の1200市区町村に及び、県外避難者は岩手、宮城、福島の被災3県で約6万5000人。とりわけ、福島第1原発事故の収束が見通せない福島県は5万人を超えている。
災害公営住宅への入居が一部で始まったばかり。地域づくりも雇用など住民の生活再建もやっと緒に就いた状況だ。
憲法は基本的人権の要、13条で個人の「幸福追求権」尊重をうたい、25条に「すべての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と「生存権」を明記する。
被災地の現状は憲法に掲げるそうした権利実現の理念と隔たってはいないか。憲法順守の義務を負う国は震災復興を最大の責務と受け止めるべきだ。
昨年末に施行された復興特区法で、高台移転を進めるための土地利用規制が緩和されるなどした。
その際、被災自治体の条例に法律の規制撤廃を可能にする「上書き権」は見送られた。現憲法の「制約」と説明されるが、法律の書き込みは基本的事項にとどめ、具体のことは条例で定めるよう工夫すれば解決する。生存権確保に必要な場合は上書き権を認めてもいい、と指摘する憲法学者もいる。
憲法を体現し政治は機敏に国は柔軟に、被災地の意向を受け入れて、復興の足かせとなる縦割りや上意下達の弊害を取り除き対処する。大震災など緊急時には特に必要な構えだ。
財政力、マンパワーなどに弱さを抱える被災地をいかに支え復興を後押しするか。国は被災住民の目線で「わがこと」として対応に努めてほしい。
自民党の憲法改正草案は幸福追求の権利行使に関し「公共の福祉」を「公益及び秩序」に反しない限りに改めるなどした。人権尊重の精神が揺らぎ、国への縛りを緩和した格好だ。被災者はどう受け止めるだろうか。
今は憲法の理念に沿って政策決定や取り組みの迅速化を図ることこそ肝要だ。本格的な改正論議は復興が軌道に乗り、住民が平穏な暮らしを取り戻してからでも遅くはあるまい。
『河北新報』(2013年05月03日)
http://www.kahoku.co.jp/shasetsu/2013/05/20130503s01.htm
● 「改憲より現状解決を」 不平等感じる被災者 (福島民友新聞) - Yahoo!ニュース
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故以降、多くの県民が仮設住宅などでの不自由な避難生活を強いられている。さらに原子力災害や避難に伴い仕事を奪われ、居住地などの違いで賠償に差が生じるなど、憲法の3原則の一つ「基本的人権の尊重」が等しく保障されているかどうか、疑念を抱く被災者も少なくない。そうした中で高まる憲法改正をめぐる論議。県内被災者はどう受け止めているのだろうか。
富岡町から郡山市の借り上げアパートに避難している女性(77)は「町の除染は進んでいないし、自分が現在置かれている不安だらけの現状を考えると、国は自分たちの基本的人権の尊重について、どう考えているのかと考えてしまう」と長引く避難生活に率直な気持ちを吐露した。
会津若松市の仮設住宅で生活する大熊町の木幡ますみさん(57)も、「基本的人権の尊重」が保障されていないと感じている。「またどこかで原発事故が起きれば多くの人が避難しなければいけない。私たちが何で逃げているのかということをもっと分かってほしい」と訴える。
郡山市の富岡町富田仮設住宅自治会長の遠藤武さん(69)は「(憲法改正よりも)目の前のこの理不尽な状況の解決が先だ」と、国会での論議に疑問を呈する。
『福島民友新聞』(2013年5月3日)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130503-00010001-minyu-l07
=福島民報 論説・あぶくま抄=
●【憲法と被災地】まず自由、権利の回復を(5月3日)
きょう3日は「憲法記念日」だ。施行から66年となる日本国憲法は、改正に向けた動きが加速している。安倍晋三首相は夏の参院選公約に、発議要件を緩和するための96条改正を掲げる方針を示した。
東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の発生以来、住民の自由や権利が脅かされる状況が依然として続く。25条に掲げられた〈健康で文化的な最低限度の生活〉を、まず回復し、しっかり保証していくのが国や政治の役目ではないか。
県内では、震災から2年以上過ぎても15万人以上が避難生活を強いられる。このうち、約5万5000人が県外で暮らす。
