真面目な”ナイフ考”ではない、”真面目なナイフ”考。でも、いずれにしても真面目に書いているから、どっちでも良い。
Kershaw Black Gulch
カーショウというメーカーの、'ブラック ・ガルチ(黒い峡谷)'という名のナイフ。さすが日本製、かっちり精巧に作られている。久々に持つ日本製品の精緻さ、小気味良さ。箱出しでアクションのじゃりじゃりがなく、しゃきんとブレードが起きる。こんなことは初めてだ。ナイフの本質、原始的道具でない、精密機械のようだ。
既にコレクターと言っても良いくらい、使いもしないナイフを色々持っている私。今回最後の打ち止めの一本として買おうと思ったナイフの条件は、次のようなものだった。
1. 日本製であること。組立までの全部でなくとも、少なくともブレードは。
2. フォールディングであること。
3. クリップポイントであること。
4. ブレード長が3.5インチを超えないこと。(常時合法携帯を考えて)
5. ボルスターはブラス(真鍮)でないこと。
6. カスタムでない、実用の出来る値段と仕上げであること。
これらの条件をクリアしたのがこのブラック・ガルチなのだが、既に時代遅れのスタイルで販売側の想定する購買層にアピールする点がないのか、通販サイトの説明も等閑(なおざり)だった。アメリカのサイトも日本のサイトも。だが、有名とか売れているかとかは、物の良し悪しについて考える時、あまり当てにならない。私は隠れた優れモノ、無名な実力者を好むもの。他に居ないなら、自分が買い検証するしかないではないか。思惑通り「当り」だったら、ブログに書けば良い。どうせ広まりはしない、人気は出ないだろうけど、ただ同じ思いで買って持って使っている人には、自信が湧くかも知れない。目の利くマイノリティー同士、「へっ、世間なんて愚かなものよ。」なんて、斜(しゃ)に構えた優越感を共有したい気持ちというのか、そんなもんを味わい味わわせたいと。
今回、実に良い買物をしたと思っている。ブラック・ガルチを気に入った点は、以下の通り。
1. アクションの素晴らしさ。滑らかで、且つネイル・マークの位置の関係もあり、親指をかけてのワンハンドオープンも出来る。Buckではどうしても不可だった。ロックのバネのテンションもBuckほど強くないので、それも関係しているだろう。
2. 亜鉛合金のボルスターがマットフィニッシュなので、べたべたと指紋が付かない。ブラスだと、そのまま酸化してくっきりと残ってしまう。これが私がブラスを嫌う理由。ニッケルでもほぼ同じだった。
3. 重過ぎず軽過ぎずの重量。対抗馬のBuck112(以下Buck)が、カタログ値5.6oz。こちらは4.3oz。
4. 厚くもなく薄くもない、握り(持ち)易い絶妙のハンドル厚。それでいてブレード厚はBuckと同じ。
5. 4の握りに関連するが、滑り難いチェッカリングの入ったABSスケール(インレイ)ハンドル。ただ、私はウッドハンドルも大好きなので、チェッカリングの入ったウッドのもあれば良いと思う。
6. 外観、特にブレードのフォルムとスウェッヂ*のノッチがカッコ良い。Buckのstout感も可愛くて好きだけど。
7. Buckより安い。このメーカーには他にもっと魅力的で有名なモデルが沢山あり、売れている。こちらはこのまま良心的な価格で。あ、有名にしない方が良いのか・・。
こうしたきっちり真面目に作られたナイフ、どうして売れないかなー。アメリカに住んでる人、ワンテンも良いですが、これも試してみてください。銃に例えるなら、BuckはColt、KershawはSmith & Wessonみたいな感じ。大らかさとかっちりきっちり、気分に応じて。私はどちらも好きです。
もう少しだけ大きい'Wildcat Ridge'というモデルもあります。(私はそれを買ったつもりが、注文してから間違いに気が付いた。そのうちやっぱり買うかも。)
* アップ翌日の追記:
スウェッヂ、この際元の意味はどんなものか知ろうと調べてみたら、それらしい綴りのswedgeでは辞書には出てこない。(swage(スウェイヂ/スウェッヂ)の綴りならある。)
そして、やはり私は間違っていたことが判明した。切れる刃(エッヂ)の反対側、峰というか背の意味で使ってしまったが、どうもそれはspine(「背骨」の意)と呼ぶらしい。
だから本文中の’スウェッヂ’は’スパイン’と読み替え、ブレード背中側ハンドル寄りの部分と考えてください。要するに、親指の乗せられる背中側の部分にぎざぎざの溝が彫ってあって、滑り難く細かい作業する時に便利そう、そして見た目もクールということ。
辞書では見つからないが、画像検索で出てくるものから推察するに、ナイフ用語の’スウェッヂ’とは、切っ先(ポイント)から刃と反対の背側が上にカーブを描いて反り上がった部分を意味するものである。言い訳になるが、そうだよなぁ・・ そう思ったんだ。ただ、先日ナイフ関係の記事を渡り歩いてるうち、間違えた情報を仕入れてしまった。これでは、’ゲージ’馬鹿を笑えない。謹んでお詫び申し上げます。(笑)
今のところ私が勝手に想像を巡らしてるのが、フォース・エッヂから初めのフォーが抜けて短縮になった ス・エッヂ → スエッヂ 説。ウェブ・ログ(web log) → ブログ(blog)みたいな。どうでしょう。こちらのページ、Knife Anatomy 4の説明から推察しました。
というわけで、どなたか詳しい方がここをご覧になったら、ご教示くださいませ。どうも専門語らしいので。私も忘れなかったら、図書館に行った時調べて来ますが。
あゝ、長くなったな。別記事起したほうが良かったか・・・。
追記2:
図書館行って来た。私の推測は外れ。(笑)swedgeはswageと同義、単に違う綴りもあるとの由。そして、馬の蹄鉄周りに溝を彫る為の鏨(たがね)とか、鉄を曲げる金型や粘土を流し込む成形型、またその曲げられる物自体のことも差すようだ。
ただ、ナイフのスウェッヂ/スエッヂは、’へこみ曲線’というような意味からではなかろうかということになった。ちょっと長いが、これかなと思った部分を端紙に書き留めて来たので、ここに転記しておく。
swedge
[Variant of SWAGE]
swage
1. An ornamental grooving, moulding, border, or mount on a candlestick, basin, or other vessel.
b. A circular or semicircular depression or groove, as on an anvil.
- The Oxford English Dictionary 2nd Edition -

きっちりかっちり、フロストフィニッシュでもあり、S&W M60のLady Smithを髣髴(ほうふつ)させないでもない。

反対側にも文字が入っている。何か高級な気分。(笑)

全体を比較して。人差し指の掛かるBuckのハンドルのカーブは良いと思う。

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