しかしフリーライターの「定年」って何歳ぐらいなんだろうな、と時折思う。
もちろん、言うまでもなくサラリーマンではないフリーライターに、制度的に定められた「定年」などが本来あるはずもない。とはいえフリーライターだって齢はとる。筆力が衰えたり、取材に出歩く体力がなくなったり、あるいは書き手としてのセンスや力量が時代状況についていけなくなれば、当然そこでお役ご免となるしかない。
何よりどこのメディアからも使ってもらえなくなったら、その場でジ・エンドである。というか、若くしてフリーライターになってみたものの、結局どこにも使ってもらえず廃業せざるを得なくなった、という人も、おそらく結構いることだろう。その意味では「定年」以前に「寿命」が来るほうが早いというのがフリーライターだと言えるかも知れない。
ただ「定年」のあるフリーライターの世界もあることはある。例えば週刊誌。大手出版社発行の週刊誌の場合は、大抵レギュラーで専属的に記事を書くフリーライターを数多く抱えている。雇用形態は単価いくらだったり、週給だったり、あるいは社員並みの月給制だったりと様々らしいが、こういうところはさすがに人材も新陳代謝を図らなければということで、ある程度齢のいったライターには「肩叩き」をするようだ。例えば『週刊文春』の場合、ライターは確か有期契約制度であるのに加えて「50歳定年制」というのを数年前から打ち出している。
(一方では、某女性週刊誌のように60歳過ぎたライターがどっしり構えているという世界もあるらしい。ま、あそこの場合は過去の労働争議の名残でベテランの専属記者が若い編集者を子供扱いしたり、ギャラ削減を打ち出した編集長を突き上げて飛ばしたり、芸能プロの人とゴルフをやってネタをもらってくるのが取り得のベテランライターさんもいるとかいう話を聞いたことがあるけれど)
だとすれば、ややこしいのは私のように週刊誌で仕事をせず(というか週刊誌への批判記事とかを盛んに書いてたせいか仕事が来なかった)、いつのまにやらフリーライター歴10年、しかも40歳を超えてしまった人間だ。出版の世界も青息吐息、これからどんどん書籍も雑誌も売れなくなり、経費もどんどん削らねばという状況下である。かつてのように長く付き合いのある人だから……という理由でライターを使い続ける余裕は、もはや出版社にはなくなりつつあるのだ。
じゃあ、フリーライターであるお前はどうやって生き残っていくのか? って聞かれれば「なるようになるさ」というほかない。
寿命が短いフリーライターを、すでに10年もやってきてしまった。現在41歳ということは、文春の定める「定年」まで残り9年だ。ここまで生き残ってこれた幸せを噛み締める一方で、これからの「余生」を考えなければならない時期まで来ているのかもしれない。
でも、その「余生」をどう生きるかは、私の自由である。思えば20代の最後に会社を辞めた時にも、30代の初めにフリーライターになった時にも「ここからは余生かな」と思ったものだけど、正直言ってその「余生」ほど面白いものはなかった。だから今しばらくはもう少し、じたばたしてみることにしようか。

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