農家は住居だけでなく、仕事の場となる田畑さえも使えない。第22条〈公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する〉を奪われた形だ。
不自由な毎日や先の見えない不安から心身の健康を損ねて命を落とす震災・原発事故関連死が止まらない。
岩手、宮城両県と比べ、本県での増加が際立つ。
財物の賠償も思うように進んでいない。生存・財産権すら揺らぐ。
いわれのない偏見や差別に苦しむ県人は少なくない。
自民党は新たな憲法改正案を昨春決めた。発議要件緩和は、実現へのハードルを引き下げるのが狙いだ。与野党ともに異論や反対がある。参院選の大きな争点となろう。
ただ、被災者の苦しみをそっちのけした論議では困る。
憲法は、強大な権限を持つ国や王が勝手な振る舞いをしないよう、国民が求めた「約束」とされる。
行政の効率や一部の利益だけを求めれば、力の弱い個人や特定の地域が押しつぶされかねない。各条に盛り込まれた人権は「公権力が犯してはいけない」項目でもある。
多様な考えや営みを憲法に基づいた話し合いで調整し、政策として実現する仕組みが立憲政治だ。
99条は、大臣や国会議員、裁判官、他の公務員に憲法を尊重し擁護する義務を負わせている。
歴史を振り返れば、国民の自由を奪ったり、権利を無視したりしたのは政治家や役人だった。国民が常に目を光らせ、声を上げていくことが不可欠となる。
〈立憲の妙、自治の美を完[まったし]からしめ、以[もっ]て国家の康福を計画し、人民の福利を企図するに在り−〉。
創刊120年を昨年迎えた本紙「発刊の旨趣」の一節だ。明治前期に自由民権運動に立ち上がり、弾圧を耐え抜いた人々の決意といえる。
現在、享受している自由や権利は、先人が苦難の末に手にしたことを忘れてはなるまい。(鈴木 久)
『福島民報』(2013/05/03)
http://www.minpo.jp/news/detail/201305038201
● 震災と憲法/被災住民に響かぬ改憲論
復興途上の被災地に歓迎する雰囲気は乏しい。むしろ、戸惑いを隠せないでいる住民が多いのではないか。活発化している憲法改正をめぐる動きについてだ。安倍晋三首相が積極発言を繰り返し、今年夏の参院選で争点に浮上する可能性もある。
東日本大震災から2年余り。憲法を改めることが、思うに任せない復興を加速させるてこになるわけではなく、論戦が激しさを増し焦点化すればするほど、被災地再生への関心がかすんでしまうことを懸念する。
地元にはそれでなくても風化が進むことへの焦り、いら立ちがある。「震災復興を前に進めるのが先だ」。心の内はこんな形に集約できるだろう。
復興庁が発表した避難者(転居者を含む)は4月4日現在、約31万人。今なお、仮設住宅などで先の見えない不自由な生活を強いられている。
避難先は全国47都道府県の1200市区町村に及び、県外避難者は岩手、宮城、福島の被災3県で約6万5000人。とりわけ、福島第1原発事故の収束が見通せない福島県は5万人を超えている。
災害公営住宅への入居が一部で始まったばかり。地域づくりも雇用など住民の生活再建もやっと緒に就いた状況だ。
憲法は基本的人権の要、13条で個人の「幸福追求権」尊重をうたい、25条に「すべての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と「生存権」を明記する。
被災地の現状は憲法に掲げるそうした権利実現の理念と隔たってはいないか。憲法順守の義務を負う国は震災復興を最大の責務と受け止めるべきだ。
昨年末に施行された復興特区法で、高台移転を進めるための土地利用規制が緩和されるなどした。
その際、被災自治体の条例に法律の規制撤廃を可能にする「上書き権」は見送られた。現憲法の「制約」と説明されるが、法律の書き込みは基本的事項にとどめ、具体のことは条例で定めるよう工夫すれば解決する。生存権確保に必要な場合は上書き権を認めてもいい、と指摘する憲法学者もいる。
憲法を体現し政治は機敏に国は柔軟に、被災地の意向を受け入れて、復興の足かせとなる縦割りや上意下達の弊害を取り除き対処する。大震災など緊急時には特に必要な構えだ。
財政力、マンパワーなどに弱さを抱える被災地をいかに支え復興を後押しするか。国は被災住民の目線で「わがこと」として対応に努めてほしい。
自民党の憲法改正草案は幸福追求の権利行使に関し「公共の福祉」を「公益及び秩序」に反しない限りに改めるなどした。人権尊重の精神が揺らぎ、国への縛りを緩和した格好だ。被災者はどう受け止めるだろうか。
今は憲法の理念に沿って政策決定や取り組みの迅速化を図ることこそ肝要だ。本格的な改正論議は復興が軌道に乗り、住民が平穏な暮らしを取り戻してからでも遅くはあるまい。
