折角調べたのでここにシェアしておく。自分の備忘録としても。
カブトエビ、又はトリオプス、学名Triops(以下"T.")。
世界に4種類いる。それぞれの名前と生息地域は次の通り。
1. アメリカ種 (T.longicaudatus) 北米、オセアニア
2. アジア種 (T.granarius) 南アフリカからユーラシア大陸
3. ヨーロッパ種 (T.cancriformis) ヨーロッパ、北アフリカ、中東、インド
4. オーストラリア種 (T.australiensis) オーストラリア、マダガスカルの一部
日本に居るのは1、2、3。
1は関東から九州中部まで広く分布。
2は静岡、大阪、兵庫、京都、島根、鳥取、徳島、香川、大分、福岡の港や河川河口周辺を中心に。分布地域は1と似通っており、同じ田圃に1と共存している場合も。
3は山形のみで棲息。
日本のカブトエビはすべて国外から来たもの(帰化種)と考えられる。1925年ウエノ氏により初めて言及され、以来1(アメリカ種)が関東から西に広まっていった。田の除草効果について1923年から1925年にかけ兵庫農業試験場が試験研究を行ない、その有効性を確認。但し、大阪府カワチナガノ市(1977年〜)、和歌山県カワベ町(1978年〜)のように、極めて限られた地域で実用されているに過ぎない。
何故除草に効果があるのか
1. 餌を捜したり産卵の為に土を掘り、この時草の根を土から浮き上がらす。
2. 草の根そのものを餌として食べる。基本的に濾過摂取だが、水草をはじめ泥の中の色々な物を食べる。
3. 土掘り等で水底の泥を巻き上げる。水が濁ると日光が水底まで達しなくなり、この結果光合成が充分行われなくなり水草の成育が抑えられる。(生物学的マルチング効果)
但し日本のように苗床方式を採用しないアメリカカリフォルニアなどの”直播き方式”では、除草用の益虫ではなくペスト(害虫)として捉えられる。(米の種苗も食べてしまう)
実用の効果
効果的であるには >25匹/u居ること。(カタヤマ 1974)
>80匹/u以上居れば草の発生そのものを抑制出来る。(ヨネクラ 1979)
昔ながらの手作業の方式だと、1ha当り除草するのに500時間かかる。(人一人働いたとして)
除草薬を使うと、それが90時間に、そして
カブトエビの働きの後なら、それが20時間に短縮される。
ソースサイト:
USE OF THE TADPOLE SHRIMP (TRIOPS SPP.) AS A BIOLOGICAL AGENT TO CONTROL PADDY WEEDS IN JAPAN
この後は、全部一遍に卵が孵らぬのは不意の天地急変などにより絶滅に追い込まれない為であろうという考察や、除草効果を農業に生かす為にはコンスタントに個体数(密度)の安定を図る必要があるとか、対農薬、線虫との関係とか、更にはk戦略、r戦略なんて多分農法に関わる用語まで出て来て、ちんぷんかんぷんとなる。
部外者の私にとって知れて良かったのは次のこと。
1. 自然下では通常1ヵ月内に消滅、だがラボ下では3ヵ月以上生きることもある。
2. 孵化10日で早くも抱卵する。
その他、学生への観察指導のサイトによれば、アメリカで市販されているトリオプスの故郷は、シーモンキーと同じユタの地。そこでの自然や天候を思えば、この生物のタフさや忍耐強さが分かろうというものだ。
あと、マニュアルに、卵は25年以上生き長らえることを科学者が発見とあった。これは驚き。本当か?!
なお英語での呼称はtadpole shrimp、直訳すればオタマジャクシエビ。ヘルメットシュリンプとか言っても通じない(多分)。
毎日餌を与え動きを観察していたら、他のエビ(といっても今はオパエウラしかいないが..)以上に可愛いかもと思えるようになってきた。@@と共通するインテラクティブなものを感ずる。是非長生きしてもらいたい。マニュアルに書いてあることは参考程度に、水の量を増やしたり、栄養価の高いスピルリナ粉を与えるなど、手塩にかけている(つもり)。うちでは孵化2週間で抱卵した。
冒頭の写真は、餌を受け取り満悦で浮遊している姿。

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