2013/8/23
男女雇用機会均等法はまだまだ改正が必要な法律だ ]U格差社会
《時評自評》
◆ 今の均等法で性差別是正は可能か?
男女雇用機会均等法の制定から、そろそろ30年にもなろうというのに、男女の格差は一向に縮小しない。
むしろ、女性の経済的地位は後退している。世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数は低下して、2012年には135ヵ国中101位である。
OECD諸国平均の男女賃金格差は16%、それに対して日本は29%で、韓国に次いで2番目に大きい。これは明らかに、雇用上の性差別を規制しているはずの均等法がきちんと機能していない証拠ではないか。
均等法は果たしてこのままで、蔓延する性差別を是正できるのか。そんな疑問を持つのは当然だろう。
ところが、今、均等法見直しを議論している労働政策審議会雇用均等分科会の先行きが見えてこない。このままでは法改正の提案がないまま議論が収束してしまうかもしれない。
これまで、もっとよい法をとする女性たちの働きかけにより、均等法は、制定以来の激しい労使対立の中でも二度にわたる改正を重ねてきた。その継続的な努力が、今回は頓挫しかねないという危機感を持つ。
均等法はまだまだ改正が必要な法律だ。
たとえば、均等法によって実現される平等が男性の働き方にあわせたものではないことを示すために、基本理念に「仕事と生活の両立が男女平等に保障される」ことを盛り込むべきである。
また、国連女性差別撤廃条約1条にいう「性差別」の定義規定をおき、直接差別、間接差別も含む性差別の根絶を明記すべきだ。
さらに、労基法4条と均等法が管轄事項を縦割りにしている状況を改善し、均等行政と労働基準監督行政が協力して賃金差別の解消および格差改善に取り組めるようにすべきである。
加えて、均等法7条に、「間接差別禁止規定」という見出しをつけて、省令で限定列挙されている3事例を例示、として、よりわかりやすい規定に改正すべきである。
もっと基本的なことをいえば、均等法が本当に機能するためには、この法律が単なる行政的な差別規制法(つまり行政的な指導・勧告・調停などを行う公法的性格の法律)ではなく、個人に民事法的な権利を付与する法律であることを明記する規定をおくべきだろう。
このような改正が行われないかぎり、均等法は、性差別に無理解な裁判所に影響力を及ぼすことができない。
先頃、時計の針を一挙に逆戻ししたような判決がでた(中国電力事件・広島高裁判決2013年7月18日)。
社内の同期同学歴男女間の昇格・賃金に明らかな格差があるにもかかわらず、裁判所は男女間で、層として明確に分離していることまではうかがわれない」という。例外なしに男女が完全分離されていないかぎり性差別ではない、という判旨にはあきれるばかりである。
判旨はまた、人事考課の基準は男女別でないから客観性があり、原告は上司による考課で「協力関係、向上力、指導力」に問題ありと評価されているのだから、管理職にふさわしくない、と判断している。
いったい裁判官は、男女別の基準や差別の意図をもつ不利益取扱いのみが差別だとでも考えているのだろうか。
均等法は果たして、このような裁判官の考えを是正させるのに役立つ法になっているだろうか。
もちろん答えはノーである。
『労働情報』869・70号
◆ 今の均等法で性差別是正は可能か?
浅倉むつ子(早稲田大学)
男女雇用機会均等法の制定から、そろそろ30年にもなろうというのに、男女の格差は一向に縮小しない。
むしろ、女性の経済的地位は後退している。世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数は低下して、2012年には135ヵ国中101位である。
OECD諸国平均の男女賃金格差は16%、それに対して日本は29%で、韓国に次いで2番目に大きい。これは明らかに、雇用上の性差別を規制しているはずの均等法がきちんと機能していない証拠ではないか。
均等法は果たしてこのままで、蔓延する性差別を是正できるのか。そんな疑問を持つのは当然だろう。
ところが、今、均等法見直しを議論している労働政策審議会雇用均等分科会の先行きが見えてこない。このままでは法改正の提案がないまま議論が収束してしまうかもしれない。
これまで、もっとよい法をとする女性たちの働きかけにより、均等法は、制定以来の激しい労使対立の中でも二度にわたる改正を重ねてきた。その継続的な努力が、今回は頓挫しかねないという危機感を持つ。
均等法はまだまだ改正が必要な法律だ。
たとえば、均等法によって実現される平等が男性の働き方にあわせたものではないことを示すために、基本理念に「仕事と生活の両立が男女平等に保障される」ことを盛り込むべきである。
また、国連女性差別撤廃条約1条にいう「性差別」の定義規定をおき、直接差別、間接差別も含む性差別の根絶を明記すべきだ。
さらに、労基法4条と均等法が管轄事項を縦割りにしている状況を改善し、均等行政と労働基準監督行政が協力して賃金差別の解消および格差改善に取り組めるようにすべきである。
加えて、均等法7条に、「間接差別禁止規定」という見出しをつけて、省令で限定列挙されている3事例を例示、として、よりわかりやすい規定に改正すべきである。
もっと基本的なことをいえば、均等法が本当に機能するためには、この法律が単なる行政的な差別規制法(つまり行政的な指導・勧告・調停などを行う公法的性格の法律)ではなく、個人に民事法的な権利を付与する法律であることを明記する規定をおくべきだろう。
このような改正が行われないかぎり、均等法は、性差別に無理解な裁判所に影響力を及ぼすことができない。
先頃、時計の針を一挙に逆戻ししたような判決がでた(中国電力事件・広島高裁判決2013年7月18日)。
社内の同期同学歴男女間の昇格・賃金に明らかな格差があるにもかかわらず、裁判所は男女間で、層として明確に分離していることまではうかがわれない」という。例外なしに男女が完全分離されていないかぎり性差別ではない、という判旨にはあきれるばかりである。
判旨はまた、人事考課の基準は男女別でないから客観性があり、原告は上司による考課で「協力関係、向上力、指導力」に問題ありと評価されているのだから、管理職にふさわしくない、と判断している。
いったい裁判官は、男女別の基準や差別の意図をもつ不利益取扱いのみが差別だとでも考えているのだろうか。
均等法は果たして、このような裁判官の考えを是正させるのに役立つ法になっているだろうか。
もちろん答えはノーである。
『労働情報』869・70号






