昨日(11月2日)はOurPlanet-TV専従スタッフの近藤剛くんが誕生日だということで、アナウンサーの緒方朋恵さんから「みんなでケーキでも食べながらお祝いしましょう」とのお誘いを受け、午後3時に神保町のメディアカフェ(アワプラ事務所)に顔を出した。本来ならば事務所の仕事が一段落した夕方から酒でも飲みながら――というところなのだが、相変わらず多忙な近藤くんが昼と夜に仕事が入っているということで、3時からの1時間半ぐらいしか時間が取れなかったのだ。
まあ近藤くんに限らず、アワプラのスタッフというのは専従・非専従を問わずにとにかくみんな、やたらめったら慌しいというか、四六時中誰か彼かが外に出て行っては戻ってくる状況が常に続いている。
この日も私が予定の時刻に訪ねていったら、代表の白石草さんも事務局長の池田佳代さんも、幹事(?)役の緒方さんの姿もなく、主賓のはずの近藤くんが一人で黙々と仕事をしていた。最近の仕事の状況などについてしばし雑談するうちに緒方さんが、続いてフリー翻訳者をしているという女性のカクさん(でしたっけ? すみません、私はこの日は初対面で、お名前しっかり覚え切れなくて)もやってきた。緒方さんがテーブル上に花やケーキを並べて、ぼちぼち始めましょうかという感じになってきたところで、白石さんと池田さんが相次いで戻ってきた……と思ったら、白石さんが「今日はこれから大学の生徒たちを連れてTBSの本社見学なの」と言いながら速攻で再び出て行った。その間もしょっちゅう電話がかかってくるわで、なかなかパーティが始まらない。
4時ぐらいになってようやく「さあ、始めましょうか」とみんなで拍手……と思ったら、今度は50〜60歳ぐらいの正体不明の男性がやってきて、作品を編集したいんだかディスクに落としたいんだかといった相談をずわーっと話しはじめるという始末。
池田さんと近藤くんの二人が応対に掛かりっきりとなり、テーブル上にはせっかくの花とケーキが寂しげに放置されたまま……。
手持ち無沙汰な私は緒方さんと思わず顔を見合わせて肩をすくめ、先日タイまでNGO関係の会合に行ってきたというカクさんから現地報告話を聞く。トランスジェンダーについての分科会に、めっちゃ美人のおねーさん2名(ただしどちらも♂)が出ていてビックリしたというので、デジカメで映したという彼女らというか彼らの写真を見せてもらったのだが、どう見ても正真正銘かつ絶世の美女にしか見えなかった。何も知らずに恋心を抱いてしまった男は、後で真相を知るやさぞかし絶望の淵に叩き込まれることだろう。カクさんはこの会議の参加記録を新たにブログを設けて公開したいと考えていて、今日はその相談にやってきたのだという。
このように、アワプラにはまったくバラバラな目的を抱えたさまざまな人々が、それこそアポもロクに入れないまま突然やってくる。専従スタッフですら上記のような状況なのに、これでよく事務機能が混乱せずに回っているものだと感心するほどである。
そういえば先月の「東京夢舞いマラソン」が終わった翌日にも、たぶんみんなぶっ倒れているだろうなと思いながら訪ねてみたら、最近入った大学生広報チームの若い人たちがなにやら熱心に打ち合わせをしていた。で、そこにほとんどホームレスになりかけのような服装の橋爪明日香が「あたし今日人に会う約束10件入れちゃったんですよ〜」と唖然とした声でうめきながら現れ、池田さんから「バカですねこの人」と笑われていた。まったく、みんなもう少しゆとりを持って動くということを考えたほうがいいんじゃないかという気はする。
結局、近藤くんの誕生祝いは主賓が不意の来客への対応に追われてほとんど空振り。とはいえ緒方さんは別にくさる様子もなく、いつものようににこにこした表情で事務作業を少し手伝った後に「またね〜♪」と帰っていった。近藤くんもすぐに近所まで仕事で外出。池田さんも今日はこの後早めに出てしまうというので、留守番がてら、カクさんと私が溜まっていたそれぞれ別の事務作業を黙々とこなす。このように、普段は事務所にやってくる機会の少ないメンバーでも、やってきた場合には物の見事に事務作業員として使ってしまうという要領の良さもアワプラの特徴の一つである。