『河北新報』(2013年05月03日)
http://www.kahoku.co.jp/shasetsu/2013/05/20130503s01.htm
● 「改憲より現状解決を」 不平等感じる被災者 (福島民友新聞) - Yahoo!ニュース
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故以降、多くの県民が仮設住宅などでの不自由な避難生活を強いられている。さらに原子力災害や避難に伴い仕事を奪われ、居住地などの違いで賠償に差が生じるなど、憲法の3原則の一つ「基本的人権の尊重」が等しく保障されているかどうか、疑念を抱く被災者も少なくない。そうした中で高まる憲法改正をめぐる論議。県内被災者はどう受け止めているのだろうか。
富岡町から郡山市の借り上げアパートに避難している女性(77)は「町の除染は進んでいないし、自分が現在置かれている不安だらけの現状を考えると、国は自分たちの基本的人権の尊重について、どう考えているのかと考えてしまう」と長引く避難生活に率直な気持ちを吐露した。
会津若松市の仮設住宅で生活する大熊町の木幡ますみさん(57)も、「基本的人権の尊重」が保障されていないと感じている。「またどこかで原発事故が起きれば多くの人が避難しなければいけない。私たちが何で逃げているのかということをもっと分かってほしい」と訴える。
郡山市の富岡町富田仮設住宅自治会長の遠藤武さん(69)は「(憲法改正よりも)目の前のこの理不尽な状況の解決が先だ」と、国会での論議に疑問を呈する。
『福島民友新聞』(2013年5月3日)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130503-00010001-minyu-l07
=福島民報 論説・あぶくま抄=
●【憲法と被災地】まず自由、権利の回復を(5月3日)
きょう3日は「憲法記念日」だ。施行から66年となる日本国憲法は、改正に向けた動きが加速している。安倍晋三首相は夏の参院選公約に、発議要件を緩和するための96条改正を掲げる方針を示した。
東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の発生以来、住民の自由や権利が脅かされる状況が依然として続く。25条に掲げられた〈健康で文化的な最低限度の生活〉を、まず回復し、しっかり保証していくのが国や政治の役目ではないか。
県内では、震災から2年以上過ぎても15万人以上が避難生活を強いられる。このうち、約5万5000人が県外で暮らす。
農家は住居だけでなく、仕事の場となる田畑さえも使えない。第22条〈公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する〉を奪われた形だ。
不自由な毎日や先の見えない不安から心身の健康を損ねて命を落とす震災・原発事故関連死が止まらない。
岩手、宮城両県と比べ、本県での増加が際立つ。
財物の賠償も思うように進んでいない。生存・財産権すら揺らぐ。
いわれのない偏見や差別に苦しむ県人は少なくない。
自民党は新たな憲法改正案を昨春決めた。発議要件緩和は、実現へのハードルを引き下げるのが狙いだ。与野党ともに異論や反対がある。参院選の大きな争点となろう。
ただ、被災者の苦しみをそっちのけした論議では困る。
憲法は、強大な権限を持つ国や王が勝手な振る舞いをしないよう、国民が求めた「約束」とされる。
行政の効率や一部の利益だけを求めれば、力の弱い個人や特定の地域が押しつぶされかねない。各条に盛り込まれた人権は「公権力が犯してはいけない」項目でもある。
多様な考えや営みを憲法に基づいた話し合いで調整し、政策として実現する仕組みが立憲政治だ。
99条は、大臣や国会議員、裁判官、他の公務員に憲法を尊重し擁護する義務を負わせている。
歴史を振り返れば、国民の自由を奪ったり、権利を無視したりしたのは政治家や役人だった。国民が常に目を光らせ、声を上げていくことが不可欠となる。
〈立憲の妙、自治の美を完[まったし]からしめ、以[もっ]て国家の康福を計画し、人民の福利を企図するに在り−〉。
創刊120年を昨年迎えた本紙「発刊の旨趣」の一節だ。明治前期に自由民権運動に立ち上がり、弾圧を耐え抜いた人々の決意といえる。
現在、享受している自由や権利は、先人が苦難の末に手にしたことを忘れてはなるまい。(鈴木 久)
『福島民報』(2013/05/03)
http://www.minpo.jp/news/detail/201305038201