8時くらいになって白石さんが戻ってきて、入れ替わりにカクさんが帰っていった。今度は白石さんと2人で、最近の諸々の様子や企画についての話などをとりとめもなく話し合う。白石さんとは先日も龍ヶ崎のKCN「コムフェスタ」に参加した帰り道、電車の中であれこれずっとおしゃべりしながら帰ってきたのだが、とにかくこの人はあっちこちに動き回る一方、誰のどんな話にも関心を示していろいろ聞いてくるので話は尽きることがない(なんでも以前には深夜の帰路のタクシーで運転手さんと話が進み、一緒にラーメン屋に食べに行ったりもしたそうだ)。
いろんな人がふらりとやってくるといえば、最近は故・青木貞伸さんの奥さんの芳子さんもよくお見えになるとのことだった。5月の事務所引っ越しと同時に青木文庫がオープンした際には本当に喜んでいただいたものだが、以後も亡きご主人の蔵書と大きな写真パネルの飾られたこの場所には、特別な愛着を持ってくださっているらしい。それだけに1年も経たないうちにビル改築に伴う引っ越し話が持ち上がってしまったのは何だか申し訳ないところだが、白石さんからは既にその件をお伝えしたとのことで「この近くで良い場所が見つかるように、私も心当たりをあたってみましょう」とおっしゃっていたそうだ。本当にかたじけない思いだ。
腹が減ってきたので、近くの中華料理店まで一緒にご飯を食べに行く。途中、近所で作業中の近藤くんの様子を確かめに寄るが、その道すがら「実は昨日も徹夜で全然寝てないんですよ」と白石さんが何気に言うので驚く。それでこのテンションの高さはいったい何だ……。しかもこの人は今週末から10日間ほど、JICA関連の視察でアフリカまで行ってくるというのである。こうなるともう、せめて無事に帰ってきてくれというほかない。
店に入ってラーメンやチャーハンを食べながら話の続き。ほどなく近藤くんも合流して、改めて誕生祝い。近所での仕事には一区切り入れたものの、このあとまた事務所に戻って別の仕事に掛かるという。本当にタフである。とはいえ近頃は疲れた表情を見せることも多く、くれぐれも身体には気をつけてねと言う。そういえばアワプラの事務所には元気な女性たちが多いものの、専従スタッフの男性は近藤くんのみ。羨ましいようでもあるが、一方では同性がいないことから生じるストレスもあるだろう。「女人禁制・男だけのアワプラ飲み会」を近々やろうという話になる(白石さんは「それは美しくないな〜」と笑っていたが)。
白石さんも近藤くんも、現場バリバリのプロのテレビディレクターとして長いキャリアの持ち主である。この日はかつての国会担当時代の2人の経験談をベースに「いかにあそこでは摩訶不思議な、意味も理由も不明なヘンテコリンな取材が行われているか」という話を、ついていけるわけもない私はひたすら「ふううむ」と唸りながら聞いた。で、聞きながら、「これをそのまま放送で流せたらいいのに」と、ふと思った。最近になって、例の「ポッドキャスティング」みたいな刺激的なメディアも出てきたわけだし、それこそこういった酒場でのディープな業界裏話なんぞをウェブでもって世界中にダイレクトに発信できたりしたら結構おもしろいんじゃなかろうか――。
――で、実はもしかしたら本当にそういうことができるんじゃないかな? という話が、昨日になっていきなり私のもとに舞い込んできたのであった!
明日は朝からその打ち合わせで、白石さんと一緒に渋谷の某社まで行く予定。寝坊しないように気をつけねば。
(「岩本太郎のメディアの夢の島」
http://blog.livedoor.jp/ourplanet_iwamoto/と同時掲載)

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